2009年7月以降に拡大期入りした米国景気。以前から講演などで、拡大もすでに7年目に入っており、いつ踊り場や下りに入ってもおかしくない時間帯に入っていると話してきた。それが海外要因が原因で起きる可能性もあるし、ここまでリーマンショック後のバブル崩壊でやられた内需を金利をゼロにし、さらにドルをばら撒き、株高など資産効果も使いながら一生懸命押し上げてきたFRBだが、それもやがては減速から下りの循環は避けられないとした。
こう書けば当たり前の話だが、そうした時間帯に入っているからこそ、FRBはゼロ金利という政策手段を持たない状態を早く脱したいと思っており、利上げに踏み切りたい。しかし、その利上げにより、せっかくの景気回復の腰折れにつながるのも避けたい。悩ましく難しい環境下でバトンを受けたのがイエレン議長であり、前任議長に任期が(私に言わせれば)2期8年以上におよぶ長期政権の後を受けた議長の時代には、必ず波乱が起き、イエレン議長も例外ではないのではとしてきた。
もちろん現時点で米国景気は後退局面には入っていないし、当面それは起きないというのが市場のコンセンサスになっている。
日本時間の昨夜発表されたISM非製造業景況指数の結果は、好悪の境目となる50は上回っておりそれも53.5だから、まったく問題はない。しかし、市場はここまでの流れから先を読もうとする。50は上回ってはいるのだが、ここ数ヵ月は徐々に数値が下がってきているのが気になりだしていた。
米国の景況指数は製造業が先行して崩れていた。ドル高の影響も大きいと見られる。2月1日に発表されたISM製造業景況指数は48.2と4ヵ月連続で50割れとなった。しかし、市場はたいして反応はしなかった。すでに先週のFOMCの声明文で年末にかけて米国景気は減速したと下方修正していたことから、織り込み済みということだったのかもしれぬ。
さらに既に産業形態で非製造業(サービス産業)が中心を占めており、比率の下がった製造業が不振でも好調な非製造業が米国景気を引っ張るとの分析もあり、多くはその話に納得しているようだったが、自分は“そうかぁ~” と疑いの目を向けてきた。ここまで書いて遅きに失したが、非製造業(サービス産業)とは、小売り、ヘルスケア、建設、農業や公益などをさす。一般に賃金水準は製造業の方が高いとされる。米国雇用者数の回復もこの分野が引っ張ってきた(農業は除く)。
今回の結果に為替市場が起きくドル安に反応したのは、傾向的に落ちて来ていることに加え、減速の範囲の広さと落差の大きさだったと見られる。総合指数は前月の55.8に対し市場予想は55.1に低下というものだったが、結果は53.5となった。2014年2月以来の水準となる。細目を見ると景況指数が前月の59.5から53.9に低下。これは2008年11月以来の大幅な下げとされる。前月は56.3だった雇用指数だが52.1と2014年4月以来の低水準に落ちていた。
こうなると、いずれISM非製造業景況指数も先行して悪化している製造業にさや寄せするのでは・・・との懸念が広がり始める。かつては、そうだったからだ。そもそも、製造業景況指数が連続50割れの環境でFRBが利上げするなど考えられなかったこと。経済の構造が変わったと言われれば、たしかに否定は出来ないのは確かだが、大丈夫かねぇ・・・・と。
そこに、NY連銀のダドリー総裁のインタビューの内容が伝わる。、12月の利上げ以降の金融環境の変化から、この状態が続くようならば3月の利上げの見送りも視野に入れると受け止められるハト派発言。指標が示す実体経済面からの利上げ後退観測に当局者の発言。材料の重なりで市場の反応は大きくなったというわけだ。
ドル安は、ドル指数で見て99ポイント近くから96ポイント台半ばまで急落するという大きさで、昨日書いておいたが、金価格は200日線を超えるとファンドの買いが膨らみ、やはり1150ドル方向に走ることになった。
さらにドル安は、1月22日のここに「金の上値を抑えているドル高」と題して書いて、その最後に「ドル指数に視点を置くならば、指数が97割れから95方向への動きとなる際に金は1150ドル突破に至るとみられる」とした。まさに昨日からその動きが出ており、いまこの時間に1150ドルを突破した金価格の上値を追いが見られている。