先週末の日銀金融政策決定会合。無風を読んでいて、その通り政策内容は無風だったが、市場の動きは無風とは行かない。というのも相手方の通貨の胴元(中銀)がタカ派スタンスを強めるコメントを出したことによる。 出だしから何の話か?というと先週末の市場で円が全面安になり、それを映して国内円建て金価格が、またまた過去最高値の更新となったという話。
先週末6月16日のNY市場の金価格は小幅に3日続伸となった。
米連邦準備理事会(FRB)高官のタカ派発言が飛び出す中で、この日は決め手となる材料に欠ける中で狭いレンジでの取引となった。NYコメックスの通常取引は前日比0.50ドル高の1971.20ドルで終了した。
週初から5月の米消費者物価指数(CPI)に続き連邦公開市場委員会(FOMC)と重要イベントを消化したことで、目先の決め手材料出尽くしという市場環境に加え、19日のNY市場つまり本日は奴隷解放記念日(ジューンティーンス)で3連休になることも方向感の出ない背景となった。
この日のNY金はNY時間外取引を含め上下15ドルの範囲内の値動きにとどまった。
一方、値動きが大きくなったのが為替市場での円相場で、主要10通貨に対し全面安状態となった。
対ユーロでは一時1ユーロ=155.22円と2008年以来15年ぶりの安値に急落した。 ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁をはじめとした欧州中央銀行(ECB)政策委員会のタカ派が16日、ECBは秋まで利上げを続ける必要がありそうだとした。またラガルド総裁は、改めて利上げではまだやるべきことがあると発言し、「7月の政策会合で利上げを継続する公算が極めて大きい」とした。
一方、日銀は15~16日に開いた金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を全員一致で決めた。マイナス金利、10年物国債金利の誘導目標ゼロ%をいずれも維持し、10年物国債金利の変動幅もプラスマイナス0.5%で据え置いた。さらに今年後半のインフレ率に関し鈍化を予想した。
他の主要中銀と逆向きが際立つ内容に、円が売られることになった。対ドルでも一時141.92円まで付け6カ月ぶり安値の141.87円で終了した。
NY金が小動きの中で大幅円安を映し、日本取引所(JPX)傘下の大阪取引所週末16日の金先物夜間取引は8845円で終了した。5月15日に付けていた8805円を上回り、終値ベースでの過去最高値となっていた。ちなみにここまでの取引時間中の最高値は、5月4日の祝日取引で記録した8870円だった。
週明けドル建て価格が週末水準を維持すれば、19日の店頭小売価格も過去最高値を更新する可能性が高いとみられたが、それは現実化し19日午前9時30分の時点で、JPX金先物価格は一時8915円まで付け過去最高値を更新。19日の税込み国内店頭小売価格も9876円(田中貴金属)と過去最高値を更新している。
先週のFOMCは政策金利を据え置く一方で、年末までに2回の利上げを見込んでいることが示された。各メンバー間の事前発言にはかなり温度差が感じられたが、利上げ見送りに関し投票者の間で反対は見られなかった。
市場では、インフレ指標が鈍化してきていることもあり、2回の利上げが行われる公算は小さいとの見方も一部で広がり、株式市場の高騰につながっている。
そんな折に16日は会合後初めてのFRB高官の発言が伝えられた。 ウォラーFRB理事は「コアインフレは想定したほど低下していない」とし、「インフレ低下に向け、おそらくもう少し引き締める必要があるだろう」とした。
リッチモンド地区連銀のバーキン総裁も、今後発表される指標でインフレ率の低下が示されなければ、さらなる利上げを容認するとした。その上で時期尚早に金融政策を緩和することは高くつく失敗となると、1970年代を例に挙げた。さらに、利上げペースを落とすことについては、「埠頭(ふとう)に近づくにつれ、ボートを減速させるようなものだと考えてほしい。それがデータを精査し、さらに何をする必要があり得るかを判断する時間をわれわれに与える」と述べた。
いずれも(状況により)利上げ継続の必要性を語っている点ではタカ派的ではあるが、引き締め過ぎへの警戒をにじませたり、慎重なスタンスを前面に出しており政策の柔軟性を思わせる発言内容と捉えている。
今週も多くのFRB関係者の発言機会が予定される一方で、パウエルFRB議長は半期に一度の議会証言に臨むことになっている。21日下院金融サービス委員会、22日上院銀行委員会の予定となっている。