亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

打たれ強さを発揮した金だったがデータで1500割れ

2019年11月05日 23時18分31秒 | 金市場
伝えられているように週明け11月4日のNYダウ30種平均株価は7月以来となる高値を更新し過去最高値で取引を終了。これで米国株の主要3指数ともに最高値を更新し、いわゆるリスクオン・センチメントの広がりの中で足元の市場は日本株まで上昇し世界同時株高の様相を呈している。その中で、一般的には売られることの多い金市場だが、4日のNYコメックスの通常取引は前日比0.30ドル安の1511.10ドルと小幅な下げで取引を終え1500ドル台を維持したのが注目された。

先週末11月1日に発表された10月の米雇用統計は、雇用者数の伸びが12万8000人と市場の事前予想(9万人)を上回った。米自動車大手GMのストの影響から伸びは大きく減速するとみられたが、影響を吸収した上で増加ペースを維持した。前月の増加数も大きく上方修正された。失業率は3.6%と前月より0.1ポイント悪化したものの50年ぶりの低水準に変わりなく平均時給も前年比3.0%の上昇を続けている。雇用の安定は個人消費を支える。結果的に先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて予防的利下げの打ち止めを示唆したFRBの判断は正しかったということになる。

もうひとつの注目指標10月のISM製造業景況指数は、48.3と3カ月連続で拡大・縮小の境目となる50を下回った。ただし、10年ぶりの低水準となった前月を0.5ポイント上回り8カ月ぶりの上昇となったことを市場は好感し、米国株上昇の阻害要因とはならなかった。アナリスト予想の中には50ポイント台への復帰を読むものも多かった。

結局、先週のFOMCにて3回目の予防的利下げが実施され、足元の景気は安定しており見通しも良好で、ただ米中など貿易に関する不透明要因があるゆえ、予防的な利下げで先手を打ったとのお達しが出た後の労働市場の予想外の堅調さが、市場センチメントを押し上げた。こうした中では製造業の不振も過去のものと捉えられ、底打ちするのではとの解釈が台頭したのだろう。マーケットは方向性を重要視するので、50は割れているが、7カ月連続の低下は終わり反転したのではと取る。

それにしても米中間の部分合意の内容も不明の段階で、ダウが高値を更新するとは想定外。
合意を前倒しで織り込みに掛かっていると思われる。

金の方は、アジア時間からさすがに売り優勢の流れとなっていたが、ロンドンからNYの早朝に入り待ち待った売りが出ている。本日、日本時間の午後2時に金の国際的な広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC,本部ロンドン)が7-9月期の世界の金需給統計(Gold Demand Trends)を発表。予想の範囲内とは言え、金の地金・金貨の需要は前年同期比で半減とのデータを発表(298トン⇒150トン)。ジュエリーも全体で前年比16%減の460.9トンに。増えたのはETFおよび類似商品で前年の103トン売り越しから258トンの買い越しとなった。つまり実需の大幅減少を投資マネーの流入(ETF残高の増加)がカバーしている。おそらく、このデータが弱材料続出でも1500ドルを維持していた金市場の本日の“ラスト・ストロー”になったようだ。押し目買いがどのように入るのか、また入らないのか。興味深い。


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