亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

心理戦、そろそろ賞味期限が・・・「オン」から「オフ」への循環

2012年04月11日 18時34分51秒 | 金市場
4月10日のNY市場で株価は大幅続落、米国債は買われ金利は低下、為替市場では円の急激な買戻しと典型的な「リスク‐オフ」モードの台頭となった。

投資家心理すなわち市場心理(マーケット・センチメント)は移ろいやすいが、このところ不規則ながら循環的に浮上するリスクの「オン」、「オフ」の「振れ」がまたやってきた。先週は、米国景気の回復期待の高まりとともにFRBによる追加緩和観測が一気に後退したとして金は急落となったが、週末の雇用統計の数字ひとつで空気は変わったようだ。カネ余り金融相場とは、そんなもので投資家心理次第という側面がある。

金は、昨年末や年始以降にも「リスク‐オフ」モードの中で株などと一緒に売られるという状況が見られた。しかし、10日のNY市場では前日比16.80ドル高の1660.70ドルと買われた。何がどう変わったのか?

答えの一つは、先週までの段階で、ファンドの買い建玉が手仕舞い売りに一掃されていることがある。特に4月4日のFOMC議事録要旨を手掛かりにした下げで、(買い方の)目先筋はあらかた振い落されてしまったと見られる。その状況は、今週末金曜日に米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するデータで明らかになろう。つまり軽くなっているので、買いプログラム発動に反応しやすい。

昨夜のNYダウ前日比213.66ドル安と今年最大の下げとなった。下げ方としては、急落ではなく寄り付きから時間の経過とともにズルズルと売られていき、終わってみれば大幅安という展開だった。金は当初はこの株安に引きずられる形で売られ1630ドル台前半まで下げたものの、下値では買い物が見られ1630ドル台は維持。NY午後に入り、ややまとまった買いが入ると通常取引の引けに掛けて1,660ドル台まで20ドルほど上昇という展開になった。ただし1650ドルを上回る水準では売り物も目立っている。
株安の背景は、再び懸念が高まっているユーロ圏での債務危機。10日の市場ではスペインやイタリアなど高債務国の国債に売りが目立った。その結果、これら国債の利回りは上昇しスペイン国債は5.9%台半ばの水準に。

足元のスペインの状況は10日に何かが判明して一気に売られたというものではなく、先週の国債入札の不調に加え、不動産バブル崩壊の中で金融セクターの“傷み”が不安の根源になっている。先のECBによる3年物特別融資(LTRO)の半分がスペインの銀行に回ったとされる。本来であれば、公的資金投入だが、それがままならずECBが当座をつないだ形だ。3月末にドイツが譲歩してまとまった救済基金の拡大(ファイアーウォールの構築)だが、それでも足りぬという指摘の中でドイツはこれ以上の負担を拒否する構えを示していることも市場の不安心理をジワジワ高めている。

基本的には、ユーロ圏が取っている(赤字減らしのための)歳出の大幅なカットと増税が、景気のスパイラル的な悪化につながり、さらに債務問題への対応を難しくするのではないかという市場の“不安心理”の高まりがある。株価が下がると、株価に連動した恐怖指数と呼ばれるVIX指数が上昇、それが反射してさらに不安心理を高めるという相互作用が下げを、あるいは悪化の度合いを大きくするという構造になっている。心理戦といえる。昨秋以来、NY株も各指数ともに20%以上の上げとなっていたので、高値追いに対する“疑い”芽生えていたことも、下げに転じたときには投資心理の急収縮をもたらしやすい。

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