亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

じっと我慢のNY金

2023年09月26日 20時02分43秒 | 金市場

週明け25日のNY金は反落。前週末比9.00ドル安の1936.60ドルで終了。

前週末には騰勢一服となっていた米長期金利が再び上昇に転じ(価格は下落)、あわせてドルも対ユーロを中心に主要通貨に対し上昇し、金市場は売り優勢の流れが終日続いた。 主要な米経済指標の発表がない中で、FRBが当初予想よりも長期にわたって金利を高水準に維持するとの見方が米国債売りを促し、償還年限を問わず利回りの上昇につながった。

 

この流れには一定の伏線があった。

この日、欧州中央銀行(ECB)ラガルド総裁が欧州議会に登壇。「必要な限り主要政策金利を十分に景気抑制的な水準に設定するようにする」と表明。金利据え置きの期間がどれほど長くなる可能性があるのか具体的に踏み込まず、「長いレースだ」とした。

発言を受けドイツ長期債が売られ、ドイツ10年債は一時2011年7月以来の高水準となる2.811%に上昇、2.799%で終了した。この流れがNY市場に引き継がれ、FRBも当初予想よりも長期にわたって金利を高水準に維持するとの見方を手掛かりにした債券売りにつながった。

米10年債利回りは一時4.549%と2007年10月以来16年ぶりの高水準に上昇し4.537%で終了。価格はほぼ安値引けということに。

シカゴ連銀のグールズビー総裁がこの日の米CNBCの番組に出演し、「インフレ率を目標まで下げなければならない」と発言。前週には複数のFRB高官が追加利上げの必要性に言及していたことも、米国債売り(利回り上昇)を促した。

 

さらに、米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが「政府機関閉鎖は米国の信用格付けにネガティブな影響がある」とのコメントを出したことも、米債の売り手掛かりとされた。

米国では10月に新しい会計年度が始まるが、米議会では予算協議が難航しており、予算法案が9月中に成立しないと一部政府機関が閉鎖されることが懸念されている。すでに政治の機能不全を理由の一つとして、8月に格付け会社フィッチ・レーティングスが米国債(長期債)の格付けを引き下げている。

 

米債利回りの16年ぶり水準への上昇は、為替市場にも影響した。日米金利差の拡大観測を背景に円が売られ一時148.97円と昨年10月25日以来の安値に。ドイツの企業景況感指数の悪化もあり対ドルでユーロが6カ月ぶりの安値(1.0575ドル)に沈み、ドル指数(DXY)は106.097と、ついに今年3月の高値を上抜き昨年11月30日以来の水準に上昇した。105.998で終了したが、ほぼ高値引けに。

米債利回り上昇の加速はピークの近さを感じさせるものの、FRBの方針が不透明ゆえに市場は判断に迷っている。

このところの定番表現だが、この金融環境の中でNY金が1900ドル台半ばの水準を維持しているのは、米金利高、ドル高に対する耐性を感じさせるものと言える。

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