亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

逃避買いの矛先はゴールドでなくドルに

2023年09月27日 20時22分31秒 | 金市場

このところ続いている米長期金利の上昇がこの日も止まず、金市場はNY時間外のアジアからロンドンと売りが先行した。

そしてNYの通常取引に入り、下げ足を速めることになった。 NY金の通常取引は、前日比16.80ドル安の1919.80ドルで終了。8月21日以来1カ月ぶりの安値水準となる。その後の時間外取引でも1917.20ドルまで安値を見て1919.00ドルでこの日の取引を終了した。

 

米長期金利の指標となる10年債利回りは、この日も一時4.568%と16年ぶりの高水準をさらに更新した。26日まで6営業日連続の上昇となる。

米長期金利の上昇に歩調を合わせる形でこの日もドルは主要通貨に対し水準を切り上げ、ドル指数(DXY)は一時106.261まで上昇、昨年11月30日以来の高値を更新した。主要通貨に対しドルが上昇する中で、日本円がもっとも大きく下落し一時149.19円と「介入ライン」として意識される1ドル=150円台に迫り149.00~10円で終了。ユーロは対ドルで3月16日以来6カ月ぶりの安値となった。

 

26日は、今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が、同連銀のサイトに公開した論文で、米経済がソフトランディング(軟着陸)できる確率が60%との見方を示した。 同総裁は前日の講演で、景気を冷やすために政策金利はもう少し上昇する必要があるとしていた。

この日の論文では、より可能性の高い軟着陸シナリオとして、FRBは金利をあと0.25%引き上げ、その後、「インフレ率を目標値に戻すのに十分長く」安定させる可能性があるとした。

一方同総裁は、軟着陸できない可能性も40%とした。 それは、インフレ率が3%近辺に高止まりするが、家計は消費を続け、コロナパンデミック(世界的な大流行)の供給制約によってすでに上昇している物価にさらに上昇圧力がかかり続ける状況をさすとしている。この場合には、さらに金利を引き上げる可能性もあるとしている。

 

このところの連日にわたる米長期金利の上昇には、こうしたFRBの強気の引き締めスタンスに加え、分断にともないこう着状態が続く政治情勢も影を落としている。10月1日の新年度入りを控え、今週末までに予算案が成立しないと、来週以降一部政府機関が閉鎖する可能性ある。

昨日ここでも取り上げたが、米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが政府閉鎖の米国債格付けへの悪影響を警告したことも、米国債売りの手掛かりとされ利回りを押し上げる。 この日は、長期金利上昇と政治的混乱を嫌気する形で、米株市場も大きく下落、主要3指数ともに3カ月ぶりの安値水準で取引を終えている。

いわゆるリスクオフ・センチメントが広がっている。 この部分だけを捉えるならば、金の買い要因ではあるものの、リスクオフの矛先が他国との比較優位に立っている米国ゆえに、ドル買いに向けられている。

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