月末５月３１日のNY金は小幅に続伸で限月交代（６月⇒８月物）もあり１９８２．１０ドルで終了。５月は月間ベースで１７ドル、０．８５％の値下がりとなった。月足の下落は２月以来のこと。
米国の製造業の景況感悪化に加え、６月の連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）での利上げ見送りを示唆する連邦準備理事会（ＦＲＢ）高官の発言に反応し、米長期金利が低下。一方、NY時間外の早朝に一時約２カ月半ぶりの高値を付けていたドル指数（DXY）も上げ幅を削る中で、金市場は買い優勢の流れとなった。一時１９９３．１０ドルまで買われたものの、それ以上の上値は重い印象だった。
貴金属の中では、ＮＹプラチナが１０００ドル割れの９９９．００ドルで終了。４月３日以来約２カ月ぶりの安値となった。ＮＹパラジウムは１３５９．００ドルと直近３月８日の安値を下回り、２０１９年６月７日以来４年ぶりの安値で終了ということに。プラチナに関しては、主要生産地南アフリカの電力不足などを囃した上昇期待があるが、確かに現地で計画停電は起きているものの、主要産業のプラチナおよびゴールド鉱山へは優先的に供給が行われているとみられる。
この日売られたのは需要国中国の指標が悪かったことによる。３１日アジア時間に中国国家統計局が発表した５月の中国製造業購買担当者景気指数（PMI）が４８．８と市場予想（４９．７）を下回り、４月（４９．２）からも低下し、好不況の境目とされる５０も下回った。５カ月ぶりの低水準でゼロコロナからの中国経済の回復が鈍いことを示し、両銘柄ともに需要懸念から売られた。
この日の市場の反応が大きかったのはＦＲＢ高官の６月利上げ見送り支持発言だった。次期ＦＲＢ金融政策担当の副議長（ブレイナード副議長の後任）に指名されているジェファーソンＦＲＢ理事は３１日の講演で、６月のFOMCが金利据え置きに傾いていることを示唆した上で、そうすることで「（その後の）追加引き締めの程度について決定する前に、より多くのデータを見ることができる」とした。
さらに「政策金利の据え置きを決定したとしても、金融政策の引き締めが終了したと受け止めるべきではない」とも述べた。 この発言は、パウエル議長と打ち合わせした上でのもので、ほぼ６月の方針を示唆したものだろう。
５月２４日にカリフォルニア大学（サンタバーバラ校）のイベントにて、ウォラーFRB理事も同様の発言をしており、FRB理事間では６月見送りの合意形成が進んでいるとみられる。ウォラー発言の方がよりタカ派的なものだった（６月は見送るが７月は利上げする方針を示唆）。
理事以外でも５月２３日にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も同じく６月見送り７月会合での利上げ再検討といういわゆる“利上げスキップ（skip）”方針への支持を表明している。
他にも３１日はフィラデルフィア連銀のハーカー総裁が６月ＦＯＭＣについて、現時点で利上げの見送りを支持しているとした。ただし、近く発表される（２日の米雇用統計など）経済指標で考えが変わる可能性もあるも述べている。
足元のインフレは高すぎるというのが、FRB内部のコンセンサスとなっており、利上げサイクルの終了は現時点では想定していないということだろう。
しかし、株式市場などでは、一度中断した利上げの再開は難しいとの見方が広がっているようにみえる。今週に入りNY金が回復基調に転じているのは、そうした見方を背景にしている可能性もありそうだ。
なお、３１日に発表された米経済指標では、「シカゴPMI」と呼ばれる５月のシカゴ購買部協会景気指数（PMI）があった。４０．４と、市場予想（４７．０）を大幅に下回った。半年ぶりの低水準となり、製造業の弱含みが改めて意識された。さらにこの日の午後に発表された、地区連銀経済報告（ベージュブック）では、２３年４月中旬以降の米経済活動は「ほぼ横ばいだった」と総括した。地域により温度差はあるものの地銀破綻後の融資厳格化や、オフィス需要の低迷が経済活動の重荷になるとの報告が目立った。
改行、赤字見やすかったです！