社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

保健・医療・福祉の連携を推進するコミュニティベースドソーシャルワークの機能 川島ゆり子(2005)

2008-11-11 22:26:48 | 社会福祉学
副題:アンケート自由記述回答による阻害要因分析をもとに

『関西学院大学 社会学部紀要 第99号』

連携の重要性が言われ続けて20数年が経つも、未だに現場では「うまく連携ができない」と言われ、学術的にも議論が止まない。その要因は何か?
大阪府A市の地域を基盤とした実践者を対象としたアンケートを通じて、その阻害要因を導き出し、その解決に有効と考えられるソーシャルワーク機能を提示している。

初めて知ったこと 連携には2つのタイプがある。
1つ目…個人援助を中心とするミクロレベ連携を起点とするボトムアップ型。
利用者の抱える困難な状況をなんとかしたい、という実践者の「人の思い」によって支えられ、展開されている。これは、人の異動によって急速に脆弱化する可能性があるという弱点がある。
2つ目…厚生省通知を踏襲する形で市町村全域のシステムを構築していった、マクロレベル連携を起点とする、トップダウン型。予算が組まれ、連携会議も「計画化」されているが、画一的でもあるため、各々のコミュニティに柔軟に対応できないという弱点がある。


「コミュニティベースドソーシャルワーク」という表現を初めて目にした。
学部時代に学んだ「コミュニティワーク」とは少し異なるようで、「コミュニティワーク」の中のイチ要素のようである。より「連携」に着目し、それを有効に「機能」させるための方法を検討しているようだ。

この調査で、「連携業務は煩雑で時間がかかる」という回答が多くあり、それに対して筆者は、「連携をスムーズに行えるよう、専門のコーディネーター役を設けることが必要」と提案している。
確かに、時間と労力を本来の専門性に集中して発揮できれば、より手厚い在宅ケアサービスが提供できるかもしれない。
しかし「連携」は、「試行錯誤」「相手の出方をみる」「いい意味での、駆け引き」などなど…その過程があってこそ、その先も「一緒にやっていこう感」が生まれることもあるのではないだろうか。そこに第三者的な立場として「連携担当者」が登場することで、余計に相手の「顔」が見れなくなってしまうことも心配だ。

「他の職種の専門性を理解し、その上で協力してやっていこう」ということを、各々の養成機関で教えていくことは、本当に難しいのだろうか…
コメント
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