ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

インバウンド&『珍事』 in札幌  

2024-07-06 11:57:57 | 
 日帰りでも済むようなことだったが、
1泊で、札幌まで行ってきた。
 札幌までは、
JRを利用するか、車で行くかである。
 今回は、車にした。

 行きは、一般道で、
洞爺湖、留寿都、喜茂別を通り中山峠、
そして定山渓温泉、札幌のルート。

 帰りは、高速道を利用し、
札幌南インター、千歳、苫小牧、
そして白老、登別、伊達インターのルート。

 ニュースなどで、日本中の観光地は、
外国人で賑わっていると聞いていた。
 「コロナ禍後の札幌はどうだろうか」
興味があった。

 到着後、遅い昼食になったが、
最近知ったラーメン店がある狸小路へ行った。
 昼下がりだったからなのか、人通りは少なく、
外国人らしい姿を見かけることもなかった。

 ラーメン店は、どうやら若者に人気のようで、
次々と入ってくるのは、若年齢層ばかりだった。
 私も家内も、こってりしたスープ味を持て余してしまった。
ここにも、外国人らしい姿はなかった。

 インバウンドの影響を感じないまま、
地下街をブラブラし、
家内のパーカーを探してユニクロへ行ってみた。 

 ユニクロなら室蘭にもあるが、
店によって、並んでいる品物が違う。
 特に色合いに差があるように思う。
きっと客層の好みによるものだろうと推測している。

 その客層についてだが、
初めてインバウンドを実感した。

 店内は、アジア系の外国人で混雑していた。
聞こえてくる言語は、
そのイントネーションから中国語(?)が多かった。
 カジュアルな服装でも、
私とは異なるセンスの人が多かった。

 会計レジを見ると、
セルフレジに人はまばらだったが、
免税のレジには長い列ができていた。
 そこだけは従業員も多く、活気に満ちていた。

 店内に並ぶ衣服は,
男物も女物も、どれも好みではなかった。
 身につけようとはしないものばかり・・・。
 
 ところが、外国人らしい男性がさげている買い物カゴは、
様々な衣類でいっぱいだった。
 「そんな客を目当てに品揃えをしているのだ」と納得した。 

 早々に店を出て、
他店にてショッピングすることに切り替えた。

 さて、そうこうしている内に、夕食時を迎えた。
再び、狸小路へ行ってみた。

 先ほどとは一変していた。
アーケード街は、人ひと人だった。
 しかも、その多くは、明らかに日本人ではなかった。

 欧米の方もいたが、子どもづれのアジア人が多かった。
どの人も私たちと同じで、夜の食事処を探しているようだった。

 私は、天ぷらかウナギが食べたかった。
伊達には、その専門店がなかった。
 折角の機会なので、それがよかった。
ところが、ここならと思える店が探せなかった。

 そこで、ここまでの道々で、
店構えが目に止まったトンカツ屋があった。
 きっと美味しいだろうと直感した。
そのお店を目指した。

 ところが、店の近くまで行ってみて、
急に足が止まった。
 行列ができていた。
並んでいる人は、片手にスマホを持った外国人ばかり・・。
 私たちの後ろから歩み寄ってくる方も、
同じような人たち・・・。
 きっとSNSで、美味しい店として紹介されていたのだろう。
これまた、早々に退散した。

 そして、行き着いたのは、
大きなビルの最上階にあったレストラン街の、
しかも、小さなトンカツ屋であった。
 
 初心者マークを胸につけた大学生風の男性が、
4人がけのテーブルを勧めてくれた。
 どれも同じテーブルで、7卓だけの店だった。 

 私たちは6番目の客で、すぐに3人組が入店し、
満席になった。

 それぞれのテーブルが見通せた。
7席の内、日本人は私たちと、
もう食べ始めていた斜め向かいの2人だけ。
 ここもインバウンドだった。

 トンカツは、注文してから時間がかかるのが常だ。
しばらくして、前の席の男女にトンカツ定食が届いた。
 すぐに女性が店員に声をかけた。

 店員は、日本語で説明をはじめた。
小さなすり鉢のゴマを擦ってからソースを入れることを、
身振りと手振りで教えた。

 勘のいい女性だ。
理解したらしく、男性と一緒にゴマをすり、
ソースをつけてトンカツを食べ始めた。

 再び、女性は店員を呼んだ。
店員はうなづき、
厨房から2本のスプーンを届けた。
 その用途に興味がわいた。
時々様子を見た。

 定食についてきた味噌汁を、
スプーンですくって飲んでいた。

 どこの国の方か分からないが、
見ると、ご飯茶碗も持とうとしなかった。
 テーブルに置いたまま、
箸でご飯をつかみ上げ、口へ持っていった。

 やっと私たちのところにも、注文した定食がきた。
私は若干席をずらし、
女性からも私が見える位置に移り、食事を始めた。

 特に、味噌汁のお椀はゆっくりと手に持ち、
おもむろにお椀に口を付けて飲んで見せた。

 女性は箸を止め、ジッとそれを見ていた。
私は素知らぬ振りをし、トンカツを食べた後、
もう1度お椀を持ち、味噌汁を飲んで見せた。

 女性は、すぐに私を真似た。
スプーンを止め、お椀に口をつけ、
箸をそえながら味噌汁を飲んだ。
 やがて、男性もお椀を手にした。

 私たちよりも先に、席を立った。
女性は、私を見て一瞬微笑んだ。
 小さな交流に、爽快な気分になっていた。

 さて、同じ夜にホテルで『珍事』があった。 
大通公園に隣接したそのホテルの最上階は、
大浴場になっていた。

 これはいいと、就寝直前に入浴することにした。
脱衣所には3、4人がいた。
 予想外の混雑に驚いた。
浴室と合わせると10人はいたと思う。 
  
 私は、いつものように脱いだ衣類をカゴに入れ、
その上に眼鏡をのせて湯船に向かった。

 最初は、大きな声で会話する方々がいたが、
その後は静かな浴室になった。

 目の前でゆったりと湯に浸かる眼鏡をかけた方がいた。
突然、脱衣カゴの眼鏡が気になった。
 そんなことを気にしたのは初めてだった。

 急いで体を洗い、浴室を出た。
私の脱衣カゴを見た。
 予感が的中した。
眼鏡が消えていた。

 脱衣室に誰もいなくなったのを待って、
眼鏡を探した。
 洗面所もトイレも、隣の休憩室も見て回った。
 
 眼鏡がないまま、部屋に戻った。
すぐにフロントに電話した
 大浴場は午前2時が終了であった。
その後、探してみるとのことだった。

 不快感は、徐々に膨らんだ。
お風呂から戻った家内は、
「こんな所にありました。
なんて、出てくるといいね」
と、言う。
 「ちゃんと脱衣カゴの一番上に置いた物が、
どうして他から見つかるんだ!!」
 イライラをぶつけた。

 そんな時だった。
フロントからの電話が鳴った。
 「ただ今、間違って持って行ったという方が、
お客様の眼鏡を持ってフロントへまいりました。
 今からお部屋にお届けしたいのですが、・・・」
と言う。

 届けてくれたフロントの女性は、
私の眼鏡であることを確認した後、
安堵した表情で、
「見つかって良かったです」を2度くり返し、
ドアを閉めた。

 どうも釈然としない。
大浴場のどこにも、私の眼鏡どころか、他の眼鏡もなかった。
 フロントに届けた方は、
どう間違えて、私の眼鏡を脱衣カゴから持って行ったのだろう。
 私の眼鏡を大浴場から持ち去った動機が、
不思議だった。
 様々な仮説を考えてはみたが、謎解きは無理だった。
だから『珍事』として、イライラを収めることに・・・・




      匂い立つ 栗の花 
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晴れたり曇ったり <3話>

2022-04-02 13:56:55 | 
 ① 待ちに待った3回目のワクチン接種の日が来た。
集団接種会場へ行くと、入口玄関に係員が構えていて、
検温を促された。

 そして、すぐに案内係に誘導され、受付へ関係書類を提出する。
その後も、数歩進むと係員が、次へ次へと私を導く。
 何も戸惑うことなどない。
あっという間に、左上腕へ注射針が打たれた。

 「針が刺さった箇所と小さな絆創膏を張ったところが、
違っているのでは?・・」。
 でも、それを訴えるほどの大事ではないと思い、
押し黙った。

 その後は、椅子の並んだ場所で15分間の待機だ。
同世代の顔なじみが何人もじっと座っていた。
 1分刻みに、担当者から待機制限が解かれ、次々と立ち上がる。
私も同様にその時を待ち、最後は会場出口へ向かう。
 再び、玄関で係員が、今度は外を指差し帰宅を促した。

 高齢者の集団接種である。
誰一人迷うことなく進めるには、
これだけの気配りがいるのだろう。
 運営のご苦労を思うと、
他地域に比べて接種時期が遅かった当地の対応への不満も、
小さくなった。

 左腕に痛みは出たものの、
幸いなことに高熱などの副反応がなく、
まもなく1週間が過ぎる。

 そこで、
「よ~し、少し安心してしばらく暮らせる!」
と、意気込んだ矢先だ。
 「政府は4回目接種用として、
ファイザー製とモデルナ製の確保を進めています」
のニュースが流れてきた。
 「いったい、どう言うことだ」。
安堵の想いが再び遠のき、心が曇った。

 まだまだ先は見えない。
コロナ騒動は、これからも長く続くのか・・・。


 ② 雪解けが進んだが、小雨の降る夕暮れ時に、
買い忘れた物を思い出した。
 急ぎ、市内のスーパーへ車を走らせた。

 左折して、その店の広い駐車場へ入ろうと、
ハンドルを切った。
 すると、一瞬、左後輪が縁石に乗り上げ、車体が傾いた。
わずかなミスだが、長い運転歴で初めての経験だ。

 ショックだった。
自宅に戻ってから、何度もその時を振りかえった。

 確かに、雨と夕暮れで、駐車場入り口の左側面がよく見えなかった。
だから、左折のタイミングを間違えた。
 ミスの原因はそれだと思った。

 それにしても、
雨と夕暮れの条件は、特別なことではない。
 「よく見えない」なんて、
今までには考えられないことだった。
 不安が膨らんだ。
確かに、視力の衰えは少しずつ気になっていた。

 突然、同年齢の何人かが、
白内障の手術を受けたことを思い出した。

 年に1,2回だが、一緒にゴルフをする友人と、
手術後はじめてラウンドした時だ。
 私のドライバーショットがバンカー方向へ飛んでいった。
てっきりバンカーへ入ったものと思った。
 ところが、「50センチ位手前で、止まっているよ」。
彼は自信満々だった。

 近くまで行くと、彼の言った通り、
ボールがフェアウエーに残っていた。 
 「手術したら、よく見えるようになったんだ」。
彼は胸を張った。
 どの人も術後の感想は同様だった。

 彼らにあやかりたい。
「私も手術してもらおう!」。
 思い立ったら、一刻も早い眼科受診を望んだ。
 
 数日を待って、予約が取れ、
初めて眼科の検査を受けた。
 幾つもの検査機器のレンズをのぞいた。
気づくと、2時間以上が過ぎていた

 対面した医師は、検査結果と自らの診察から
「白内障については、まだ手術する必要はありません。
これ以上悪くならないように、薬を出します」。

 手術で、画期的な改善を期待しながらも、
「その必要なし」の診断結果に、小心者の私は胸をなで下ろした。

 ところが、医師は続けた。
「それよりも、眼圧が高くて、
このままでは、やがて緑内障になる可能性があります。
 眼圧を下げる薬で様子を見ましょう」。

 予期しないことだった。
医師は、緑内障は失明にもつながると説明していたようだが、
もう上の空だった。

 検査で焦点が定まらないままの目で、
眼科医院近くの薬局から外を見上げた。
 晴れていたはずが、重たい雲に変わった。

 年齢に伴う衰えは、誰もが同一ではない。
私の新たな老化に唇を噛みながら、
それでも、まだ高い空を見続けていようと誓った。


 ③ 早春の朝は、快晴で無風の日が多い。
まだ肌寒いが、10日前から、
体育館のランニングを、外の朝ランに変えた。

 矢っ張り爽快感が違う。
そして、矢っ張り伊達の景観が好きだと思った。
 
 やや上り坂がきつい5キロの終盤だった。
顔見知りのご夫婦が散歩していた。
 追い越しながら、挨拶をした。

 すると、ご主人が私を見て、訊いた。
「今年の伊達ハーフは、どうするの?」。
 少し走りを緩めて振り返り、応じた。
「まだコロナだがら、高齢者は避けた方がいいでしょう。
今年は止めにしました」。
 
 もう2ヶ月も前に決めたことだ。
エントリー締め切りもずっと以前に終わっている。
 だが、誰にもそれを言わずにきた。
いや、誰かに言う機会もなかった。

 不参加を初めて口にした。
すると、急に気分が軽くなった。
 不思議な感覚に、私が驚いた。

 そんな変化に想いを巡らせながら、
上り坂ランを続けた。

 伊達ハーフマラソンについては、
3年前に途中棄権してから、再開を待ち望んできた。
 やっと、今年、リベンジの時がきた。

 でも、私は、ワクチン接種でも優先してもらう
高齢者だ。
 「まだ、出番じゃない」。

 そう決めたが・・・。
心は、晴れていなかったようだ。
 ご夫婦を追い越した時の問いへの答えが、
それに気づかせた。

 5キロを走り終え、まもなく自宅に到着。
「なんだ、お前!・・もう1年待てばいいだけ・・」。
 私へ、そう笑ってみせた。




    やっと 今年の 福寿草
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