日帰りでも済むようなことだったが、
1泊で、札幌まで行ってきた。
札幌までは、
JRを利用するか、車で行くかである。
今回は、車にした。
行きは、一般道で、
洞爺湖、留寿都、喜茂別を通り中山峠、
そして定山渓温泉、札幌のルート。
帰りは、高速道を利用し、
札幌南インター、千歳、苫小牧、
そして白老、登別、伊達インターのルート。
ニュースなどで、日本中の観光地は、
外国人で賑わっていると聞いていた。
「コロナ禍後の札幌はどうだろうか」
興味があった。
到着後、遅い昼食になったが、
最近知ったラーメン店がある狸小路へ行った。
昼下がりだったからなのか、人通りは少なく、
外国人らしい姿を見かけることもなかった。
ラーメン店は、どうやら若者に人気のようで、
次々と入ってくるのは、若年齢層ばかりだった。
私も家内も、こってりしたスープ味を持て余してしまった。
ここにも、外国人らしい姿はなかった。
インバウンドの影響を感じないまま、
地下街をブラブラし、
家内のパーカーを探してユニクロへ行ってみた。
ユニクロなら室蘭にもあるが、
店によって、並んでいる品物が違う。
特に色合いに差があるように思う。
きっと客層の好みによるものだろうと推測している。
その客層についてだが、
初めてインバウンドを実感した。
店内は、アジア系の外国人で混雑していた。
聞こえてくる言語は、
そのイントネーションから中国語(?)が多かった。
カジュアルな服装でも、
私とは異なるセンスの人が多かった。
会計レジを見ると、
セルフレジに人はまばらだったが、
免税のレジには長い列ができていた。
そこだけは従業員も多く、活気に満ちていた。
店内に並ぶ衣服は,
男物も女物も、どれも好みではなかった。
身につけようとはしないものばかり・・・。
ところが、外国人らしい男性がさげている買い物カゴは、
様々な衣類でいっぱいだった。
「そんな客を目当てに品揃えをしているのだ」と納得した。
早々に店を出て、
他店にてショッピングすることに切り替えた。
さて、そうこうしている内に、夕食時を迎えた。
再び、狸小路へ行ってみた。
先ほどとは一変していた。
アーケード街は、人ひと人だった。
しかも、その多くは、明らかに日本人ではなかった。
欧米の方もいたが、子どもづれのアジア人が多かった。
どの人も私たちと同じで、夜の食事処を探しているようだった。
私は、天ぷらかウナギが食べたかった。
伊達には、その専門店がなかった。
折角の機会なので、それがよかった。
ところが、ここならと思える店が探せなかった。
そこで、ここまでの道々で、
店構えが目に止まったトンカツ屋があった。
きっと美味しいだろうと直感した。
そのお店を目指した。
ところが、店の近くまで行ってみて、
急に足が止まった。
行列ができていた。
並んでいる人は、片手にスマホを持った外国人ばかり・・。
私たちの後ろから歩み寄ってくる方も、
同じような人たち・・・。
きっとSNSで、美味しい店として紹介されていたのだろう。
これまた、早々に退散した。
そして、行き着いたのは、
大きなビルの最上階にあったレストラン街の、
しかも、小さなトンカツ屋であった。
初心者マークを胸につけた大学生風の男性が、
4人がけのテーブルを勧めてくれた。
どれも同じテーブルで、7卓だけの店だった。
私たちは6番目の客で、すぐに3人組が入店し、
満席になった。
それぞれのテーブルが見通せた。
7席の内、日本人は私たちと、
もう食べ始めていた斜め向かいの2人だけ。
ここもインバウンドだった。
トンカツは、注文してから時間がかかるのが常だ。
しばらくして、前の席の男女にトンカツ定食が届いた。
すぐに女性が店員に声をかけた。
店員は、日本語で説明をはじめた。
小さなすり鉢のゴマを擦ってからソースを入れることを、
身振りと手振りで教えた。
勘のいい女性だ。
理解したらしく、男性と一緒にゴマをすり、
ソースをつけてトンカツを食べ始めた。
再び、女性は店員を呼んだ。
店員はうなづき、
厨房から2本のスプーンを届けた。
その用途に興味がわいた。
時々様子を見た。
定食についてきた味噌汁を、
スプーンですくって飲んでいた。
どこの国の方か分からないが、
見ると、ご飯茶碗も持とうとしなかった。
テーブルに置いたまま、
箸でご飯をつかみ上げ、口へ持っていった。
やっと私たちのところにも、注文した定食がきた。
私は若干席をずらし、
女性からも私が見える位置に移り、食事を始めた。
特に、味噌汁のお椀はゆっくりと手に持ち、
おもむろにお椀に口を付けて飲んで見せた。
女性は箸を止め、ジッとそれを見ていた。
私は素知らぬ振りをし、トンカツを食べた後、
もう1度お椀を持ち、味噌汁を飲んで見せた。
女性は、すぐに私を真似た。
スプーンを止め、お椀に口をつけ、
箸をそえながら味噌汁を飲んだ。
やがて、男性もお椀を手にした。
私たちよりも先に、席を立った。
女性は、私を見て一瞬微笑んだ。
小さな交流に、爽快な気分になっていた。
さて、同じ夜にホテルで『珍事』があった。
大通公園に隣接したそのホテルの最上階は、
大浴場になっていた。
これはいいと、就寝直前に入浴することにした。
脱衣所には3、4人がいた。
予想外の混雑に驚いた。
浴室と合わせると10人はいたと思う。
私は、いつものように脱いだ衣類をカゴに入れ、
その上に眼鏡をのせて湯船に向かった。
最初は、大きな声で会話する方々がいたが、
その後は静かな浴室になった。
目の前でゆったりと湯に浸かる眼鏡をかけた方がいた。
突然、脱衣カゴの眼鏡が気になった。
そんなことを気にしたのは初めてだった。
急いで体を洗い、浴室を出た。
私の脱衣カゴを見た。
予感が的中した。
眼鏡が消えていた。
脱衣室に誰もいなくなったのを待って、
眼鏡を探した。
洗面所もトイレも、隣の休憩室も見て回った。
眼鏡がないまま、部屋に戻った。
すぐにフロントに電話した
大浴場は午前2時が終了であった。
その後、探してみるとのことだった。
不快感は、徐々に膨らんだ。
お風呂から戻った家内は、
「こんな所にありました。
なんて、出てくるといいね」
と、言う。
「ちゃんと脱衣カゴの一番上に置いた物が、
どうして他から見つかるんだ!!」
イライラをぶつけた。
そんな時だった。
フロントからの電話が鳴った。
「ただ今、間違って持って行ったという方が、
お客様の眼鏡を持ってフロントへまいりました。
今からお部屋にお届けしたいのですが、・・・」
と言う。
届けてくれたフロントの女性は、
私の眼鏡であることを確認した後、
安堵した表情で、
「見つかって良かったです」を2度くり返し、
ドアを閉めた。
どうも釈然としない。
大浴場のどこにも、私の眼鏡どころか、他の眼鏡もなかった。
フロントに届けた方は、
どう間違えて、私の眼鏡を脱衣カゴから持って行ったのだろう。
私の眼鏡を大浴場から持ち去った動機が、
不思議だった。
様々な仮説を考えてはみたが、謎解きは無理だった。
だから『珍事』として、イライラを収めることに・・・・
匂い立つ 栗の花
1泊で、札幌まで行ってきた。
札幌までは、
JRを利用するか、車で行くかである。
今回は、車にした。
行きは、一般道で、
洞爺湖、留寿都、喜茂別を通り中山峠、
そして定山渓温泉、札幌のルート。
帰りは、高速道を利用し、
札幌南インター、千歳、苫小牧、
そして白老、登別、伊達インターのルート。
ニュースなどで、日本中の観光地は、
外国人で賑わっていると聞いていた。
「コロナ禍後の札幌はどうだろうか」
興味があった。
到着後、遅い昼食になったが、
最近知ったラーメン店がある狸小路へ行った。
昼下がりだったからなのか、人通りは少なく、
外国人らしい姿を見かけることもなかった。
ラーメン店は、どうやら若者に人気のようで、
次々と入ってくるのは、若年齢層ばかりだった。
私も家内も、こってりしたスープ味を持て余してしまった。
ここにも、外国人らしい姿はなかった。
インバウンドの影響を感じないまま、
地下街をブラブラし、
家内のパーカーを探してユニクロへ行ってみた。
ユニクロなら室蘭にもあるが、
店によって、並んでいる品物が違う。
特に色合いに差があるように思う。
きっと客層の好みによるものだろうと推測している。
その客層についてだが、
初めてインバウンドを実感した。
店内は、アジア系の外国人で混雑していた。
聞こえてくる言語は、
そのイントネーションから中国語(?)が多かった。
カジュアルな服装でも、
私とは異なるセンスの人が多かった。
会計レジを見ると、
セルフレジに人はまばらだったが、
免税のレジには長い列ができていた。
そこだけは従業員も多く、活気に満ちていた。
店内に並ぶ衣服は,
男物も女物も、どれも好みではなかった。
身につけようとはしないものばかり・・・。
ところが、外国人らしい男性がさげている買い物カゴは、
様々な衣類でいっぱいだった。
「そんな客を目当てに品揃えをしているのだ」と納得した。
早々に店を出て、
他店にてショッピングすることに切り替えた。
さて、そうこうしている内に、夕食時を迎えた。
再び、狸小路へ行ってみた。
先ほどとは一変していた。
アーケード街は、人ひと人だった。
しかも、その多くは、明らかに日本人ではなかった。
欧米の方もいたが、子どもづれのアジア人が多かった。
どの人も私たちと同じで、夜の食事処を探しているようだった。
私は、天ぷらかウナギが食べたかった。
伊達には、その専門店がなかった。
折角の機会なので、それがよかった。
ところが、ここならと思える店が探せなかった。
そこで、ここまでの道々で、
店構えが目に止まったトンカツ屋があった。
きっと美味しいだろうと直感した。
そのお店を目指した。
ところが、店の近くまで行ってみて、
急に足が止まった。
行列ができていた。
並んでいる人は、片手にスマホを持った外国人ばかり・・。
私たちの後ろから歩み寄ってくる方も、
同じような人たち・・・。
きっとSNSで、美味しい店として紹介されていたのだろう。
これまた、早々に退散した。
そして、行き着いたのは、
大きなビルの最上階にあったレストラン街の、
しかも、小さなトンカツ屋であった。
初心者マークを胸につけた大学生風の男性が、
4人がけのテーブルを勧めてくれた。
どれも同じテーブルで、7卓だけの店だった。
私たちは6番目の客で、すぐに3人組が入店し、
満席になった。
それぞれのテーブルが見通せた。
7席の内、日本人は私たちと、
もう食べ始めていた斜め向かいの2人だけ。
ここもインバウンドだった。
トンカツは、注文してから時間がかかるのが常だ。
しばらくして、前の席の男女にトンカツ定食が届いた。
すぐに女性が店員に声をかけた。
店員は、日本語で説明をはじめた。
小さなすり鉢のゴマを擦ってからソースを入れることを、
身振りと手振りで教えた。
勘のいい女性だ。
理解したらしく、男性と一緒にゴマをすり、
ソースをつけてトンカツを食べ始めた。
再び、女性は店員を呼んだ。
店員はうなづき、
厨房から2本のスプーンを届けた。
その用途に興味がわいた。
時々様子を見た。
定食についてきた味噌汁を、
スプーンですくって飲んでいた。
どこの国の方か分からないが、
見ると、ご飯茶碗も持とうとしなかった。
テーブルに置いたまま、
箸でご飯をつかみ上げ、口へ持っていった。
やっと私たちのところにも、注文した定食がきた。
私は若干席をずらし、
女性からも私が見える位置に移り、食事を始めた。
特に、味噌汁のお椀はゆっくりと手に持ち、
おもむろにお椀に口を付けて飲んで見せた。
女性は箸を止め、ジッとそれを見ていた。
私は素知らぬ振りをし、トンカツを食べた後、
もう1度お椀を持ち、味噌汁を飲んで見せた。
女性は、すぐに私を真似た。
スプーンを止め、お椀に口をつけ、
箸をそえながら味噌汁を飲んだ。
やがて、男性もお椀を手にした。
私たちよりも先に、席を立った。
女性は、私を見て一瞬微笑んだ。
小さな交流に、爽快な気分になっていた。
さて、同じ夜にホテルで『珍事』があった。
大通公園に隣接したそのホテルの最上階は、
大浴場になっていた。
これはいいと、就寝直前に入浴することにした。
脱衣所には3、4人がいた。
予想外の混雑に驚いた。
浴室と合わせると10人はいたと思う。
私は、いつものように脱いだ衣類をカゴに入れ、
その上に眼鏡をのせて湯船に向かった。
最初は、大きな声で会話する方々がいたが、
その後は静かな浴室になった。
目の前でゆったりと湯に浸かる眼鏡をかけた方がいた。
突然、脱衣カゴの眼鏡が気になった。
そんなことを気にしたのは初めてだった。
急いで体を洗い、浴室を出た。
私の脱衣カゴを見た。
予感が的中した。
眼鏡が消えていた。
脱衣室に誰もいなくなったのを待って、
眼鏡を探した。
洗面所もトイレも、隣の休憩室も見て回った。
眼鏡がないまま、部屋に戻った。
すぐにフロントに電話した
大浴場は午前2時が終了であった。
その後、探してみるとのことだった。
不快感は、徐々に膨らんだ。
お風呂から戻った家内は、
「こんな所にありました。
なんて、出てくるといいね」
と、言う。
「ちゃんと脱衣カゴの一番上に置いた物が、
どうして他から見つかるんだ!!」
イライラをぶつけた。
そんな時だった。
フロントからの電話が鳴った。
「ただ今、間違って持って行ったという方が、
お客様の眼鏡を持ってフロントへまいりました。
今からお部屋にお届けしたいのですが、・・・」
と言う。
届けてくれたフロントの女性は、
私の眼鏡であることを確認した後、
安堵した表情で、
「見つかって良かったです」を2度くり返し、
ドアを閉めた。
どうも釈然としない。
大浴場のどこにも、私の眼鏡どころか、他の眼鏡もなかった。
フロントに届けた方は、
どう間違えて、私の眼鏡を脱衣カゴから持って行ったのだろう。
私の眼鏡を大浴場から持ち去った動機が、
不思議だった。
様々な仮説を考えてはみたが、謎解きは無理だった。
だから『珍事』として、イライラを収めることに・・・・
匂い立つ 栗の花