⑴
ゴールデンウィークの最中だ。
受話器を取ると、「久しぶり」の声の次に、
「連休中だけど、何か予定はある?」
と問われた。
「特段の計画はないけど・・・」
と応じた。
すると、
「じゃ、会いに行くわ」。
「いつ?」
やや間が、
「・・・ううん、明日、行く!
明日で、いいかい?」。
やや驚きながらも、
「いいよ。2人で来るの?!」
「うん、一緒に行く。
車で・・、お昼頃着くと思う。」
「高速道でしょう。
インターの近くまで来たら、電話して。
道案内するから。
着いたら、一緒にお昼ご飯を食べよう」
「わかった。じゃ、明日!」。
余りにも突然のことだ。
2人とは、大学時代の友人である。
初めて伊達の我が家にやって来るのだ。
翌日、家内が用意した昼食を前に、
「会いたいと思う人と、
いつかではなく今会っておこうと思ってサ。
だから、急でも構わないから、
後悔しないようにとやってきましたよ」
と彼は言う。
嬉しかった。
彼をYさん、奥さんをKちゃんと呼び、
食べながら、思い出話に花が咲いた。
そして互いの近況報告に、
時間はアッと言う間に過ぎた。
そんな団らんの合間だった。
Kちゃんが、目の前の五目チラシを食べながら
「私、白いご飯があまり好きじゃないの。
だから、これすごく美味しい!」
と、若い頃と変わらない笑顔を作った。
同じ趣向仲間がいた。
「それって同感だよ。
嫌いと言う訳じゃないけど、どうも白いご飯はイマイチで、
いつも納豆とかふりかけとかをかけないとね・・」
「そうよね。そうするといいけれど、
白いままじゃね」。
それに対し、Yさんも家内も
「白いままが美味しいのに」と。
でも、Kちゃんも私も、
「そうじゃない」と譲らない。
急の再会も良かったが、
それにプラスアルファー、白米への共感者がいた。
⑵
麺類が好物である。
ラーメンやそば、うどんなら、例え毎食でも構わない。
焼肉屋へ行っても、
最後は真冬も冷麺でなければならなっかった。
さて、スパゲッティーも麺類だ。
貧乏学生だった頃、奨学金支給日にだけ、
ナポリタンを食べに行った。
ずっとパスタは、
ナポリタンの味で満足だった。
40代になった頃だったか、
飲んだシメに、ペペロンチーノが出てきた。
それまでは知らなかった美味しさに驚いた。
それからはその店に行くと、
最後はペペロンチーノを注文した。
徐々に、イタリアンレストランが増え、
どこの店にもペペロンチーノのメニューがあった。
店によって味は若干違ったが、
ニンニクの効いた美味しさは、パスタにぴったり。
次第に、他のパスタメニューにも惹かれるようになった。
カルボナーラ以外は、大好物になった。
半年前になるだろうか、
市内スーパーの生麺のコーナーに、
生うどんや生そばと一緒に、
生パスタが並んでいるのに気づいた。
生パスタ以外の麺は、
複数の製麺所からのものが、
種類豊富に場所を取っていた。
だが、生パスタは、
M製麺所の細麺と太麺の2種類が、
ひっそりと置かれていた。
市内のレストランでも、
生パスタのメニューを見たことがあった。
しかし『生』に惹かれて、
オーダーしたことはなかった。
同様に、スーパーに並んだ生パスタに、
特別の関心はなかった。
ただ何故か物珍しくて、
たびたびその棚に立ち止まった。
「一度、食べてみたら・・!?」
家内の誘いに、2食入り細麺の袋に手が伸びた。
乾麺パスタはどのメーカーも、
ゆで時間7分程度だったが、
生パスタは2分から2分半でいいと、
袋に説明書きがあった。
「これは、手軽でいい!」。
その日、茹でたあと湯切りをして、
平皿にのせた。
市販のスパゲッティーソースをかけて、
混ぜ合わせみた。
私は『旨辛ペペロンチーノ』ソース、
家内は『きのこと野沢菜』ソース。
もちもちした食感に驚いた。
ソースもよく絡んだ。
新しい美味しさに出会った。
家内のも少々つまみ食い。
どちらも生パスタに合っていた。
好きな麺料理が1つ増えた。
「今度は、太麺を試してみよう!」
家内も、賛成してくれた。
⑶
4人がけのダイニングテーブルは部屋の中央だが、
大きな窓と平行に置いてある。
だから、向き合って座ると、
1人は窓を背にするが、
もう1人は、外を見ることができた。
窓からは、駐車場の先の通りが見え、
通学の子や散歩の方、通過する車もわかった。
時には、小枝に止まる小鳥も・・。
1日に3回、それらを見ながら食事をする人、
全く目にできない人。
ふと、公平感に差があることに気づいた。
今までは、ずっと外が見える席に私が座っていた。
でも、2ヶ月前から月ごとに席を交替するように改めた。
私は、初めて窓を背にした。
家内は通りを歩く人を見て、
「あら、久しぶりにHさんが通った。
しばらく見なかったけれど、元気そう」。
ずっと私が言っていたのと同じようなことを言った。
それを聞いて、私は思わず体を反転させて外を見る。
すでにHさんの姿はなくなっていた。
「なんだ。もう行っちゃったのか!」
以前、家内が言っていた決めぜりふを言う。
一度や二度じゃない。
毎日食事時には、同様のことをくり返す。
半月が過ぎると、早く元の席に戻りたくなった。
そして、今月は外の見える席が私。
でも、残り半月で交替だ。
公平感に差があるなんて、気づかなきゃよかった。
「もう遅い! 本当に失敗した!」
~鈴蘭だから?~立ち止まる
ゴールデンウィークの最中だ。
受話器を取ると、「久しぶり」の声の次に、
「連休中だけど、何か予定はある?」
と問われた。
「特段の計画はないけど・・・」
と応じた。
すると、
「じゃ、会いに行くわ」。
「いつ?」
やや間が、
「・・・ううん、明日、行く!
明日で、いいかい?」。
やや驚きながらも、
「いいよ。2人で来るの?!」
「うん、一緒に行く。
車で・・、お昼頃着くと思う。」
「高速道でしょう。
インターの近くまで来たら、電話して。
道案内するから。
着いたら、一緒にお昼ご飯を食べよう」
「わかった。じゃ、明日!」。
余りにも突然のことだ。
2人とは、大学時代の友人である。
初めて伊達の我が家にやって来るのだ。
翌日、家内が用意した昼食を前に、
「会いたいと思う人と、
いつかではなく今会っておこうと思ってサ。
だから、急でも構わないから、
後悔しないようにとやってきましたよ」
と彼は言う。
嬉しかった。
彼をYさん、奥さんをKちゃんと呼び、
食べながら、思い出話に花が咲いた。
そして互いの近況報告に、
時間はアッと言う間に過ぎた。
そんな団らんの合間だった。
Kちゃんが、目の前の五目チラシを食べながら
「私、白いご飯があまり好きじゃないの。
だから、これすごく美味しい!」
と、若い頃と変わらない笑顔を作った。
同じ趣向仲間がいた。
「それって同感だよ。
嫌いと言う訳じゃないけど、どうも白いご飯はイマイチで、
いつも納豆とかふりかけとかをかけないとね・・」
「そうよね。そうするといいけれど、
白いままじゃね」。
それに対し、Yさんも家内も
「白いままが美味しいのに」と。
でも、Kちゃんも私も、
「そうじゃない」と譲らない。
急の再会も良かったが、
それにプラスアルファー、白米への共感者がいた。
⑵
麺類が好物である。
ラーメンやそば、うどんなら、例え毎食でも構わない。
焼肉屋へ行っても、
最後は真冬も冷麺でなければならなっかった。
さて、スパゲッティーも麺類だ。
貧乏学生だった頃、奨学金支給日にだけ、
ナポリタンを食べに行った。
ずっとパスタは、
ナポリタンの味で満足だった。
40代になった頃だったか、
飲んだシメに、ペペロンチーノが出てきた。
それまでは知らなかった美味しさに驚いた。
それからはその店に行くと、
最後はペペロンチーノを注文した。
徐々に、イタリアンレストランが増え、
どこの店にもペペロンチーノのメニューがあった。
店によって味は若干違ったが、
ニンニクの効いた美味しさは、パスタにぴったり。
次第に、他のパスタメニューにも惹かれるようになった。
カルボナーラ以外は、大好物になった。
半年前になるだろうか、
市内スーパーの生麺のコーナーに、
生うどんや生そばと一緒に、
生パスタが並んでいるのに気づいた。
生パスタ以外の麺は、
複数の製麺所からのものが、
種類豊富に場所を取っていた。
だが、生パスタは、
M製麺所の細麺と太麺の2種類が、
ひっそりと置かれていた。
市内のレストランでも、
生パスタのメニューを見たことがあった。
しかし『生』に惹かれて、
オーダーしたことはなかった。
同様に、スーパーに並んだ生パスタに、
特別の関心はなかった。
ただ何故か物珍しくて、
たびたびその棚に立ち止まった。
「一度、食べてみたら・・!?」
家内の誘いに、2食入り細麺の袋に手が伸びた。
乾麺パスタはどのメーカーも、
ゆで時間7分程度だったが、
生パスタは2分から2分半でいいと、
袋に説明書きがあった。
「これは、手軽でいい!」。
その日、茹でたあと湯切りをして、
平皿にのせた。
市販のスパゲッティーソースをかけて、
混ぜ合わせみた。
私は『旨辛ペペロンチーノ』ソース、
家内は『きのこと野沢菜』ソース。
もちもちした食感に驚いた。
ソースもよく絡んだ。
新しい美味しさに出会った。
家内のも少々つまみ食い。
どちらも生パスタに合っていた。
好きな麺料理が1つ増えた。
「今度は、太麺を試してみよう!」
家内も、賛成してくれた。
⑶
4人がけのダイニングテーブルは部屋の中央だが、
大きな窓と平行に置いてある。
だから、向き合って座ると、
1人は窓を背にするが、
もう1人は、外を見ることができた。
窓からは、駐車場の先の通りが見え、
通学の子や散歩の方、通過する車もわかった。
時には、小枝に止まる小鳥も・・。
1日に3回、それらを見ながら食事をする人、
全く目にできない人。
ふと、公平感に差があることに気づいた。
今までは、ずっと外が見える席に私が座っていた。
でも、2ヶ月前から月ごとに席を交替するように改めた。
私は、初めて窓を背にした。
家内は通りを歩く人を見て、
「あら、久しぶりにHさんが通った。
しばらく見なかったけれど、元気そう」。
ずっと私が言っていたのと同じようなことを言った。
それを聞いて、私は思わず体を反転させて外を見る。
すでにHさんの姿はなくなっていた。
「なんだ。もう行っちゃったのか!」
以前、家内が言っていた決めぜりふを言う。
一度や二度じゃない。
毎日食事時には、同様のことをくり返す。
半月が過ぎると、早く元の席に戻りたくなった。
そして、今月は外の見える席が私。
でも、残り半月で交替だ。
公平感に差があるなんて、気づかなきゃよかった。
「もう遅い! 本当に失敗した!」
~鈴蘭だから?~立ち止まる