ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

慣らされたくない日々 ~その周辺で

2022-01-22 12:14:02 | 時事
 ▼ 現職の頃から、楽しみにしていたが、
今年も1月15日の朝日新聞『天声人語』に、
「現代学生百人一首」の記述があった。

 今年、この欄で取り上げた秀作は、全てがコロナがらみ。
現代学生の胸中に、切なくなった。

 ・文化祭二年連続オンライン慣らされていくこの空気感
                     (高2石川胡桃)
 ・家の中授業を受ける弟の背後を通る私は忍者
                     (高2小塚萌愛)
 ・リモートで授業はじまり映る部屋勉強よりも掃除頑張る
                     (高1黒木薫里)
 ・ピカピカに磨いたフルート出番なく涙にぬれたコロナ禍の夏
                     (高1武田衣未)
 ・『外出自粛』自粛疲れのストレスを戦闘ゲームにぶつける私
                     (中1星夏穂)
 ・二回目のワクチン接種終わったよ単身赴任の父への切符
                     (高3田代桃)
 ・次はいつ会えるのかしらと泣く祖母の手も握れずにガラスと会話
                     (高2大場美言)
 ・視線落ち口にはマスク会話なく耳にはイヤホンまるで三猿
                     (高1永康滉子)
 ・十年後再会しても気づくかなマスク顔しか知らない友達
                     (高2上山愛裕)
 ・アクリル板マスク消毒ディスタンス慣れたくなかったこんな生活
                     (高2樋口壱之介)

 ▼ 2年前、北海道では「さっぽろ雪まつり」の頃から、
コロナが騒がれはじめた。
 そして、私の場合は、顧問をしている研究会が
3月に創立60周年祝賀会を予定していたが、急遽中止になった。
 コロナの怖さを実感した最初だった。

 現代学生百人一首にあるが『慣れたくなかったこんな生活』の、
収束が見通せないまま、
オミクロン株という新たな波が、すごい勢いで押し寄せている。
 
 振り返ると、IPS細胞の山中先生は、
「このコロナとの戦いは、マラソンのようなものになります」
と、長期戦を強調していた。
 そうは言っても、こんなに長いマラソンになるとは・・。

 最近強く思う。
どれだけ続いても、こんな日々に慣らされたくない。
 一日でも早く、世界中がここから脱出することを願う。
だから、今日も懲りずに、外出から戻ると、
真っ先に手洗いを入念にする。

 ▼ 東京まで足を伸ばすことはためらわれた。
せめて札幌までならばと、
12月初旬、ホテルを予約し1泊2日で出かけた。

 主な目的は、ショッピング。
私のセーター、家内のダウンコート、
それに、口元がかけ始めた2人の湯飲み茶碗など。
 2年も我慢したのだから、
少し値が張ってもいいじゃないかと・・。

 行ってみて、驚いたことを2つ体験した。

 デパートと地下街を巡り、歩き疲れてしまった。
スタバで休憩することにし、大きなウインドー近くの席に座った。

 コーヒーを片手に、ガラス越しに行き交う人の波を見た。
コロナ禍で初めて接する、都会の喧噪だった。

 人通りの賑やかさが懐かしく、
しばらくウインドーの向こうを見続けた。
 当然なことだが、どの人もマスクをしていた。

 その顔、顔を目で追いながら、ハッとした。
マスクの形や色に違いはあったが、
みんな、不織布マスクだった。

 気にかけて見直しても、
布製やウレタン製をしている人は、
1人も見つけられなかった。

 列車の中でも、札幌駅に着いてからも、
私たちは、ずっと布マスクだった。
 病院以外では、布製に違和感がなかった。

 私も家内も、バックに入れていた不織布マスクを取り出し、
急ぎ交換した。
 コロナへの警戒感の違いを実感する。

 ▼ もう一つは、ホテルの料金だ。
札幌には、学校共済組合のホテルがある。
 一般のホテルより安いので、そこを予約した。

 フロントで手続きをしていると、
2人とも居住地を証明するものの提示を求められた。
 「どうみん割」というコロナ割が始まっていた。

 宿泊料金が1万円以上なら5千円が、
それ以下なら2千円が割引になるというのだ。
 その日は朝食付きで5千円の部屋をお願いしてあった。
なので、3千円で宿泊できることになった。

 しかも、2日間限定だが、
1人2千円のクーポン券まで頂いた。
 つまりは、実質4千円の割引だ。
朝食付き千円で、ツインの部屋に泊まれたのだ。

 「思ってもみない低料金!」。
喜んでいいはずだが、なぜか心が重い。

 コロナで疲弊する旅行業界と地域の活性化策なのだろう。
でも、本来なら私が支払うべき料金の補填先はどこ・・?

 目先のことで済まされない重圧が、
いつまでもついてきた。

 ▼ 『寒い冬に外で体を動かそう』。
昨年末、そんなキャッチフレーズで、
自治会の私の地域が、「子ども冬まつり」を会員に呼びかけた。

 実は、昨年はコロナでできなかった催しだった。
今年はどうしようかと、私も参加して何度か話し合った。

 役員に子育て真っ最中のお父さんが2人、新たに加わった。
2人は、口をそろえて言った。

 「コロナでかわいそうな想いをいっぱいしてるんですよ。
その子たちを、少しでも喜ばせたい。
 頑張って、やってあげたいです」。

 感染対策に万全を期して、開催することにし、
参加者と大人の実行委員を募った。
 子どもと大人が、約40人手を上げた。

 感染防止を考えると、
これ以上は望まない参加数だった。

 オミクロン株で、開催は中止になったが、
『・・その子たちを、少しでも喜ばせたい』
に共感があった。
 その手応えが、無性に心強かった。
 



     荒々しい山容に 快晴の冬
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パンディミック2年目の冬・周辺

2021-12-04 14:16:31 | 時事
  ①
 朝、寝室のカーテン越しに外を見ると、
庭はうっすらと雪化粧をしていた。
 遂に、本格的な冬が訪れたよう・・。

 伊達に移り住んだのは、12年6月だから、
10度目の冬になる。

 私の癖のようなものだが、
四季の変わり目には、決まって「この春は・・・」「この夏は・・・」と、
新たな気持ちで踏み出そうとする。
 今は「この冬は・・・」と思案を巡らせている最中だ。

 10度目だからと、「特段の冬にしたい」などと、
力を入れるつもりはない。
 しかし、昨冬を振り返ると、コロナ禍とあって、
何一つとして足跡らしきものがない。
 せめて「この冬は何かを」と・・。

  ②
 そんな緩い私の日常に、
現職小学校教諭から久しぶりのメールが届き、
ハッとさせられた。

 『先週は校内音楽会、今週は持久走大会、
そして来週の土曜日は、保護者が参観できる学校公開と続きます。
 コロナで延期していた行事のラッシュです。』

 コロナが沈静化している好機だ。
この時を有効活用して、今までできなかった活動を何としても実施したい。
 そんな学校の強い意志が、伝わってきた。

 同時に、子どもも先生も、それから保護者も、
目まぐるしい日々が続いていることだろう。
 どの行事も十分な準備ができないまま、
満足のいくものではないに違いない。
 そう直感した。

 きっと保護者からは厳しい声も届くだろう。
子ども達も先生たちも、
1つ1つの行事から大きな達成感を得られないかも・・。
 それでも、やらないよりはやった方がいいに決まってる。

 その時のできる限りを尽くした経験は、
出来不出来に関係なく、
子どもにとって貴重な財産になると私は信じる。

 だから、「子どもも先生も保護者も、
様々な難しさはあるだろうが、今を頑張ってほしい」。
 私のような老兵が声にすることでもないと思いつつ、
でも、やはりエールの1つでも送りたくなった。

  ③
 パンデミックが2年も続いてる。
子ども達にも大きな変化があって当然だ。
 最近、その一端を知り、危機感をつのらせている。
羅列する。

 ▼月初めに郵送されてくる『楽書きの会だより』に、
こんな1文があった。

 『朝日新聞の「声」欄に、
「昨年の5月に産んだ自分の三女はいわば「コロナネイティブ」だ。
 健康だが上の娘二人より発語が遅い。
家族以外の人との交流が圧倒的に少なく、マスク越しで口の動きが見えない。
 上の娘たちは言葉のシャワーを浴びて育った」という投稿が載っていました。

 とても考えさせられました。
昨年あたりからの小学校の教室での1年生と、それと教える先生。
 口元や表情が見えないって、
それぞれ大変だろうな~って思ってしまいます。』

 マスクがコロナ感染防止にいかに有効かは、
海外との比較でも、十分に立証されている。
 それが、子どもの生育に大きく影を落としているとは、
私も衝撃を受けた。

 ▼先日、テレビ報道でこんな子どものシーンを見た。
小学校2年生が生活科見学へ行った。
 久しぶりの校外学習で、子供らは生き生きしていた。
最後に、見学した施設をバックに集合写真を撮ることになった。
 学級全員が整列し、先生がみんなに言った。
「ではシャッターを押します。マスクをはずしていいですよ!」。
 すると、すぐに1人の子が叫んだ。
「いやだ~!」。

 テレビは、叫んだ子を映した。
列の中で、しぶしぶマスクをはずしはしたが、
その子は、手のひらで口を塞ぎ、先生のカメラを見ていた。
 よく見ると、手で口をふさぐ子が他にも数人いた。

 マスクへの信頼と同時に、
感染への警戒心の強さと恐怖感がどれ程か、
子ども達の心に大きな傷があることに気づかされた。

 ▼ 同様の出来事を私も体験した。
第5波の緊急事態宣言が解除になった秋口だった。

 朝の爽やかな風を受け、足どりも軽く朝ランをしていた。
いつもはなかなか行く気にならない急坂を駆け上り、
中学校の前を通り過ぎた。
 中学生の登校時間帯と重なっていた。

 ランニングの時は、人と会わないことをいいことに、
私はマスクをしていない。
 だから、すれ違う中学生とは、反対側の道路脇を走った。

 マスク姿の中学生はどの子も、車道を挟んで走る私に、
頭を下げ、朝のあいさつをしてくれた。

 ところが、やや小柄な中1らしい男子が、
道のはずれに立ち止まっていた。
 マスクの上からさらに片手で口を押さえ、
もう一方の手を振り、私に近寄るなと合図をしていた。
 顔には、おびえがあった。

 「マスクをしないで、走る私が怖いのだ」。
その様子から、すぐに推測できた。
 「ごめんね。マスクなしで」。
小さくそう言って、スピードを上げで反対の道路脇を走り抜けた。

 コロナへの恐怖心の大きさを目の当たりにし、
心が痛んだ。

 ▼ ご近所に高校の先生がいる。
土曜日の朝、立ち話をする機会があった。

 今日も出勤すると言う。
休日出勤の事情を尋ねてみた。
 「オンラインでの就職面接練習に生徒がくるんです」。

 そして、オンラインの面接にもメリットとデメリットがあることを
教えてくれた。
 それよりもこんな話が心に留まった。

 「練習でもオンラインだから、生徒はマスクを取るんですよ。
もう1年以上もマスクした顔しか見てないでしょう。
 すごく大人になった顔が画面に現れ、
全然イメージが違って、ビックリすることがしばしばで、
面接練習が飛んでしまうこともあるんですよ」。

 マスクで隠され、相手の表情が読み取れないのは、
私の日常にもあることだが、
まさか、子どもの成長や変化までマスクは覆っていたとは・・・。




   当地の芝生 緑のまま雪の下へ 
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自己責任と徒労感!?

2021-01-09 19:17:01 | 時事
 ▼ 年末・年始は、コロナの感染者数にばかり、
気が取られた。
 そして、連日「過去最多!」のアナウンスを聞くたび、
気が滅入った。
 私だけではない。
きっと、多くの方が同じ気持ちだったに違いない。

 年が明け、首都圏で暮らす息子からメールが届いた。
そこに、こんな一文があった。

 『迫り来る危機にただただ無策のまま為すがままで、
自己責任論を押しつけられているようでもあるが、
一方でロックダウンなんかをされてしまうと、
業界的には大混乱アンド大打撃でもあり、
確かに難しいところだなと。
 結局のところ、やはり自己責任・・、となるのかね。
もはや、かかるかからないは運の問題としか思えない・・。
 ベストを尽くしてもリスクをゼロにはできない・・。』

 一個人がどんなにベストを尽くしても罹患してしまう。
大都会では、そのリスクが大きい。
 それを自己責任で済ませるなんて、
あまりにも理不尽だ。

 だが、無策のまま為すがままの日々なら、
窮屈な暮らしになるのも、無理ないこと。

 蓄積された徒労感を、息子に限らず
都会暮らしの老若男女は抱いていることだろう。
 それが現実だと思う。
 
 だから、今くらい政治の力を求められている時はない。
失政を恐れず、果敢な施策を迅速にと願うばかりだ・・・。 

 ▼ 若干、話は変わるが、その施策の一例に移る。
クリスマスが近づいた頃だ。
 久しぶりに隣町の兄の店を訪ねた。
家族経営の小さな飲食店だ。

 兄と、息子、娘、そしてパートさん2・3名で、
もっぱら魚料理をセールスポイントにしている。
 最近は、コロナ禍で、客足の鈍い日がずっと続いている。

 ところが、私が行ったその日は、何日かぶりで、
宴会の予約が2組も入ったと、兄は明るい表情だった。

 1組は8人で、もう1組は6人だとか・・・。
襖のついた小上がりに、
いつもより倍の広さにテーブルを置き、
コース料理が並べられていた。

 しばらくして、同時に宴会が始まった。
きっと、このご時世だからだろう、
乾杯の発声もその後の会話も、ヒッソリとしていた。

 やがて、私と家内が座るカウンターも、
他の小上がりも満席になった。
 「こんな事は、久しぶり。」
兄は、何度もくり返しながら、
厨房で忙しく刺身を切っていた。

 そんな様子を見ながら、ふと、
「もしも、この店に休業要請がきたなら・・」
と、頭をよぎった。
 大義は、当然コロナの感染拡大防止だ。
地方での協力金は、おそらく多くても30万円程度だろう。

 一時は、GoToで客足は戻った。
しかし、春からの自粛続きで、金繰りは火の車らしい。
 そのような状況で、要請を受け入れられるのだろうか。

 終わりが見えているなら、
細々とでもなんとか食いつなぐだろう。
 だが、収束は誰の目にも先が見えていない。
そうなら、自衛手段を講じることも考える事になる。
 その一手が、
「休業要請を受け入れない!」ことになるとしたら・・。
  
 「今日は、ババガレイがうまいぞ!」。
兄が勧めるその煮付けを食べながら、
私の思考は、迷路へと進んでいく。

 そして、ついには稚拙な想いは、行き止まる。
 『「コロナが収束するまで、協力金は保障します。
貴方の生活は必ず守ります。」
 そんな虫のいい約束事を、誰かしてくれるといいのに・・!』。

 さて、ここ数日、事態は急変している。
1都3県に、再び「緊急事態宣言』が出された。
 その上、全国では感染者が1日7800人を超えてしまった。
宣言の地域拡大も間近だろう。
 都会に限らず、ドンドンとコロナが迫ってきている。

 兄の店への要請だって、
絵空事の域ではなくなるかも・・。
 これが実際となった時、
私はどんな考えに至るのだろうか。
 無理を承知で、
「要請を受け入れろ!」と言えるだろうか。

 施策の1例を思い描いても、
今後、難しい選択が突きつけられそうだ。
 ここにも、自己責任と徒労感が見え隠れして、
気分が沈む。
  
 ▼ そんな想いの時、ふと開いた新聞のページに、
雲間から射し込む一本の陽光を見た。

 第6回になるようだが、朝日新聞が中・高校生に、
『心に響いた大切な「ことば」と、エピソードを教えて下さい』
と、「私の折々のことばコンテスト2020」を募集した。

 約3万もの応募から、
各部門賞がそのページに掲載されていた。
 最優秀賞に力をもらった。    
  
  ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

            聖園女学院中学校(神奈川)2年 小倉 欄

  私の事を想うなら、あなたのことを一番大切にしてください。
                              母親
 私の一番心に残っている言葉は、緊急事態宣言中に出勤していく母に
言われた言葉です。私の母は看護師で、新型コロナの患者を受け入れて
いる病院に勤務していました。そのため、私は、母が出勤することが毎
日心配でたまりませんでした。母が仕事に行くときには行ってほしくな
い気持ちがありました。一方で、人のために命懸けで戦う姿が、とても
かっこよく見えました。誇らしい気持ちと、不安で心配な気持ちが入り
交じり、私は仕事に行く母に、行かないでとも、行ってらっしゃいとも
言えず泣かずに見送るのが精いっぱいでした。そんな時に母がかけてく
れたのがこの言葉でした、私は自分の命の重さを知り、世界で一番温か
い愛情を受けました。

  ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

 「受賞にあたって」と、小倉さんはこんなコメントを添えている。

 『 緊急事態宣言下、早朝に病院へと笑顔で出勤する母を、家族で見送りました。
小学5年生の妹は「行かないで」と泣いていましたが、
自分は泣くこともできず、「大丈夫?」と母に聞くと、
この言葉が返ってきました。
 最初は母が心配で「そんなことできないよ」と思ったけど、
いまは自分を大切にして、その上で周りの人を大切にしたいと考えています。

 患者を救う母はかっこよくて、一番一緒にいて幸せと思える存在です。
将来は母のように医療に携わる仕事をして、一緒に働くのが夢です。・・・』

 ▼ コロナ禍にあっても、
ブレずに真っ直ぐ前を向き、歩み続ける母子を見習いたい。




   2階から見た 冬の夕陽
          ※1,2,3月のブロク更新は隔週の予定です
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自主防災、共助に ・・・ 備えて

2018-08-25 19:24:16 | 時事
 昨年度から、地域の自治会で役員を引き受けている。
それも、総務ということで、
月に1回だが、会長、副会長、総務等で構成する事務局会議に、
出席しなければならない。

 世帯数800を越える自治会である。
事務局会議のメンバーも10数名になる。

 毎回2時間を越える話し合いだが、
その内容は、私のような者には、
時には新発見、時には違和感、時には感嘆等々の連続で、
今までとは異質な体験のくり返しである。

 さてさて、それが今後の私に何をもたらすのか、
これまた未知であるからこそ、見当もつかない。
 だが、お引き受けした役目である。
来年3月までは、
しっかりとその任を努めようと思っている

 もう1年も前の会議のことだ。

 台風が襲来し、近くの小さな川が氾濫した。
隣の自治会の道路が、一部冠水した。
 何日も道路脇は、流れてきた泥土でおおわれていた。
自然公園も被害を受け、閉鎖になった。

 それでなくても、全国各地から自然災害の知らせが相次ぎ、
今も極端な気候が継続している。

 そんなことを危惧してだろうが、
自治会長さんがこんなことを言った。

 「今のままの防災体制では、十分ではない。
このままでは、夜も眠れない。」

 会長という責任の重さ故の発言と感じた。
しかし、
「じゃ、こうしましょう。」「これは、どうでしょう。」
と言うほど、軽い問いかけではなかった。

 会長さんの想いはよく理解できたが、
その場で言える何ものも、私にはなかった。
 「どうしましょうか。」
の問いに、『だんまり』を通すだけだった。
 
 会長さんは、それに屈しなかった。
会議のたびに、防災対策を話題にした。

 そして、ついに、少人数による『自主防災検討委員会』の新設を、
提案した。
 検討委員会では、より有効性のある自主防災を目指した改善策をまとめ、
提案することが、その目標となった。

 7月、第1回の会議があった。
私は、その委員会のメンバーに指名され、出席した。
 ここでも、雲をつかむような話題が続いた。

 考えられる災害に優先順位をつけては・・・。
災害時、自治会の会館は、役にたつだろうか・・・。
 いつ避難所へ行くのがいい・・・。
単身の高齢者を誰がどう手助けする・・・。
 避難所まで、どうやっていけば・・・。

 8月、お盆があけてすぐ、
『北海道自主防災組織リーダー研修会イン室蘭』があった。
 検討委員会のメンバーで、丸一日、それに参加した。
4名の講師から、多くの示唆があった。

 それにしても、1日研修とは、
もう10年以上もそのような機会はなかった。 
 私には大きな刺激になった。

 3.11の大津波、
テレビでは放映されなかった衝撃の映像を、いくつも見た。
 時々、その画面を直視できなかった。

 某地域での津波避難訓練の行動を、解析画像で見ながら、
その特徴を解説してもらった。
 避難の多様性に、課題が山積していることを知った。

 そして、複数の講師から強調されたのが、
減災のための、『自助・共助・公助』の重要性だった。  
 
 『自助』は、「自ら行動し、自分や家族を守ること、
そのため、災害への備えをすること」を言う。
 『共助』は、「近隣住民と共に助け合い、地域の人を守ること、
そのため、災害への備えをすること」。
 そして、『公助』は、『行政機関やライフライン各社等、
公共機関の応急・復旧対策活動」を指す。

 さて、研修会を終えてから、
1つの自治会が目指す『共助』の有り様が、
いつも脳裏から離れない。

 何をどう備えることが、
この地域の住民を守ることになるのか。
 さらには、この地域の被害をより少なくできるのか。
今の私が、思いつく3つを書いておく。

 ① 避難訓練が生きる
 勤務したどこの小学校でも、月1回、必ず避難訓練があった。
若い頃、その訓練を軽く考えていた。
 しかし、あるベテラン女性教員の言葉が、私を変えてくれた。

 「私は、避難訓練が大嫌い。
その日はいつも朝からドキドキするの。
 そうでしょう。
本当にそんなことがあったら、
絶対に子ども達の命を守れるかどうか・・。
 不安で、不安で・・・。」

 私は、避難訓練にそこまでの現実感を持っていなかった。
しかし、いつ、どこで、何が起こるか、誰にも分からない。
 その災害時に備えることの1つが、避難訓練だ。
子どもの命を守る大事な行事だと痛感した。

 以来、どこかで聞いた言葉だが、
『訓練は実際のように、実際は訓練のように!』と、
子ども達にも、職員にも言い続けた。

 3.11の時、都内は震度5強に見舞われた。
初めての大きな揺れに、子ども達はきっと恐怖を覚えたと思う。
 それでも、先生を信頼し、その指示に従い、整然と行動した。
くり返しの避難訓練があったからと、私は思った。

 地域の共助とて、訓練の重要性は少しも変わらないと思う。
しかし、学校などとは比較にならない程、
想定される災害には多様性がある。
 考えられる様々な災害に応じた住民参加の防災訓練など、
現実性が乏しい。
 
 それでもできる訓練は、いくつもある。
避難指示の伝達訓練、近隣弱者の安否確認訓練、
水防の土嚢積み訓練等々。
 無理のない防災訓練をくり返すだけでも、
実際の時に必ず生きる。 

 ② 非常時用備品を蓄える
 都内の小中学校の1室には、備蓄倉庫がある。
非常食をはじめ、水、毛布、簡易トイレ等々、
始めてその備えを目にした時、若干心強ささえ感じた。

 学校の近隣住民は、年1回の訓練時に、
倉庫に入り、その備えを確認している。

 さて、伊達市には、どこにどれだけの備品があるのだろう。
全く知らない。
 残念ながら、私の自治会ではそれらしき物を備蓄していない。

 避難所に行けば、安全に寝る場所と、3食を提供してもらえる。
最近は、そんな思いでいる方も少なくないと聞く。

 確かに被災された方には、できる限りの援助は惜しまない。
しかし、災害時こそ、共助だろう。
 共に助け合い、力を持ち寄り難局を切り抜けることが、
求められる。

 だから
避難・情報収集・伝達用の備品が必要になる。
 初期消火・水防・救出・救護用具があるといい。
飲料水や非常食だけでなく、
ガスコンロ、ボンベ、鍋、やかんなど給食給水の機材もほしい。

 備品の必要性と使用頻度は、災害の規模によって異なる。
しかし、できうる限りの備えが、悔いを残さないことにつながる。
 とにかく、地道にコツコツと、備蓄品を充実させるに限る。

 ③ リーダーシップを発揮する
 平常時に防災力を高めるため、
避難を初めとした各種訓練の実施が必要だ。
 それには、自主防災組織のリーダーシップが欠かせない。

 円滑な訓練が進められるよう、
十分なコミュニケーションがとれる「気配りができる人」。
 活動を継続できる「忍耐強い人」。
そして、訓練の企画運営など、「行動する時は先頭に立つ人」。
 そんな資質を持ったリーダーが求められている。

 また、災害時では、リーダーシップを発揮するこそが、
何よりも強く求められるに違いない。
 そのために、次の3つの力が必要とさえるだろう。

 ・地域をよく知り、地域を大切に思う心を持っていること
・防災の知識等々、防災の「知恵者」として信頼されていること
 ・相手の要望や状況を的確に把握し、
自らの考えを的確に伝えるコミュニケーション力を持っていること

 ある1人の方に、
このようなリーダー性を期待するのは、困難だろう。
 防災意識が高い複数の方に、
その時々のリーダー役を託すしかないと思う。

 今は、そんな人材を発掘することが、
最重要課題なのではなかろうか。





  秋の七草 『オミナエシ』が もう
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ハンドルを握って あれこれ

2018-01-26 22:02:58 | 時事
 結婚してすぐに普通免許を取得した。
当時、東京の某区では車通勤が黙認されていた。
 電車とバスを使うと1時間以上かかったが、
高速道路を利用すると40分もかからずに、
勤務校まで行けた。
 なので、毎日ハンドルを握った。

 運転が日常だったので、上達も早かった。
ハンドルを握ることに、抵抗がなくなり、
運転の楽しさを知った。

 なので休日を利用して、よくドライブした。
それだけでなく、長期休みには車で家族旅行をした。
 何回か、北海道の実家まで途中フェリーを利用し、
マイカーで行った。
 ついでに、北海道内や東北を観光したこともあった。
朝霧の中を、十和田湖までの奥入瀬渓谷を
車で走った。
 その時の美しさは、今も心に残っている。

 だが、年令と共に、お酒の機会も増えた。
車通勤も厳しく規制された。
 もっぱら、運転は月1、2回の、
休日ゴルフだけになった。
 旅行も、電車の利用に変わった。

 さて、伊達に来てからのことになる。
ここからは、若干生々しい話になるが、お許し頂きたい。

 地方はどこも同じだろうが、伊達も車社会である。
我が家の周りを見ても、各家に駐車スペースがあり、
中には家族の人数分の車が止まっている家もある。

 驚くことに、我が家の横にあるゴミステーションまで、
車でゴミ袋を持参する方も少なくない。

 ハンドルを握る人も、老若男女と様々で、
中には、苦手でも、仕方なく運転している方もいるようだ。

 駐車ラインを無視した自家用車を、
スーパーの駐車場でよく見かける。
 また、優先車線なのに「お先にどうぞ」と進入車へ走行を譲る車、
ウインカーを点けないまま、急に右左折をする車など珍しくない。
 つい最近、市内でも、店舗の出入口に乗用車が突入した。
やはり、アクセルとブレーキを間違えたらしい。

 「どうかハンドルを握ることをおやめ下さい。」
そう言いたいが、生活に欠かせない方も多いようで、
なかなか難しい問題である。

 そんな訳で、首都圏を走っていた頃よりも、
気の抜けない運転を強いられている。

 ところがである。ずっとゴールドだった私が、
今はブルー免許に変わってしまった。

 交通事故の多い北海道である。
取り締まりが厳しくて当然である。
 案の定、2度も違反キップを切られてしまった。

 1度は、伊達に移住する直前である。
自宅がほぼ完成し、最終確認を済ませた帰路だった。
 新千歳空港へレンタカーを走らせていた。
若干予定より遅れていた。
 高速道を降りて、苫小牧から一般道を走り始めてまもなく、
パトカーが追ってきた。

 「ちょっとスピードが出てましたね。」
「空港まで、急いでいるんですが・・・。」
「すぐ終わります。後ろのパトカーまで・・。」
 結局10数キロオーバーで、反則金が課せられた。

 若干のイライラはあったが、
急いでいたのは確かだったので、納得して応じた
 それでも、出発時刻に間に合わせようと、
空港ビル内を小走りした時には、不愉快さがつのった。
 「スピードを出しすぎた。今後は法令遵守で!」
などの反省心は全くなかった。

 次の違反は、ちょっとした語り草になる。
その日は、時には「プチ贅沢を」と、
家内と二人で、1泊2ラウンドのゴルフに出掛けた。

 我が家から1時間半程、高速道を走り、
残り30分、一般道を行けばゴルフ場だった。

 一般道に出てまもなく、
軽乗用車と普通トラックについて走ることになった。
 家内の実家へ行く際に何回か利用した道だった。
走り慣れていた。

 プレイ時間までに余裕があったので、
前の2台につかず離れず進んだ。

 しばらく行くと、道路脇に停車していたパトカーが、
突然赤色灯を点けて、追いかけてきた。
 「前の車、停車しなさい。」 
くり返し叫ばれた。
 訳も分からず、道路脇に車を止めた。

 パトカーから、中年の警官が降りてきた。
ウインドをさげると、警官は胸を張って言った。
「スピードの出し過ぎ。後ろのパトカーまで来て。」
「エッ! スピード違反ですか。それ程、出してませんよ。」
「いいから、降りて。向こうで説明するから。」

 しぶしぶパトカーまで行くと、
その警官は、赤色灯の付け根にあるレンズを指さした。
 「これ、性能のいい測定器。これで計ったから間違いない。
さあ、後ろの席に乗って、乗って。」
 なかば強引に、後部座席に座らされた。

 パトカーの運転席にいた若い警官が、
記録が印字された紙片を示した。
「66キロを測定しました。16キロオーバーです。」
「エッ、ここは50キロ制限だったの。」
 すると、再び中年の警官が言った。
「そうだよ。さあ、ここに、拇印をおして。」

 私は、しぶしぶ速度違反を認め、
反則金支払いの用紙を受け取った。
 しかし、どうしても釈然としない。

 パトカーを降りかけて、二人に尋ねた。
「こんな時の苦情って、どこに電話すればいいの。」
「エッ、苦情。どんな苦情?」
中年警官が、聞き返した。
 
 私は、意地悪く言った。
「電話番号を教えて下さい。そこで話しますから。」
「それより、何が苦情なんだ。」
「今は、言いたくない。」
 私は、そう言ってパトカーを降りた。
 
 すかさず、二人もパトカーを降り、
歩道の私に迫った。

 「いいですか。私の前に2台も車が走っていました。
なのに、その2台を見過ごして、私を捕まえた。
 それでいいのか。ただ、それを訊きたいだけ。」
そう言い捨てて、愛車に戻ろうとした。

 すると、中年警官は私の腕をつかんだ。
「その説明なら、現場に戻ってしましょう。
もう一度、パトカーに乗って」
 「私は、もうスピード違反を認めたんだから、
もういいんです。戻りません。」
 警官の手を、ふりほどいた。

 車で待っていた家内が、異変に気づいて降りてきた。
中年警官は、くり返した。
 「いや、是非説明したい。車に乗って!」
「もういいです。」

 私は、立ちふさがっている警官を、
押しのけようとした。
 すると、警官はやや大き目の声で言った。
「奥さん、見ましたよね。公務執行妨害だ。」
 「そんな馬鹿な。なに言ってるんだ。」
私は、あきれ果て、その場を離れようとした。
 そうはさせないと、警官は
「現場に戻って。」とくり返した。
私は、「もういい。」をくり返した。

 そこに仲裁役のように、若い警官が割って入った。
そして、私と家内を引き連れ、中年警官と距離を置いた。

 そこで、この警官が私たちに言ったことが凄い。
「落ち着いてください。すみません。
あの警察官は、古いタイプの警察官なので・・。」

 私も家内も、唖然とした。
それまでのイライラや怒りが、
一気にどこかへ飛んでいってしまった。

「わかりました。後はよろしくお願いします。」
そう言い残し、私と家内は愛車に乗り込んだ。

 その場を離れたバックミラーに、
何やら話し合う2人の警官の立ち姿があった。
 
 その日のゴルフは、時々「古いタイプの警察官」が頭をよぎり、
笑いをこらえながらのプレイになった。
 


  伊達も極寒 凍てつく『大雄寺』 

 
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