キャッチフレーズ『北の湘南』が、的を得ているかどうか、
時には首を傾げたりもするが、
当地が風光明媚な所であることは、間違いない。
ところが、それに一役買っている有珠山は、
20年から30年を周期に噴火をくり返す。
まもなくその時が来る。
ハザードマップを見ると、
市街地の多くは、最大50センチの降灰が予想されている。
また6年前の台風接近では、
市内の河川の多くが危険水域に達した。
我が家近くにある自然公園内の小さな川も増水し、
全ての木道の橋を押し流し、
川からあふれた水が、一般道に泥水となって流れ出た。
もう少しで多くの民家が、床上浸水になるところだった。
そのような状況を踏まえ、
地元自治会の役員会では、防災への関心が高まった。
早々、『自主防災組織検討委員会』を立ち上げ、
災害に備えた取り組みが始まった。
私は、検討委員会の一員に加わり、
その後、自主防災組織本部会議の防災リーダーになった。
自治会が進める自主防災の取り組みは、多岐にわたる。
中でも、災害情報の伝達と災害発生前の避難誘導、
発生後の救援が重要課題と考えた。
今年度で、本部会議が始動してから4年目になる。
キャリア不足は補いようがないが、この1年の試行錯誤をふり返る。
① 地域に迫る災害の危機を、
いち早く住民に伝える手段は電話しかない。
役員への電話連絡網を作成し、印刷配布したものの、
それが有効に機能するとは考えにくかった。
そこで、会員への一斉メール配信で、
災害や避難の情報を発信できないか、
本部会議で話題になった。
早速、私が調査し、提案することに・・。
退職の2年前、不審者や災害などの情報を、
学校から保護者へメールで配信できるようになった。
多くの保護者がそのシステムに登録し利用が始まり、
手軽に学校からの情報を得ることができるようになったのだ。
あの3.11で、急きょ下校を保護者への引き渡しにできたのも、
メール配信のシステムがあったからだった。
この伝達手段なら、
きっと自治会でも災害時に有効機能すると確信した。
そのシステムを運用している企業がどこにあるのか。
すでに活用している町内会・自治会はないか。
など、情報収集から始めた。
市の防災課を訪ねた。
北海道の自治会連合会へ問い合わせをした。
ネット検索も長時間試みた。
メールの一斉配信は、様々な団体や組織で活用されていた。
年間費用も思っていたより安価だった。
システムの運用を扱う業者も、全国各地にあった。
そして、遂にメール配信を導入している自治会も探し出した。
具体的な取り組み事例が聞けると意気込んだ。
勇んで、その自治会の担当者に電話した。
彼は、私の問い合わせに明るく応じてくれた。
システム契約をした会社名や連絡先、
導入時の費用や年間経費など、
私の知りたいことの全てに答えてくれた。
そして、最後に彼は現状をこう語った。
「システムを導入して3年になります。
今のところメール登録者は、自治会員の30パーセント程度です。
高齢者宅が多く、なかなか登録数が伸びません。
それでも重要な情報はご近所から伝わりますので、
無駄ではなかったと思っています」。
それまで膨らんでいた希望が、さっとしぼんでいった。
自治会活動のデジタル化は、
まだまだハードルが高いことを知った。
本部会議では、収集した資料と一緒に、
導入した自治会の現状をそのまま報告した。
メール配信の導入は、数年先に見送られた。
② 訓練したことは、災害時の行動に直結する。
だから「訓練は実際のように、実際は訓練のように」と、
子供たちに繰り返し教えてきた。
自治会の防災も同じだ。
訓練したことは、必ず災害時に役立つ。
防災訓練は、重視しなければならない取り組みだった。
なので、徐々に対象者を拡大し、
防災訓練を実施していくことにした。
昨年度は、本部役員と防災班班長の15名で初めて実施した。
今年度は自治会役員約70名に実施案内を配り、
防災訓練への参加を呼び掛けた。
内容は、消防署の指導による消火訓練と救命訓練、
そして購入した発電機の操作訓練だった。
多くの参加を見込んだ。
秋晴れの穏やかな休日の午後、
会場の準備を整え、参加者を待った。
参加者用にと、ペットボトルのお茶を、
50本用意した。
ご夫婦での参加、若いお父さん、
女性、高齢者の姿もあった。
しかし、何度数えても総勢21人。
計画通り実施したものの、盛り上がりに欠けた。
その様子を見ながら。
防災訓練にわざわざ足を運ぶには、
相当の危機意識が必要なのだと気づいた。
「どんな防災訓練もなかなか人が集まりません。
でも、懲りずに続けることです」。
消防署OBの方が、私の肩をポンと叩いてくれた。
③ 2年前になるが、
本部会議は、地元の民生委員の力も借りながら、
単身高齢者を対象に災害時避難誘導の援助体制を整えた。
75歳以上の単身者で希望する方に、
避難時の誘導をするサポーターを配置したのだ。
サポーターは、高齢者宅の近隣住民。
できるだけ顔なじみの方へ、防災本部が依頼した。
その更新の時期が来た。
この2年間で対象者に加わった方もいた。
死亡、転居。施設入所の方も・・。
改めて対象者名簿を作成し、
来年度から2年間のサポート体制作りを始めた。
60名を越える対象者宅へ、2人ワンセットの4組で、
一軒一軒を訪ね歩き、サポート希望の有無を訊いた。
「まだ元気だから、大丈夫」と胸を張ってみせる方もいた。
しかし、「これからも,どなたかにお願いしたい」
と、頭を下げる方が半数以上。
次は、サポーター探し。
初年度、サポーターへの理解が難しく難航した。
しかし、大きな危機はなかったが、
サポーター経験を2年間積んだ。
「○○さんが、それで少しは安心なら」と、
快く受けてくれる方の多いこと。
「これって、本当の共助ですよね。
分かりました。Aさんのサポーターやります」。
初めて訪ねたお宅だったが、私の依頼にこう答えてくれた。
凍てついて滑る帰り道だったが、浮かれながら歩いていた。

真冬の遠景 ~洞爺湖
時には首を傾げたりもするが、
当地が風光明媚な所であることは、間違いない。
ところが、それに一役買っている有珠山は、
20年から30年を周期に噴火をくり返す。
まもなくその時が来る。
ハザードマップを見ると、
市街地の多くは、最大50センチの降灰が予想されている。
また6年前の台風接近では、
市内の河川の多くが危険水域に達した。
我が家近くにある自然公園内の小さな川も増水し、
全ての木道の橋を押し流し、
川からあふれた水が、一般道に泥水となって流れ出た。
もう少しで多くの民家が、床上浸水になるところだった。
そのような状況を踏まえ、
地元自治会の役員会では、防災への関心が高まった。
早々、『自主防災組織検討委員会』を立ち上げ、
災害に備えた取り組みが始まった。
私は、検討委員会の一員に加わり、
その後、自主防災組織本部会議の防災リーダーになった。
自治会が進める自主防災の取り組みは、多岐にわたる。
中でも、災害情報の伝達と災害発生前の避難誘導、
発生後の救援が重要課題と考えた。
今年度で、本部会議が始動してから4年目になる。
キャリア不足は補いようがないが、この1年の試行錯誤をふり返る。
① 地域に迫る災害の危機を、
いち早く住民に伝える手段は電話しかない。
役員への電話連絡網を作成し、印刷配布したものの、
それが有効に機能するとは考えにくかった。
そこで、会員への一斉メール配信で、
災害や避難の情報を発信できないか、
本部会議で話題になった。
早速、私が調査し、提案することに・・。
退職の2年前、不審者や災害などの情報を、
学校から保護者へメールで配信できるようになった。
多くの保護者がそのシステムに登録し利用が始まり、
手軽に学校からの情報を得ることができるようになったのだ。
あの3.11で、急きょ下校を保護者への引き渡しにできたのも、
メール配信のシステムがあったからだった。
この伝達手段なら、
きっと自治会でも災害時に有効機能すると確信した。
そのシステムを運用している企業がどこにあるのか。
すでに活用している町内会・自治会はないか。
など、情報収集から始めた。
市の防災課を訪ねた。
北海道の自治会連合会へ問い合わせをした。
ネット検索も長時間試みた。
メールの一斉配信は、様々な団体や組織で活用されていた。
年間費用も思っていたより安価だった。
システムの運用を扱う業者も、全国各地にあった。
そして、遂にメール配信を導入している自治会も探し出した。
具体的な取り組み事例が聞けると意気込んだ。
勇んで、その自治会の担当者に電話した。
彼は、私の問い合わせに明るく応じてくれた。
システム契約をした会社名や連絡先、
導入時の費用や年間経費など、
私の知りたいことの全てに答えてくれた。
そして、最後に彼は現状をこう語った。
「システムを導入して3年になります。
今のところメール登録者は、自治会員の30パーセント程度です。
高齢者宅が多く、なかなか登録数が伸びません。
それでも重要な情報はご近所から伝わりますので、
無駄ではなかったと思っています」。
それまで膨らんでいた希望が、さっとしぼんでいった。
自治会活動のデジタル化は、
まだまだハードルが高いことを知った。
本部会議では、収集した資料と一緒に、
導入した自治会の現状をそのまま報告した。
メール配信の導入は、数年先に見送られた。
② 訓練したことは、災害時の行動に直結する。
だから「訓練は実際のように、実際は訓練のように」と、
子供たちに繰り返し教えてきた。
自治会の防災も同じだ。
訓練したことは、必ず災害時に役立つ。
防災訓練は、重視しなければならない取り組みだった。
なので、徐々に対象者を拡大し、
防災訓練を実施していくことにした。
昨年度は、本部役員と防災班班長の15名で初めて実施した。
今年度は自治会役員約70名に実施案内を配り、
防災訓練への参加を呼び掛けた。
内容は、消防署の指導による消火訓練と救命訓練、
そして購入した発電機の操作訓練だった。
多くの参加を見込んだ。
秋晴れの穏やかな休日の午後、
会場の準備を整え、参加者を待った。
参加者用にと、ペットボトルのお茶を、
50本用意した。
ご夫婦での参加、若いお父さん、
女性、高齢者の姿もあった。
しかし、何度数えても総勢21人。
計画通り実施したものの、盛り上がりに欠けた。
その様子を見ながら。
防災訓練にわざわざ足を運ぶには、
相当の危機意識が必要なのだと気づいた。
「どんな防災訓練もなかなか人が集まりません。
でも、懲りずに続けることです」。
消防署OBの方が、私の肩をポンと叩いてくれた。
③ 2年前になるが、
本部会議は、地元の民生委員の力も借りながら、
単身高齢者を対象に災害時避難誘導の援助体制を整えた。
75歳以上の単身者で希望する方に、
避難時の誘導をするサポーターを配置したのだ。
サポーターは、高齢者宅の近隣住民。
できるだけ顔なじみの方へ、防災本部が依頼した。
その更新の時期が来た。
この2年間で対象者に加わった方もいた。
死亡、転居。施設入所の方も・・。
改めて対象者名簿を作成し、
来年度から2年間のサポート体制作りを始めた。
60名を越える対象者宅へ、2人ワンセットの4組で、
一軒一軒を訪ね歩き、サポート希望の有無を訊いた。
「まだ元気だから、大丈夫」と胸を張ってみせる方もいた。
しかし、「これからも,どなたかにお願いしたい」
と、頭を下げる方が半数以上。
次は、サポーター探し。
初年度、サポーターへの理解が難しく難航した。
しかし、大きな危機はなかったが、
サポーター経験を2年間積んだ。
「○○さんが、それで少しは安心なら」と、
快く受けてくれる方の多いこと。
「これって、本当の共助ですよね。
分かりました。Aさんのサポーターやります」。
初めて訪ねたお宅だったが、私の依頼にこう答えてくれた。
凍てついて滑る帰り道だったが、浮かれながら歩いていた。

真冬の遠景 ~洞爺湖