2週間程前のことになる。
お向かいの奥さんが、
大きなビニル袋に詰め込んだほうれん草を、
2抱えも持ってきた。
「これ、食べて。」
「エッ、こんなに!」
家内はその量に、今にも悲鳴を上げそうだった。
地元の農家さんから、
ビニールハウス1棟分のほうれん草を、頂いたのだそうだ。
まったく、豪快な話である。
毎日収獲しているが、「多すぎて困っている。」と、
お向かいさんは曇った顔をした。
ビニル袋のほうれん草は、採ったばっかり。
シャキッと生きがよく、美味しそうだ。
早速、2人で食べる数日分を残し、
大量のほうれん草を、レジ袋に小分けした。
伊達で知り合った方々に、次々と電話を入れた。
それを車に積み、配り歩いた。
中には、パンパンのレジ袋を見て、
「食べきれないから、近所の娘の所に持って行くわ。」
と、おっしゃる方も。
伊達に来て5年になる。
昨年の秋は、頂き物のカボチャが何個も、
物置に転がっていた。
年を越し、春先までカボチャ料理が食卓にあった。
そんな暮らしに、大分慣れてきたとは言え、
都会では体験できない有り様に、つい心が浮かれてしまう。
さて、北海道は食の宝庫である。
四季折々の旬の農産物、新鮮な魚貝類、
そして、最近ではスイーツも台頭してきている。
だから、私の食生活も次第次第変化している。
一番は、生野菜サラダを、
毎朝食べるようになったこと。
新鮮な野菜の味とシャキシャキ感は、
伊達で知った。
次は、北海道ならではの、美味しいお店である。
これもたくさん見つけた。
そして、リピーターになっている。
その中から3店を記す。
① とうふ店
洞爺湖の温泉街をぬけ、
羊蹄山に向かって、1時間弱、ひたすら車を走らせると、
真狩村がある。
そこから、まもなくニセコ町という所に、
『湧水の里』がある。
ここは、京極町の『ふきだし公園』と並んで、
羊蹄山の雪解け水が、
ふんだんに湧き出ているところとして、
道民には、よく知られている。
初めてそこを訪ねたとき、湧き出る水の勢いに、
しばらくぼう然とした。
道内各地のナンバープレートをつけた車が、
からの大きなペットボトルを何本、いや何十本も積んで、
その湧き水を汲みに来ている。
料金無料の銘水が汲み放題なのだ。
そんな『湧水の里』のすぐそばに、
「名水とうふ店」がある。
「きぬ名水」「ふんわりもめん」「あげとうふ」など、
豊富な種類と品数が、店内に並ぶ。
試食もできる。とてもうまい。
だから、どれを買おうか、迷いに迷う。
そして、いつも買いすぎる。
何日も食卓にとうふが並ぶ。
それでも、ここのとうふは飽きがこない。
どれも納得できる美味しさなのだ。
きっと羊蹄山の湧き水と、
北海道産大豆の成せる技なのだろう。
とうふの本来の味、うまさを教えてもらった。
スーパーのものに比べ、はるかに高価だ。
それでも、数ヶ月に一度は車を走らせ、
買い求めたくなる。
② ピザ屋
伊達インターから高速道を、函館方面へ1時間程走る。
ブナの北限とされる原生林が広がる黒松内町に着く。
私も、そのブラ林を何度か散策した。
秋、紅葉のブナは、陽光と調和し、
強烈な美しさだった。
強く心に刻まれている。
加えて、この町は、
食に対してこだわりを持っていると聞いた。
確かに、
『道の駅くろまつない「トワ・ヴェールⅡ」』には、
地元産のパン、チーズ、ソーセージ、ワイン等が並び、
販売されている。
そして、この道の駅の一角に、
『天然酵母熟成 ピザドゥ』がある。
道内では、「美味しいピザ」として、
広く知られるようになり、休日ともなれば、
30分や60分待ちは、当たり前なのだ。
ピザのメニューは、10数種類だ。
どれも食欲をそそられるのだが、
私は、『マルゲリータ』をいつも注文する。
しばらくすると、テイクアウトが可能なように、
八角形の箱に入ったピザが出来上がる。
天然酵母熟成のピザ生地がふっくらと盛り上がり、
その上にモッツァレラチーズがとろけ、
バジルやトマトなど野菜がのっている。
チーズのあっさりとした絶妙な味加減と、
新鮮な野菜の美味しさが、
これまたピザ生地と、見事にマッチングしている。
「これは、美味しい!」
何度食べても、一口目の感想はいつも同じだ。
今までに食べたどこのお店のピザより、
ここのが一番と思うのは、私だけではないようだ。
③ 元祖室蘭ラーメン
私の生まれ故郷・室蘭は、カギの手の形をした半島にある。
その外海は、太平洋の大海原で、
海と陸の境目の多くは、険しい断崖になっている。
昭和10年に創業したという「元祖室蘭ラーメン『清洋軒』」は、
その断崖が間近に迫る市内舟見町にある。
急坂の中頃にある店先には、
『清洋軒』の大文字が鮮やかな暖簾がかかっている。
年齢のいったご夫婦と、
その父親によく似た顔の息子さんの3人が、
カウンターの向こうで、忙しくラーメンを作る。
なぜ「元祖室蘭ラーメン」なのか、その真意は分からない。
「きっと、室蘭最古のラーメン店だからではないか。」と、
勝手に推理している。
ここの塩ラーメンが、大のお気に入りだ。
若干黄色みのある透き通ったスープ。
それに、一切添加物を使っていないという、
中太のやや縮れた麺。
メンマと桃色のなると、ネギ、麩、
そしてチャーシューがのっている。
まったくシンプルな一杯だが、
レンゲですくった最初のスープを口にすると、
もう一口、もう一口とレンゲが進む。
毎回、麺に行く前に、
「美味しい!」と声が出てしまう。
その後は、無言。
今日のこの一杯を十分に堪能する。
なぜか、食べ終わる頃には、冬でも額から汗が流れ出す。
店には、味噌味も醤油味もある。
また、「日華ラーメン」と称する、
かき揚げ天ぷら入りのオリジナルなものもある。
しかし、私は一切それらには興味がない。
この店は、塩ラーメンだけで、十分に私を満たしてくれる。
先日、ネットで、
「人生の最後は、清洋軒の塩ラーメンにする。」
との書き込みを見た。
その境地には、なかなかなれないが、
十分に理解ができる。
梅や桜より先に エゾムラサキツツジ
お向かいの奥さんが、
大きなビニル袋に詰め込んだほうれん草を、
2抱えも持ってきた。
「これ、食べて。」
「エッ、こんなに!」
家内はその量に、今にも悲鳴を上げそうだった。
地元の農家さんから、
ビニールハウス1棟分のほうれん草を、頂いたのだそうだ。
まったく、豪快な話である。
毎日収獲しているが、「多すぎて困っている。」と、
お向かいさんは曇った顔をした。
ビニル袋のほうれん草は、採ったばっかり。
シャキッと生きがよく、美味しそうだ。
早速、2人で食べる数日分を残し、
大量のほうれん草を、レジ袋に小分けした。
伊達で知り合った方々に、次々と電話を入れた。
それを車に積み、配り歩いた。
中には、パンパンのレジ袋を見て、
「食べきれないから、近所の娘の所に持って行くわ。」
と、おっしゃる方も。
伊達に来て5年になる。
昨年の秋は、頂き物のカボチャが何個も、
物置に転がっていた。
年を越し、春先までカボチャ料理が食卓にあった。
そんな暮らしに、大分慣れてきたとは言え、
都会では体験できない有り様に、つい心が浮かれてしまう。
さて、北海道は食の宝庫である。
四季折々の旬の農産物、新鮮な魚貝類、
そして、最近ではスイーツも台頭してきている。
だから、私の食生活も次第次第変化している。
一番は、生野菜サラダを、
毎朝食べるようになったこと。
新鮮な野菜の味とシャキシャキ感は、
伊達で知った。
次は、北海道ならではの、美味しいお店である。
これもたくさん見つけた。
そして、リピーターになっている。
その中から3店を記す。
① とうふ店
洞爺湖の温泉街をぬけ、
羊蹄山に向かって、1時間弱、ひたすら車を走らせると、
真狩村がある。
そこから、まもなくニセコ町という所に、
『湧水の里』がある。
ここは、京極町の『ふきだし公園』と並んで、
羊蹄山の雪解け水が、
ふんだんに湧き出ているところとして、
道民には、よく知られている。
初めてそこを訪ねたとき、湧き出る水の勢いに、
しばらくぼう然とした。
道内各地のナンバープレートをつけた車が、
からの大きなペットボトルを何本、いや何十本も積んで、
その湧き水を汲みに来ている。
料金無料の銘水が汲み放題なのだ。
そんな『湧水の里』のすぐそばに、
「名水とうふ店」がある。
「きぬ名水」「ふんわりもめん」「あげとうふ」など、
豊富な種類と品数が、店内に並ぶ。
試食もできる。とてもうまい。
だから、どれを買おうか、迷いに迷う。
そして、いつも買いすぎる。
何日も食卓にとうふが並ぶ。
それでも、ここのとうふは飽きがこない。
どれも納得できる美味しさなのだ。
きっと羊蹄山の湧き水と、
北海道産大豆の成せる技なのだろう。
とうふの本来の味、うまさを教えてもらった。
スーパーのものに比べ、はるかに高価だ。
それでも、数ヶ月に一度は車を走らせ、
買い求めたくなる。
② ピザ屋
伊達インターから高速道を、函館方面へ1時間程走る。
ブナの北限とされる原生林が広がる黒松内町に着く。
私も、そのブラ林を何度か散策した。
秋、紅葉のブナは、陽光と調和し、
強烈な美しさだった。
強く心に刻まれている。
加えて、この町は、
食に対してこだわりを持っていると聞いた。
確かに、
『道の駅くろまつない「トワ・ヴェールⅡ」』には、
地元産のパン、チーズ、ソーセージ、ワイン等が並び、
販売されている。
そして、この道の駅の一角に、
『天然酵母熟成 ピザドゥ』がある。
道内では、「美味しいピザ」として、
広く知られるようになり、休日ともなれば、
30分や60分待ちは、当たり前なのだ。
ピザのメニューは、10数種類だ。
どれも食欲をそそられるのだが、
私は、『マルゲリータ』をいつも注文する。
しばらくすると、テイクアウトが可能なように、
八角形の箱に入ったピザが出来上がる。
天然酵母熟成のピザ生地がふっくらと盛り上がり、
その上にモッツァレラチーズがとろけ、
バジルやトマトなど野菜がのっている。
チーズのあっさりとした絶妙な味加減と、
新鮮な野菜の美味しさが、
これまたピザ生地と、見事にマッチングしている。
「これは、美味しい!」
何度食べても、一口目の感想はいつも同じだ。
今までに食べたどこのお店のピザより、
ここのが一番と思うのは、私だけではないようだ。
③ 元祖室蘭ラーメン
私の生まれ故郷・室蘭は、カギの手の形をした半島にある。
その外海は、太平洋の大海原で、
海と陸の境目の多くは、険しい断崖になっている。
昭和10年に創業したという「元祖室蘭ラーメン『清洋軒』」は、
その断崖が間近に迫る市内舟見町にある。
急坂の中頃にある店先には、
『清洋軒』の大文字が鮮やかな暖簾がかかっている。
年齢のいったご夫婦と、
その父親によく似た顔の息子さんの3人が、
カウンターの向こうで、忙しくラーメンを作る。
なぜ「元祖室蘭ラーメン」なのか、その真意は分からない。
「きっと、室蘭最古のラーメン店だからではないか。」と、
勝手に推理している。
ここの塩ラーメンが、大のお気に入りだ。
若干黄色みのある透き通ったスープ。
それに、一切添加物を使っていないという、
中太のやや縮れた麺。
メンマと桃色のなると、ネギ、麩、
そしてチャーシューがのっている。
まったくシンプルな一杯だが、
レンゲですくった最初のスープを口にすると、
もう一口、もう一口とレンゲが進む。
毎回、麺に行く前に、
「美味しい!」と声が出てしまう。
その後は、無言。
今日のこの一杯を十分に堪能する。
なぜか、食べ終わる頃には、冬でも額から汗が流れ出す。
店には、味噌味も醤油味もある。
また、「日華ラーメン」と称する、
かき揚げ天ぷら入りのオリジナルなものもある。
しかし、私は一切それらには興味がない。
この店は、塩ラーメンだけで、十分に私を満たしてくれる。
先日、ネットで、
「人生の最後は、清洋軒の塩ラーメンにする。」
との書き込みを見た。
その境地には、なかなかなれないが、
十分に理解ができる。
梅や桜より先に エゾムラサキツツジ