① 我が家は、地元建設会社のSホームに建ててもらった。
注文建築だが、Sホームにはいくつかのポリシーがあった。
その1つが、家の外観である。
「お客様からどうしてもとご要望があった場合は別ですが、
外壁には新建材を使わないようにしています」。
施工を担当したY氏はそう言うと、
Sホームが手がける外壁の施工例をいくつも紹介し、
実際の家も案内してくれた。
その中から我が家は、モルタル塗装を主に、
道路に面した1階部分だけ道南杉を張った外壁にした。
その道南杉は、焦げ茶色にペイントした。
しかし、丸10年が経ち、ペンキの色落ちが目立ちだした。
4月、Sホームに道南杉の部分だけ塗り替えを依頼。
7月になってから、やっと作業が始まった。
天候の影響もあったが、職人さん1人で3日間を要した。
その初日に驚きがあった。
作業の様子を見ていた家内に、
刷毛を片手にした職人さんがボソッと言った。
「最近、ゴルフ場でお会いしませんが、行ってますか?」
家内は「エッ!」と言ったきりに。
職人さんは、刷毛の手を休めずに、
「今朝、挨拶した時、ビックリしたさ。
ご主人も奥さんもどっかで見た顔で・・。
それで、伊達カン(伊達カントリー倶楽部)でよく会う人だって、
思い出しまして・・。
でも、今年はまだ会ってないかもと思いましてね」。
家内の驚きは、すぐに私に知らされた。
作業の邪魔をしないようにと気遣いながら、
今度は私から声をかけた。
伊達カンのメンバーさんだと分かった。
その上、クラブチャンピオンを戦うほどの、
腕前の方だとも・・。
「去年もその前の年も、毎年何回も2人でいるところを、
伊達カンで見ましたから、覚えていたんです。
ゴルフ好きなんだって、いつも思ってましたよ」。
気さくな方で、話が進んだ。
ゴルフの上手下手はあっても、難しいコースは同じ。
「あの6番ホールの上り坂は、いつも苦労します」。
私が言うと、忙しく刷毛を動かしながら、
「グリーンの横に、バンカーができたでしょう。
だから、益々難しくなってしまって。
坂の下からなら、5番アイアンで打ってもバンカーが邪魔して・・」。
そんな会話がしばらく続いた。
まさか、外壁塗装にきた職人さんと、
長々とゴルフ談義をすることになるとは・・。
楽しい時間を過ごした。
その勢いのまま、
1週間前から腰痛で通っている整骨院へ行った。
そこの院長さんとは、もう6,7年の付き合いになる。
治療を受けながら、いつも話が弾み。
「今朝、我が家の外壁塗装に来た人、
伊達のゴルフ場でよく私と家内を見かけていたんだって。
もうビックリ」。
すると、院長さんはすかさず、
「だから、伊達は田舎なんですよね。
何でもかんでも、すぐ知られてしまう。
それが、いやだっていう人も結構いますよね」。
今度は、私がすかさず、
「確かに、そうだね。
狭い町だから、色々と分かってしまう。
でも、そんなところ、私は嫌いじゃない・・」。
② 家の中以外では、マスク着用が常態になって、
2年半になろうとしている。
当初、マスク不足で、手製の布マスクまで登場した。
私は、専らユニクロ製の布マスクを洗って、
繰り返し使用していた。
しかし、感染予防効果には不織布マスクがいいと知り、
安価にもなったので、それを着用するようになった。
ここ2ヶ月ほど前からは、
不織布でもダイヤモンドカットのものを好んで使っている。
マスクと口との間に隙間があり、呼吸が楽なのだ。
だが、製造メーカーによって、
微妙に大きさや形状に違いがある。
いろいろ試した結果、T社製がお気に入りになった。
家内にも同社のマスクを勧め、
私のより「やや小さめ」を箱買いし、使い始めた。
夕食は外でと決めていた日のことだ。
その前にスーパーへの買い物に付き合った。
予定よりやや時間がかかった。
一度帰宅し、買った物を冷蔵庫などに入れてから、
再度、出かけることにした。
⒉人とも、急いでいた。
いつもはそれぞれ決めた場所にはずしたマスクを置く。
この時ばかりは、それぞれがテーブルに置き、手を洗いに行った。
買った物の整理を終える家内を待って、再度出発。
急ぎマスクをして、あんかけ焼きそばの店へ。
すぐに注文をし、正面の家内を見た。
T社のマスクは中央上部にくぼみがあった。
家内のマスクは、そのくぼみがやや左にずれていた。
すかさず、それを注意した。
「マスク、曲がってるよ。それ位、気づかないの!」。
ややトゲのある言い方だった。
家内が、即言い返した。
「あなたこそ、どうしたの? なんかそのマスク変だよ。
いつもと違う」。
「どこが変なんだ」。
「顔にあってない感じ」。
「そんなことないよ。まさかあんたのと間違える訳ないし・・」。
「そうよね。私のはいつも内側にファンデーションがつくから、
すぐわかるもの」。
家内は、そう言って、マスクをはずして、確かめた。
「あら、やだ。ファンデーションついてない。
これ私のじゃない」。
今度は、私が急いでマスクをはずして確かめた。
「ええっ!? ファンデーションが・・、ほら!」。
ここでトゲトゲしいやり取りは終演。
「何やってるの! 2人して」。
お店の方に気づかれないよう、
声を抑えて、笑ってしまった。
③ 5月末、ご近所さんご夫妻がそろってやって来た。
「東京へ行ってきました。これお土産。
2年ぶりに孫にも会えたし、よかったわ」。
2人とも、それはそれは嬉しそうだった。
触発された。
まだまだ不安だったが、6月下旬、私たちも東京へ。
4泊5日で、息子や孫、友人と2年半ぶりの再会だった。
息子からの提案で、
家族4人だけで夕ご飯を食べる予定を組んだ。
4人での外食なんて、次男の大学入学祝い以来、
20数年ぶりだった。
すでに40歳代の2人である。
私もそうだったが、油の乗った年代である。
彼らなりの充実した仕事ぶりが垣間見え、
まぶしい位だった。
私からは、貴重な機会なのでと前置きし、
終活的な話題を1つだけ切り出した。
昨年2月に逝去した兄の骨納めが、5月の連休に終わった。
登別にある両親の墓で、一緒に眠っている。
もう一人の兄も、最期はそのお墓に入りたいと言う。
でも、私は私のお墓を作り、そこに入りたいと思っている。
そのことについて、息子らの想いを聞きたかった。
祖父母の近くにお墓を作っても、北海道まではなかなか行けない。
そこに行っても、2人の思い出は蘇えらない。
かといって、近くに墓があっても、すぐには行けるけど、
やはり2人との絆は、千葉だ。
千葉にお墓があったら、
年に1回くらいは会いに行く気になるだろう。
もうそんなことが話題になるのかと言いつつも、
2人は本音を言ってくれた。
嬉しかった。
「じゃ、千葉市の平和公園に墓地を買うことにしようかな」。
これで、終活の1つが済んだ。
いたる所 栗の花が満開
注文建築だが、Sホームにはいくつかのポリシーがあった。
その1つが、家の外観である。
「お客様からどうしてもとご要望があった場合は別ですが、
外壁には新建材を使わないようにしています」。
施工を担当したY氏はそう言うと、
Sホームが手がける外壁の施工例をいくつも紹介し、
実際の家も案内してくれた。
その中から我が家は、モルタル塗装を主に、
道路に面した1階部分だけ道南杉を張った外壁にした。
その道南杉は、焦げ茶色にペイントした。
しかし、丸10年が経ち、ペンキの色落ちが目立ちだした。
4月、Sホームに道南杉の部分だけ塗り替えを依頼。
7月になってから、やっと作業が始まった。
天候の影響もあったが、職人さん1人で3日間を要した。
その初日に驚きがあった。
作業の様子を見ていた家内に、
刷毛を片手にした職人さんがボソッと言った。
「最近、ゴルフ場でお会いしませんが、行ってますか?」
家内は「エッ!」と言ったきりに。
職人さんは、刷毛の手を休めずに、
「今朝、挨拶した時、ビックリしたさ。
ご主人も奥さんもどっかで見た顔で・・。
それで、伊達カン(伊達カントリー倶楽部)でよく会う人だって、
思い出しまして・・。
でも、今年はまだ会ってないかもと思いましてね」。
家内の驚きは、すぐに私に知らされた。
作業の邪魔をしないようにと気遣いながら、
今度は私から声をかけた。
伊達カンのメンバーさんだと分かった。
その上、クラブチャンピオンを戦うほどの、
腕前の方だとも・・。
「去年もその前の年も、毎年何回も2人でいるところを、
伊達カンで見ましたから、覚えていたんです。
ゴルフ好きなんだって、いつも思ってましたよ」。
気さくな方で、話が進んだ。
ゴルフの上手下手はあっても、難しいコースは同じ。
「あの6番ホールの上り坂は、いつも苦労します」。
私が言うと、忙しく刷毛を動かしながら、
「グリーンの横に、バンカーができたでしょう。
だから、益々難しくなってしまって。
坂の下からなら、5番アイアンで打ってもバンカーが邪魔して・・」。
そんな会話がしばらく続いた。
まさか、外壁塗装にきた職人さんと、
長々とゴルフ談義をすることになるとは・・。
楽しい時間を過ごした。
その勢いのまま、
1週間前から腰痛で通っている整骨院へ行った。
そこの院長さんとは、もう6,7年の付き合いになる。
治療を受けながら、いつも話が弾み。
「今朝、我が家の外壁塗装に来た人、
伊達のゴルフ場でよく私と家内を見かけていたんだって。
もうビックリ」。
すると、院長さんはすかさず、
「だから、伊達は田舎なんですよね。
何でもかんでも、すぐ知られてしまう。
それが、いやだっていう人も結構いますよね」。
今度は、私がすかさず、
「確かに、そうだね。
狭い町だから、色々と分かってしまう。
でも、そんなところ、私は嫌いじゃない・・」。
② 家の中以外では、マスク着用が常態になって、
2年半になろうとしている。
当初、マスク不足で、手製の布マスクまで登場した。
私は、専らユニクロ製の布マスクを洗って、
繰り返し使用していた。
しかし、感染予防効果には不織布マスクがいいと知り、
安価にもなったので、それを着用するようになった。
ここ2ヶ月ほど前からは、
不織布でもダイヤモンドカットのものを好んで使っている。
マスクと口との間に隙間があり、呼吸が楽なのだ。
だが、製造メーカーによって、
微妙に大きさや形状に違いがある。
いろいろ試した結果、T社製がお気に入りになった。
家内にも同社のマスクを勧め、
私のより「やや小さめ」を箱買いし、使い始めた。
夕食は外でと決めていた日のことだ。
その前にスーパーへの買い物に付き合った。
予定よりやや時間がかかった。
一度帰宅し、買った物を冷蔵庫などに入れてから、
再度、出かけることにした。
⒉人とも、急いでいた。
いつもはそれぞれ決めた場所にはずしたマスクを置く。
この時ばかりは、それぞれがテーブルに置き、手を洗いに行った。
買った物の整理を終える家内を待って、再度出発。
急ぎマスクをして、あんかけ焼きそばの店へ。
すぐに注文をし、正面の家内を見た。
T社のマスクは中央上部にくぼみがあった。
家内のマスクは、そのくぼみがやや左にずれていた。
すかさず、それを注意した。
「マスク、曲がってるよ。それ位、気づかないの!」。
ややトゲのある言い方だった。
家内が、即言い返した。
「あなたこそ、どうしたの? なんかそのマスク変だよ。
いつもと違う」。
「どこが変なんだ」。
「顔にあってない感じ」。
「そんなことないよ。まさかあんたのと間違える訳ないし・・」。
「そうよね。私のはいつも内側にファンデーションがつくから、
すぐわかるもの」。
家内は、そう言って、マスクをはずして、確かめた。
「あら、やだ。ファンデーションついてない。
これ私のじゃない」。
今度は、私が急いでマスクをはずして確かめた。
「ええっ!? ファンデーションが・・、ほら!」。
ここでトゲトゲしいやり取りは終演。
「何やってるの! 2人して」。
お店の方に気づかれないよう、
声を抑えて、笑ってしまった。
③ 5月末、ご近所さんご夫妻がそろってやって来た。
「東京へ行ってきました。これお土産。
2年ぶりに孫にも会えたし、よかったわ」。
2人とも、それはそれは嬉しそうだった。
触発された。
まだまだ不安だったが、6月下旬、私たちも東京へ。
4泊5日で、息子や孫、友人と2年半ぶりの再会だった。
息子からの提案で、
家族4人だけで夕ご飯を食べる予定を組んだ。
4人での外食なんて、次男の大学入学祝い以来、
20数年ぶりだった。
すでに40歳代の2人である。
私もそうだったが、油の乗った年代である。
彼らなりの充実した仕事ぶりが垣間見え、
まぶしい位だった。
私からは、貴重な機会なのでと前置きし、
終活的な話題を1つだけ切り出した。
昨年2月に逝去した兄の骨納めが、5月の連休に終わった。
登別にある両親の墓で、一緒に眠っている。
もう一人の兄も、最期はそのお墓に入りたいと言う。
でも、私は私のお墓を作り、そこに入りたいと思っている。
そのことについて、息子らの想いを聞きたかった。
祖父母の近くにお墓を作っても、北海道まではなかなか行けない。
そこに行っても、2人の思い出は蘇えらない。
かといって、近くに墓があっても、すぐには行けるけど、
やはり2人との絆は、千葉だ。
千葉にお墓があったら、
年に1回くらいは会いに行く気になるだろう。
もうそんなことが話題になるのかと言いつつも、
2人は本音を言ってくれた。
嬉しかった。
「じゃ、千葉市の平和公園に墓地を買うことにしようかな」。
これで、終活の1つが済んだ。
いたる所 栗の花が満開