nodatchのブログ

鉄道が好きな旅行作家が、取材や出版などの個人的な話を書いていきます

中国地方のローカル線めぐり(2)~福塩線(2)

2016-11-03 21:08:00 | 国内の鉄道
万能倉から乗った電車は混んでいました。座れはしたものの、ロングシートなので、横向きになって車窓を眺めることもできませんし、向かいの窓はブラインドが降りていて景色はよく見えません。ちらりちらりと停車駅の様子を垣間見るくらいでした。ちょうど20分かかって電車の終点府中に到着。ここから先は非電化区間なので、ディーゼルカーに乗り換えです。急いでホームの人込みをかき分け三次行きに乗り込んだので、クロスシートの進行方向窓側に座れました。単行(1両のみ)列車で、ボックス席は4か所しかないので、ラッキーでした。


駅や車両の写真を撮っていると15分の待ち時間はあっという間に過ぎ、列車は定時に発車しました。1本前の列車は、およそ2時間半前、この後の列車は約2時間後という閑散とした区間ですから、朝、東京を発つとこの列車しか選択肢はありませんでした。まあまあの乗車率。何だかカメラを手にうろうろしている人の姿が目につきます。こんな時期にわざわざ福塩線に乗りに来たとは思われません。目的は私と同じで、三次まで乗りとおして、明朝、三江線に乗るのではないでしょうか?

列車は、渓谷に沿って山の中をゆっくりと進みます。線路の状態がよくないのか、ところどころ最徐行で牛歩のごとく動いているという感じです。


急ぐ旅ではないので、そんなスローなスピードも気になりませんが、移動手段としては選ばれないようです。少しづつ車内が空いていきます。

府中から40分あまりで上下(じょうげ)駅到着。ダジャレのように、ここで上下列車がすれ違いました。まともな乗客が何人も降り、残るは鉄道ファンばかりといった感じになりました。列車は、あいかわらずのんびりと走り、山越えのあとは、のどかな田園地帯を通り過ぎていきます。

上下駅から30分ほどで吉舎(きさ)駅に到着。午後4時を過ぎ、下校時間になったせいか、高校生が大勢乗ってきました。

三次まで、あと30分少々の距離。この列車は、この高校生のために走っているのでしょう。今までとは打って変わって賑やかです。グループで固まる習性のある彼らは、一人でも見知らぬ大人が乗っているボックス席には近寄りません。私の席の横や前は誰も座らないままでした。

 塩町で芸備線に合流。福塩線というのは、福山と塩町を結ぶことから名づけられた路線名なのですが、ここで終点となる列車はなく、このまま芸備線に乗り入れて三次へ向かいます。ホームの反対側には三次からやってきた芸備線の列車が到着しました。福塩線の列車から乗り換える高校生や、塩町が最寄り駅となる別の高校の生徒も大勢乗ってきて、車内はますます賑やかになりました。途中駅で降りる高校生もいましたが、10数分で三次に到着するまで、通学列車の役割を果たしていました。山の中の閑散とした状態とは程遠い状態。三次までガラガラだったら、絶望的な雰囲気だったでしょうが、活気のある車内や駅の様子を目の当たりにしてホッとしたのは確かです。

 一日列車内で過ごして疲れたので、駅前からタクシーでホテルへ。ゆっくり休んで翌日の三江線の旅に備えました。そういえば、車内の鉄道ファンたちは全員三次まで乗っていました。三江線でも一緒なのでしょうか?