水をはこぶ少女/西澤怜子/愛蔵版県別ふるさと童話館 埼玉の童話/リブリオ出版/1997年初版
いつも利用している図書館には、日本、外国の昔話のコーナーがあって、そのコーナーで大半は用がたりています。
しかし、先日、童話のコーナーをみていたら「埼玉の童話」というのをみつけました。日本児童文学者協会創立50周年記念出版の県別ふるさと童話館の一冊です。
地元の方が執筆した、ほとんどが描き下ろしのものです。
埼玉に住んで間がないので、それほど愛着があるわけではないのですが、やはり身近な地名がでてくるのでうれしい話です。
小川町がでてこないのが残念ですが、近くの東松山の丸木美術館がでてくるのが「水をはこぶ少女」です。
小学校4年生のサッカー仲間5人が、おばけがでると6年生がいっていた丸木美術館におばけさがしにいきます。
そしてたしかに、おばけをみてしまいます。
おかっぱ頭の少女が、都幾川の水を両手にもって、入り口でないところから美術館に入っていくのを見てしまったのです。
おいかけていくと少女は消えていて、火の海の原爆の図のまえに、しずくのあとをみつけます。
絵のなかで、人々は水をもとめ、”水をちょうだい”とさけんでいますから、ゆうれいがでても不思議ではなかったのです。
”ぼく”が、目玉焼きつくってよというと、「たまごをのんで、アイロンかけとけば」と言うお母さん。
「つらいけど、みたほうがいいぞ。戦争って、こんなおろかなことなんだよ」というお父さんに存在感があります。
この子たちが家にかえったあとのことは、書かれていませんが、どんなふうに家の人に話したか余韻が残ります。
じっくりと考えさせてくれる話ですが、ただ、原爆ですから、何かしらの前提が必要かもしれません。
話してみたいのですが、どうも力量不足のようです。
じつは、この話を2015年8月13日の勉強会で話してみましました。であってから数か月、時期的なものもあって、数か月かかりましたが、夏休み、おばけ、原爆と8月にふさわしいテーマ。