<イソップ株式会社/井上ひさし 絵・和田誠/中央公論社/2005年初版>
妻をなくした男が、姉弟に毎日、お話を届ける形式のなかの一つ。
平凡な時代の平凡な国に平凡な王さまがいたが、この王さまは、ときどき途方もない難題をだして、家来を困らせます。
この王さまが、城壁の外に遊びにでかけたときに、畑で鍬をふるっている子どもをみつけ、「お前は朝から何回鍬をふったかこたえろ」と問いかけます。その子は「答える前に、王さまはここまで馬で何歩きたか」と逆に問います。
王さまが、はるかかなたの山をここまで運んで来いというと、その子は、山を乗せる船を貸してくれるなら、山を運びますと切り返します。
さらに、王さまは、おやつに持ってきたソーセージを二つに折って、どちらがうまいかと問いますが、その子はぽんと手を鳴らし、どちらの手が鳴ったかと問い返します。
賢い子が、王さまの難題を見事に解くというのは、昔話の一つのパターンなので、これがもとになっているのはわかりますが、一味ちがう味付けがあります。
それは難題を解けなかったら税金をいまの2倍にするぞと脅す場面。大人には妙に実感があるオチになっています。
昔話にでてくる難題は、ときとして首をかしげるものが多く、回答をみてもピンとこないのが多く、話るうえでは、もっとわかりやすいものがいいと思うのですが。