白い池黒い池/リタ・ジャハーン=フォルーズ・再話 ヴァリ・ミンツイ・絵 もたい しなつう・訳//光村教育図書/2015年初版
イランの昔話の再話です。
継母と娘、継母の実の娘の三人暮らしというのは昔話の典型的なパターン。
継母の娘はナルゲス、義理の娘はシラーズという少女でした。
父が亡くなると継母はシラーズにつらくあたり、学校にも行かせず、家の仕事を全部させられるようになります。
ある日シラーズがまもなく訪れる冬にそなえて母の残した毛糸玉でセーターを編もうとすると、毛糸玉は風に飛ばされ、ある家の庭に落ちました。
シラーズがその家を訪ねると、ぼさぼさ髪の汚らしいおばあさんが出できて、条件つきで毛糸玉を返してくれると言います。
おばあさんのところから帰ったシラーズは、美しく輝くようで継母も見違えるほど。
見違えるように輝くシラーズをみた継母は、何とか毛糸玉をおばあさんの家にころがりこむようにし、ナルゲスもおばあさんのところへいかせます。
ところがかえってきたナルゲスは、継母もみちがえるほど貧相な姿でした。
二人がおばあさんの家でおこなったのは、正反対のことでした。
おばあさんがやってほしいという一つ目は、食べものの残りやかびがついた皿やカップ、積み上げられた鍋やフライパンを壊すこと、二つ目は荒れ放題の庭を根絶やしにすること、三つ目は自分の髪をばっさり切るようにというものでした。
ナルゲスは、おばあさんのいうとおりのことをしますが、シラーズは台所をきれいにし、おいしそうなスープを作り、庭をよみがえらせ、おばあさんの髪を洗って結います。
二人が家にかえるとき、おばあさんは毛糸玉を渡し、白い池に三度、黒い池に三度つかって帰るように言います。
シラーズはおばあさんのいうとおりにしますが、ナルゲスは何度も池につかります。
池の水に秘密があるように思いますが、白い池も黒い池も同じ水で、つかる人の姿をかえたりはしない。だがその水は、人の心のうちを外に出し、光をあてるのだーという結びです。
「おばあさんは、たしかに、ぜんぶ壊してくれといったけれど、でも、わたしは壊しませんでした。おばあさんの心の声に耳をすまし、おばあさんがほんとうに望んでいるとおりにしたんです。おばあさんの、こころの頼みのとおりに・・・」というのですが、子どもには少し難しいかもしれません。
シラーズがきれにした台所、庭がすぐに乱雑になっているというのは、お話の世界でしょうか。
シラーズの毛糸玉は赤、ナルゲスの毛糸玉は黄色で、どんな意味があるのか気になりました。