どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

白い池黒い池・・イラン

2017年04月09日 | 絵本(昔話・外国)


   白い池黒い池/リタ・ジャハーン=フォルーズ・再話 ヴァリ・ミンツイ・絵 もたい しなつう・訳//光村教育図書/2015年初版

 イランの昔話の再話です。
 継母と娘、継母の実の娘の三人暮らしというのは昔話の典型的なパターン。

 継母の娘はナルゲス、義理の娘はシラーズという少女でした。
 
 父が亡くなると継母はシラーズにつらくあたり、学校にも行かせず、家の仕事を全部させられるようになります。

 ある日シラーズがまもなく訪れる冬にそなえて母の残した毛糸玉でセーターを編もうとすると、毛糸玉は風に飛ばされ、ある家の庭に落ちました。

 シラーズがその家を訪ねると、ぼさぼさ髪の汚らしいおばあさんが出できて、条件つきで毛糸玉を返してくれると言います。

 おばあさんのところから帰ったシラーズは、美しく輝くようで継母も見違えるほど。

 見違えるように輝くシラーズをみた継母は、何とか毛糸玉をおばあさんの家にころがりこむようにし、ナルゲスもおばあさんのところへいかせます。

 ところがかえってきたナルゲスは、継母もみちがえるほど貧相な姿でした。

 二人がおばあさんの家でおこなったのは、正反対のことでした。

 おばあさんがやってほしいという一つ目は、食べものの残りやかびがついた皿やカップ、積み上げられた鍋やフライパンを壊すこと、二つ目は荒れ放題の庭を根絶やしにすること、三つ目は自分の髪をばっさり切るようにというものでした。

 ナルゲスは、おばあさんのいうとおりのことをしますが、シラーズは台所をきれいにし、おいしそうなスープを作り、庭をよみがえらせ、おばあさんの髪を洗って結います。

 二人が家にかえるとき、おばあさんは毛糸玉を渡し、白い池に三度、黒い池に三度つかって帰るように言います。
 シラーズはおばあさんのいうとおりにしますが、ナルゲスは何度も池につかります。

 池の水に秘密があるように思いますが、白い池も黒い池も同じ水で、つかる人の姿をかえたりはしない。だがその水は、人の心のうちを外に出し、光をあてるのだーという結びです。

 「おばあさんは、たしかに、ぜんぶ壊してくれといったけれど、でも、わたしは壊しませんでした。おばあさんの心の声に耳をすまし、おばあさんがほんとうに望んでいるとおりにしたんです。おばあさんの、こころの頼みのとおりに・・・」というのですが、子どもには少し難しいかもしれません。

 シラーズがきれにした台所、庭がすぐに乱雑になっているというのは、お話の世界でしょうか。

 シラーズの毛糸玉は赤、ナルゲスの毛糸玉は黄色で、どんな意味があるのか気になりました。