うさぎのみみはなぜながい/北川民次・作絵/福音館書店/1962年初版
メキシコがまだナオワといった時代の再話です。初版は1962年と息が長い絵本です。
うさぎの耳が、なぜ長くなったのかとありますから、むかしうさぎの耳は短かったのでしょう。
うさぎは山の神さまのところへでかけ、ちっぽけなからだしか授けてもらえなかったために、森の仲間にいじめられてばかりいます、今にきっと殺されてしまうでしょう、もっとからだを大きくしてください、とお願いします。
神さまはしばらく考えてから、
「よし。では、おまえがとらと、わにと、さるとを、じぶんの てで ころして、その かわを もってきたら、おまえの ねがいを かなえてやろう」といいます。
途方にくれるうさぎでしたが、知恵と勇気で皮を手にいれます。
皮を手にいれるあたりがイソップの寓話を思い出させるようです。
虎にはすごい大風が吹いてきて、みんな吹き飛ばされるといい、大きな木に虎を縛り付けます。
ワニは地上でうまく踊るようにしむけ、棒でワニの背中をいやというほど殴りつけます。
猿は眠っているところ棒で頭を殴ります。
うさぎが、三つの皮をもっていくと神さま言います。
「わしは、おまえにからだをちいさくこしらえた。だがわしは、おまえをしばしっこくすばっしっこくしてやり、利巧に作ってやった。だから三匹に勝つことができたのだ。この上、大きなからだをさずけたら森中のけものを殺してしまうに違いない。だから願いを聞き届けるわけにいかない。しかし、せめてひととこだけでも、おおきくしてやろう」
そして、神さまはうさぎの両方の耳をつかんで遠い遠い大地の上へ投げ出します。
そのときから、うさぎの耳は あのように おおきく長くなったのです。
このお話、うさぎと虎たちとのやりとりがかなり長くなっています。
皮は殺さないと手に入りませんから、神さまが殺生をお許しになったというのはどうでしょうか。
弱そうなうさぎが、ワニの皮をとるため、ナイフを研いでいるのは、こわいですよ。