兄弟の話/世界の民話7 アフリカ/小澤俊夫・編 中山淳子・訳/ぎょうせい/1999年新装版
昔話といっていいのか疑問ですが、何しろ紀元前千二百年前のパピルスに書かれているという物語。
兄の名前はアヌビス、弟の名前はバータ。
弟は兄のところで畑を耕し、着るものもつくり、家畜の世話も全部こなしているが、住んでいるのは家畜小屋。
250キロもの荷物を軽々という弟が、兄の妻に誘惑されそうになるが、これを断ると、心配になった兄の妻は、逆に弟に誘惑されそうになったと兄にいいます。
怒った兄は弟を殺そうとしますが、牛に注意されて(弟は動物のいうことがわかるというのは昔話の世界か)翌日、二人は争うことに。
弟は妻から中傷されたことを話し、自分の男根を切りおとし、川の中に投げ込んでしまいます。すると大なまずがそれを飲み込み、弟は弱弱しくなってしまいます。
弟は傘松の谷にいくので、何かかが起こったら、自分のことを心配してくれるように言います。そして心臓を傘松の花の上に置いておくので何年かかっても探し出し、新鮮な水がはいった皿の中に心臓をつけると生き返ると言い残して傘松の谷にむかいます。
バータは傘松の谷に城をつくり、神の力でひとりの女と一緒になります。
やがて、バータの妻は王さまから愛されるようになり、王さまをたきつけて、バータの心臓がのっている花を切りおとします。すると弟は死んでしまいます。
兄のアヌビスはコップのビールがあわだってあふれると、弟の異変にきづき傘松の城にいってみると弟が死んでいるのをみつけます。
兄は心臓を捜す出す旅にでます。
話はまだまだ続くのですが、ここにでてくる女はいずれも男を簡単に裏切ります。
男女の愛憎がでてきて、現代の小説を思わせる物語が今から三千年以上も前に記録されているのに驚かされます。
傘松の谷といってもよくわかりませんが、レバノンの海岸にある谷で、傘松の実は色、形、大きさとも人間の心臓のようであるという。
心臓が独立したり、弟が雄牛に変わったり、ベルゼアの木のかけらが口に入ると身ごもるなど、これは昔話の世界でしょう。