おおきなかぬー/大塚勇三・再話 土方久功・画/福音館書店/1963年
ポリネシアの再話です。
遠くの島で亡くなった父親の亡骸をもってくるために、立派なカヌーを作ろうと、ラタという若者が森に入り大きな木を斧でり倒します。
あたりが暗くなってその日は家に帰り、翌日いってみると、木はもとのところにがっしりと力強く立っていたのです。
昨日切り倒したのは夢だったかのかなとラタは思いましたが、木が倒れて地面にめりこんだあとが、はっきり残っていました。
もういちど木を切り倒しますが、次の朝いってみると、木は、なにごともなかったように高くそびえ、ラタをみおろしていました。
もういちど、木を切り倒し、木から見えないところで見張っていると、何百、何千という鳥、蝶も蛾も森中の虫たちがおしあい、へしあいしながら歌い始めます。
すると木がふわりとうかびあがって切り株の上に立ちあがります。
森の精たちは、一番大切な木を守ろうとしていたのです。
「こんな立派な木の命をとろうとしたのか」と問われ、ラタは恥ずかしいような気がします。
父親の亡骸を運ぶには、どうしても大きなカヌーが必要なことを話すと、鳥や虫たちはカヌー作りをひきうけます。
そしてラタは出来上がったカヌーで父親が亡くなった島へ急ぎます。
出来上がったカヌーは、ラタが切り倒した木なのか、それとも別の木だったのでしょうか。
ラタの思いが通じたカヌーですが、ラタも森の動物たちが木を大事にしていた思いを受け止めていたようです。
鳥、トンボ、蝶、ねずみ、トカゲが、切り倒された木をもとどおりにする場面は圧巻です。