100万回生きたねこ/佐野 洋子:作・絵/講談社/1977年
「とらねこ」は100万回も生まれかわりを繰り返していました。
あるときは王様と、あるときは船のり、あるときはサーカスの手品使い、泥棒、ひとりぼっちのおばあさん、小さな女の子と暮らします。
飼い主になった人はねこが好きで、ねこが亡くなる度に、みんな悲しくて涙を流しました。
でも、ねこはただの一度も飼い主を好きになりませんでした。
ところが、ある時、彼は初めて、誰からも自由なのらねこになりました。
だれよりも自分が好きだったねこは、自分に見向きもしない白いうつくしいねこに恋して。
白いねこは、子ねこをたくさんうみ、子ねこは大きくなって、それぞれどこかへいってしまいます。
いつまでも、白いねこといっしょに生きていたいとおもっていたねこでしたが、白いねこはやがて、ねこのとなりで、しずかに動かなくなっていました。
100万回もないたねこは、白いねこのとなりで、しずかにうごかなくなり、けっして生き返ることはありませんでした。
「おれは、100万回も しんだんだぜ!」とうそぶくねこでしたが、何度も生き返るのは、何かを見つけるためだったのでしょうか。
のらねこになって、それまで飼い主の庇護のもとでくらしていたねこは自由になって、はじめて自分の力でいきていきます。
自由になって、愛する者との生活が、それまでの生き方をかえてくれたのかもしれませんし、もしかすると愛する者を失う体験をした100万人の気持ちが ようやく理解できたのかもしれません。
つっぱり屋の彼と包容力のある彼女のコントラストが、あとまで残ります。