どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

百万回生きたねこ

2018年02月10日 | 絵本(日本)


    100万回生きたねこ/佐野 洋子:作・絵/講談社/1977年


「とらねこ」は100万回も生まれかわりを繰り返していました。

 あるときは王様と、あるときは船のり、あるときはサーカスの手品使い、泥棒、ひとりぼっちのおばあさん、小さな女の子と暮らします。

 飼い主になった人はねこが好きで、ねこが亡くなる度に、みんな悲しくて涙を流しました。

 でも、ねこはただの一度も飼い主を好きになりませんでした。

 ところが、ある時、彼は初めて、誰からも自由なのらねこになりました。

 だれよりも自分が好きだったねこは、自分に見向きもしない白いうつくしいねこに恋して。

 白いねこは、子ねこをたくさんうみ、子ねこは大きくなって、それぞれどこかへいってしまいます。

 いつまでも、白いねこといっしょに生きていたいとおもっていたねこでしたが、白いねこはやがて、ねこのとなりで、しずかに動かなくなっていました。

 100万回もないたねこは、白いねこのとなりで、しずかにうごかなくなり、けっして生き返ることはありませんでした。

 「おれは、100万回も しんだんだぜ!」とうそぶくねこでしたが、何度も生き返るのは、何かを見つけるためだったのでしょうか。

 のらねこになって、それまで飼い主の庇護のもとでくらしていたねこは自由になって、はじめて自分の力でいきていきます。

 自由になって、愛する者との生活が、それまでの生き方をかえてくれたのかもしれませんし、もしかすると愛する者を失う体験をした100万人の気持ちが ようやく理解できたのかもしれません。

 つっぱり屋の彼と包容力のある彼女のコントラストが、あとまで残ります。