どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

アラヤト山の女神・・フィリピン

2018年02月16日 | 絵本(昔話・外国)


    アラヤト山の女神 フィリピンの民話/ヴィルヒリオ S.アルマリオ・再話 アルベルト E.ガモス・絵 あおきひさこ・訳/ほるぷ出版/1982年

 一見すると刺繍をおもわせる絵が特徴です。

 ルソン島のアラヤト山をおさめていたのはマリア・シヌクアンという女神でした。

 ある日、むく鳥のマルテイネスが泣きながら、こわれた巣とたまごをさしだします。

 馬のカバーヨが突然走り出して、巣を踏みにじったと訴えます。

 女神が聞いていくと、はじまりは蚊のラモックです。

 ラモックが刀をふりまわし、ほたるのアリタップタップは、火で自分の身をまもろうとし、かめのバゴンは、家を運び出し、馬のカバーヨが走り出したのです。

 蚊のラモックがかにのアリマンゴに、大きなハサミで、おそいかかられ、しかえしのためかにをさがしていたのでした。

 女神は、蚊のラモックに、「ささいなうらみのため、この国の平和をみだしてしまった。暴力は暴力をまねくだけです、わたしの国で暴力は許しません」と、牢屋に入れて罰します。

 蚊のラモックは七日間、牢に入れられますが、蚊が入る牢は、どんなものかと思ったら、どうらや葉っぱのなかでした。

 かめの甲羅が家だったほか、むく鳥が地面に巣をつくらなったなどの由来がでてきます。

 むく鳥から、うったえられ、すぐに調査を開始し、暴力は断固、許しませんという女神は頼もしくやさしい女神です。

 カタカナの名まえではなかなか動物のイメージがわきにくいのですが、繰り返しでなんとかついていけます。


石の獅子の物語・・チベット

2018年02月16日 | 昔話(アジア)

       石の獅子の物語/チベットの民話/W・F・オコナー 編 金子民雄 訳/白水社/1999年新装復刊

 最後がたのしいチベットの昔話です。

 父親を亡くした二人の兄弟。
 兄の方は抜け目なく小利口で、母親と弟の面倒を見ていましたが、そのうち、これ以上面倒はみれないと弟を追い出してしまいます。

 弟に同情した母親も、一緒に家をでます。

 人気のない小屋を見つけ、二人はここで暮らし始めます。
 弟は木を切って薪のたばにし、町に持っていきよい値で売ることができ、それからは毎日のように木をきりはじめます。

 弟がもっといい木がないか丘を歩いていくと、石に刻んだ等身大の獅子像をみつけます。

 この獅子を山の守護神だと思った弟は、蝋燭を供えますが、この石の獅子が突然口をきいて、大きな手桶をもってくるように話します。
 この獅子が口から黄金をはきだしてくれます。

 すっかり生活がかわったことを聞きつけた兄がやってきますが、弟は富を得たいきさつを話します。

 兄も桶をもっていき、獅子が黄金をはきだしてくれますが、桶が一杯になったことを獅子に告げなかったので、獅子は一番大きな黄金が喉にひっかたので口の中に手を入れて引き出してくれるよう兄にいいます。
 兄が口に手を入れると獅子は口を閉じて手をくわえてしまいます。

 どうしてもはずせない手。

 兄の奥さんが兄を見つけ、それからは食べ物を運び始めます。
 何か月かこうしたことが続きますが、やがて食べ物を買うお金がなくなり飢え死にするしかないと奥さんが泣きながら兄にいうと、それを聞いた獅子が突然大きな口を開けて笑い出したので、兄はようやく手が自由になります。

 母親が弟と家をでていくのは、あまりみられないパターンです。

 二人の兄弟が仲よく暮らす結末もすっきりしています。

 薪で生計をたてるというのは、「アリババと40人の盗賊」の冒頭にあり、中国にも同じような話があって多いようです。
 


      石のししのものがたり/大塚 勇三・再話 秋野 亥左牟・絵/福音館書店 こどものとも傑作集/1992年

 オコナー編をみたあとで、「石のししのものがたり」という絵本にであいました。

 獅子が笑い出す場面は、絵本版ではもうすこし笑わせてくれます。

 石の獅子に手をくわえられてしまった兄に食べ物をもっていったおかみさんでしたが、貧乏になって食べ物がないことを話し、赤ん坊にお乳をのませようとすると、兄は、自分もおっぱいが飲みたいと、おかみさんのほうに首を伸ばすと、獅子が口をあけて笑いだすというもの。

 たしかに獅子が笑い出すのがわかります。

 絵が沖縄をおもわせるのですが、よくみたら「チベットの民話による」とありました。

 ダイナミックな絵も楽しめます。表表紙は裏表紙とつながっていますから、ひろげてみたほうがよさそうです。