魔法のゆびわ/世界むかし話13 インド/光吉夏弥・訳 畠中光亨・絵/ほるぷ出版/1979年
昔話にでてくる職業に床屋がでてくるのはあまり見られないが、日本に紹介されているインドの昔話には、床屋がでてくるものが目につく。
床屋といっても主役はおかみさんと七人の泥棒。
泥棒が七人というのが絶妙の数。
あまり腕の良くない床屋には客がよりつかず、店はさびれる一方。
お城に祝い事があって、施しがあるというので、床屋がでかけていって、もらったのは町はずれのあれた土地。
「土地じゃ、食べられないし、何か買うわけにもいかないじゃないか」「鋤も牛もないののどうやって耕すの」というおかみさん。
とにかく土地を見に行くと、ぺんぺん草がはえ、ちっとやそっとでは、耕せそうにありません。
おかみさんは森のなかにうさんくさいのがいるのに気づいて、棒きれで地面をたたきはじめます。泥棒が「何か探し物かね?」と聞くと、おかみさんは「この土地はあたしのおじいさんの畑だったところで、小屋の床下に金貨のつぼをうめてあったの。まだあるんじゃないかと地面を探っているところなの」
誰にもしゃべらないよう念を押して帰ったおくさん。
この話を聞いた泥棒たちは、金貨を手に入れようとクワやスコップで夜中、そこらへんをほりかえしはじめます。
朝になって、おかみさんがきてみるとあれた土地はすみからすみまでほりかえされて、きれいに耕されていました。おかみさんはよろこんで種屋に飛んでいき、オカボの種を借りてきてまきます。
土地を活用しようとした、おかみさんの知恵でした。
それから何か月かたって、稲がみのり、お米がたくさんとれました。
おさまらないのは泥棒です。おかみさんのところへ行って「おれたちが耕してやったんだから」分け前をよこしな」と談判します。
「勝手にほりかえしたんじゃないの。金貨のつぼがあると思って」というおかみさんに、「そんなものはじめから、ありもしねえくせに」と、泥棒は言います。
「ところがあったのよ」とおかみさんがこたえると、「みせてごらんよ」と泥棒。
「みせられるものかね。ちゃんと、おくにしまってあるわよ」
おくにしまってあるという金貨をいただこうとした泥棒でしたが・・・。
なんども金貨をいただこうとする泥棒とおくさんの攻防が長いのですが、流れが予測できるので、安心して楽しめる話になっています。
庭のニレの木に金貨をつるしてあると盗み聞きした泥棒が、木に登りはじめるとハチがチクリと胸のあたりをさします。二番目も六番目もハチにちくり。最後に親方がのぼりますが、七人の重さで、枝が折れて、みんなころがり落ちます。
土地を耕す?場面も七人いないと耕すのは困難そうで、七人いると木が折れるのも自然です。
まだまだ楽しい昔話も多くあります。