・白雪姫(子どもに語るグリムの昔話2/佐々梨代子・野村ひろし/こぐま社/1991年初版)
おはなし会では、意外と聞く機会がありません。継母が白雪姫を殺そうとする点と、継母が最後に真っ赤に焼けた鉄の靴をはいて、死ぬまで踊り続けるという最後が残酷で取り上げにくいのかもしれません。
もっとも恐ろしいと思われがちな結末も、白雪姫を3度も殺した(そうとした)継母がどうなったかにふれることが、話の結末にふさわしいともいえますが・・・。
「ガチョウ番の娘」の「釘をうった樽におしこみ、ひきずりまわす」最後も残酷なところ。もちろん昔話では、実際に血を流す場面がリアルではないのですが・・・。
疑問なのは、白雪姫の結婚式に継母がでるのですが、王子と白雪姫は、これをながめて何もしなかったのでしょうか。どこで踊っていたのかはでてこないので、多分みていなかったと理解する方がよさそうです。
・白雪姫と七人のこびと(世界の民話館1 こびとの本/ルース・マニング=サンダーズ/西本鶏介/TBSブリタニカ/1980年)
最後に、お妃が鏡から「白雪姫のほうがもっときれい」といわれ、怒った妃が、鏡に向かって笏を投げると、鏡が粉々に飛び散って、かけらがお妃の心臓につきささり、死んでしまうという無難?な結末です。再話の再話で結末に配慮した結果でしょうか。
中世のヨーロッパの魔女裁判では、こうした靴をはかされていたようです。逮捕後は拷問にかけて「自白」がえられれば、有罪。処刑されたのです。
また魔女や異端の審問を行う当局が、密告や告発を奨励するあまり、証言能力のなさそうな子どもの証言まで採用し、子どもが母親を魔女として告発することがめずらしいことではなかったといいます。無茶苦茶な時代といってしまえば、それでおわりですが、継母も犠牲者の一人であったのかもしれません。(メルヘンの深層 歴史が解く童話の謎/森 義信/講談社現代新書/1995年)
ところで白雪姫が王子と結婚したのはいくつぐらいのときでしょうか。
お妃が鏡に向かって「一番きれいなのはだれ?」と聞いて、鏡が「白雪姫」がきれいと答えるのは、白雪姫が七歳のとき。
そのあと七人のこびとのところで暮らし、変装したお妃がやってくる場面が三回。ガラスのお棺に横たわる時間があります。
この間の時間の経過を踏まえることも必要で、七歳というイメージがあるとほんとに若く結婚したということになりそうです。
グリム童話 白雪姫/絵:バーナデット:文と絵 訳:佐々木 田鶴子・訳/西村書店/1986年
原作に忠実ですが、「一番きれいなのはだれ?」と聞かれて、鏡が「白雪姫」がきれいと答えるのは、白雪姫が七歳のときなのですが、ワーナデッドは、年齢にはふれていません。
こびとの大きさですが、白雪姫がこびとの家で暮らしますから、それほど小さいイメージはなかったのですが、そんなに小さな描き方ではありませんでした。
こびとの家に時計があるのは昔話にはあわないのですが、お妃がやってきた時間を示すためでしょうか。
ガラスの棺が山の上に置かれ、動物たちがやってくる場面。文章は動物たちとあるだけですが、うさぎやりす、はと?が描かれ、くどくどいわなくても一目瞭然なのは、絵本ならではでしょう。
こびとの家のこまごました小物や、アヒルのいる小屋もイメージをふくらませてくれます。
天井に干してあるドライフラワーには、ラベンダーもあると、どなたか指摘していました。
白雪姫と七人の小人たち/作:グリム/絵:ナンシー・エコーム・バーカート・画 八木田 宜子・訳/冨山房/1996年
他の絵本ではどうえがかれているのか?。 文と絵が別々のページで、絵は絵だけで楽しめるような構成で、幻想的です。
鏡が「白雪姫」がきれいと答える最初は七歳のときとでてきます。
ガラスの棺が山の上に置かれ、動物たちがやってくる場面では、まずきたのがフクロウ、それからカラス、ヤマバトと具体的ですが、絵にはでてきません。
絵の描き方も絵本によってさまざま。なかほどに城、町の鳥観図、紋章がでてくるのは絵本ならではです。
お妃が秘密のさびしい部屋にいきますが、壺や草木、きのこなどがあって、まるで魔女が好きそうな部屋です。
白雪ひめと七人のこびと/スペン・オットー・絵 矢川澄子・訳/評論社/1979年
こびとの家は、必要最小限に描かれています。
ガラスの棺が山の上に置かれ、動物たちがやってくる場面では、ふくろう、からす、はととなっています。