牛をかぶったカメラマン/作・絵:レベッカ・ボンド:作・絵 福本友美子・訳/光村教育図書/2010年
19世紀のイギリス。望遠レンズなどない時代。
かれ草のような毛布や干し草、かるい木の上に本物の牛の皮ををかぶせた牛の中、切り株をくりぬいた木の中などで、カメラをかまえ、鳥や鳥の巣に近づいて写真を撮ることに成功したキーアトン兄弟の日々を描いています。
同じ出版社で働いていた兄弟は、時間をつくるため、毎朝3時か4時におきると、町を後にして写真をとりにでかけ、9時には仕事をはじめます。
おなかがすいても、のどが渇いても、虫にさされても、あらしがふきあれても写真をとりつづけた兄弟。
その成果は1895年に「イギリスの鳥の巣」として出版され、大反響をよびます。この本を見た人は、鳥のことを知り、名前をおぼえ、鳥を愛するようになったといいます。
巻末にはヒツジのぬいぐるみ、高い高い木の上にのぼっている兄弟、そして鳥の卵の写真ものせられています。
いつも写真家の絵本をみて、どうしてとったのだろうと思うような写真をみて驚きです。
今は、海中の魚、小さな小さな昆虫、空を飛ぶ鳥、草原をはしる動物たちの生態を簡単に目にすることができます。しかしその裏には、写真家の並々ならぬ努力があります。
望遠レンズはもちろん、赤外線カメラ、微小なカメラ、高速度撮影、スロー再生など技術が発展しても、最後は写真家の努力が必要なのでは・・・。