てんごくにいったのうふ/プラサンサ・カルコーッテゲ 再話・訳 イノーカ・デ・シルバ 絵/福音館書店 こどものとも/2016年
ひとりの農夫が、稲刈りをしようと田んぼに行ってみると、稲が倒れ、あちこちに丸くへこんだ跡がありました。丸い跡は農夫の家の臼とまったく同じ大きさです。「きっとうちの臼がうごいて、いたずらしたにちがいない」と思った農夫は、うすが動けないようにひもでしばります。
ところが次の日、田んぼに行ってみると、また丸い跡がたくさんありました。「きっとほかの家の臼に違いない」と思った農夫は、村の人たちに田んぼのことを話し、村中の臼をひもでしばって動けないようにします。ところが、次の日も、やっぱり丸い跡があったのです。
農夫は見張りをすることにしました。
夕方、田んぼに行っていってみると、一頭のゾウが、むしゃむしゃ稲を食べています。ゾウは夜が明けようととするまで稲を食べていました。
そして、ゾウは鼻を天に向けたかと思うと、空中に浮きあがりました。農夫がとっさにゾウのしっぽにつかまるとゾウはぐんぐん天にのっていきます。
ゾウがついたのは、なんと天国でした。
天国にあるものは、果物も建物も、なにもかも大きく、きらきらかがやいていました。農夫は大きなマンゴウにかぶりつき、きらきらひかる宝をみてまわりました、
そして夕方になって、ゾウがまた地上におりていこうとしたので、慌てて、近くにあった布を手に取り、ゾウのしっぽにつかまりました。
地上におりた農夫は、「おみやげだよ」と、おくさんにきらきらひかる布をわたし、天国のはなしをしました。
ところが、その布があんまり、きらきらひかるので、「なんだろう」と、近所の人たちが窓からのぞきました。
農夫が天国にいったという噂は、たちまち、村中に広がります。村の人たちは、一度でいいから、てんごくにつれていってくれと、農夫にたのみます。
それから、農夫と村の人たちが、どんどん天にのっていきますが・・・。
インドにも同じような話があります。スリランカとインドはちかいといえば近いのですが・・・。
・白いゾウ・インド(アジアの昔話4/アジア地域共同出版計画会議・企画 ユネスコ・アジアブンカセンター・編 松岡享子・訳/福音館書店/1978年初版)
王さまの庭師が白いゾウのしっぽをつかんで、いった先は天国でした。
庭師は母親から聞いた白いゾウのことを思い出したのです。
天国の木や葉は地上のものより十倍は大きく、花の色も十倍豊かです。たっぷりとおいしい果物を食べ、地上のもどるときは、おくさんに土産物を持ち帰ります。
おくさんから、どこで手に入れたのと聞かれ、庭師は天国のことを話しますが、このことを秘密にしておくよう釘をさします。
二度三度と天国にいった庭師は、マンゴーやすばらしい香りの花を持ち帰ります。
「どこで買ったの」ときかれ、おくさんはとうとう天国のことを話してしまいます。
おくさんは、けっして他の人には話さないように約束させたのですが、そううまくはいきません。すぐに村中に知られてしまいます。
ゾウのしっぽにつかまった庭師の足におくさんがつかまり、その足に友だちがつかまり、次々に足につかまって村中の人が天国にむかいますが・・・。
ゾウは気晴らしに地上におりてきたようですが、しっぽに何人もつかまっていられても、重さは感じません。
やはり天国はあこがれの場所。いってみたくなるのは当然ですが、なかなかうまくはいけないようです。