争いの裁き方もいろいろです。
・トラとバラモンとジャッカル(魔法のゆびわ/世界むかし話13インド/光吉夏弥・訳 畠中光亨・絵/ほるぷ出版/1979年)
ある時、トラが檻に閉じこめられ、とおりかかりのバラモンにだしてほしいとたのみます。
バラモンは「出してやったら、わたしにとびかかって食べてしまうだろう」と断りますが、トラが一生恩にきますというので、檻の戸を開けてあげると、トラは外に出るなりバラモンを食べようとします。
バラモンは命乞いをしますが、トラはきかないので、ほかのものに聞いてみることに。
まずボダイジュの木にききますが「わしなんか、誰でも通りがかりの者に、木陰や雨宿りの場所を貸してあげているのに、ありがたがれるどころか、あべこべに枝をひきちぎっていかれるしまつ」。
次に水牛は「父が出ている間は、ワタの実や油かすを食べさせてくれていたのに、乳が出なくなったら、まずいのこりものしかくれやしない」
バラモンが次に会ったのはジャッカル。
ジャッカルは言葉巧みに、トラを檻の中におしこめてしまいます。
バラモンや水牛がでてくるのがインドらしい昔話です。
・善意の物語(チベットの民話/W・F・オコナー 編 金子民雄 訳/白水社/1999年初版)
小屋に閉じ込められたトラがなんとか逃げようとして、小屋に近づいてきた鹿をなんとかいいくるめて、小屋から脱出することに成功します。
絶望的なところを救ってもらったにもかかわらず、トラは鹿を食べようとします。
理不尽に思った鹿は他の意見をきいて、食べられてもしょうがないといわれたらそうしようといい、まず樹木と水牛に意見をもとめるが、かえってきたのは善意というのはこの世にありえないということ。
しかし次に会った野兎は、なにがどうやっておこったのか知る必要があると言い、虎を小屋のなかに誘導して閉じ込めてしまうという話。
このチベットの話には、トラが人間の知恵で小屋に閉じ込められてしまうという前段がある。
善意が最後にはキチンと報われる?というのが予想できる話。
・頭のいいコヨーテ・・アメリカ(親と子の心をつなぐ世界名作おはなしたまて箱/齋藤チヨ/鈴木出版/2000年初版)
アヒルが岩にはさまれて動けなくなったガラガラヘビを助けるが、ヘビはアヒルを食べようとします。 アヒルはだれか別の人?に聞いてみようと、まずロバに意見をもとめます。ロバは一生懸命働いたのに、年をとると飼い主は飢え死にさせようというので、アヒルはヘビに食べられてもしかたがないといいます。
次に牛の意見をもとめるが、同じ答え。
次にコヨーテに聞くと、ヘビはどのように岩にはさまれていたか実際に見てみないと何とも言えないと、またもとのようにヘビを岩にはさみつけ動けなくしてしまう。
面白いのは、ロバも牛も人間に飼われて一生懸命働いたのに、役に立たなくなると邪見にあつかわれるということ。
皮肉たっぷりである。