おしゃべりなカーテン/子どもの文学傑作選/安房直子・作 河本祥子・絵/講談社/2004年初版
10篇のお話。目が弱って洋服つくりは、もう無理と、おばあさんが古いミシンをつかって、ちょっとしたいい仕事をしたいとはじめたのが、カーテン屋さんです。
カーテンを作るときは
「カーテンぬのは かんたんかんたん まっすぐまっすぐ ぬえばいい
日の光よりまっすぐに 北風よりもまだはやく まっすぐまっすぐ ぬえばいい」と歌います。
題名を並べると、このおばあさんのつくるカーテンがうかんできます。
<海の色のカーテン>1986年初出
夏。海で育った男が、海の色のカーテンを注文します。こい水色、うすい水色、黄色、薄紫、白いレース5枚を重ねたカーテンは、波の音、海のにおい、水のつめたさを感じさせてくれます。
口をきくカーテンです。
<月夜のカーテン>1986年初出
秋。月の光がまぶししぎるからと小さな白いチョウの注文のカーテン。しっとりとして、つややかで、ふかいふかいやみの色のカーテンです。
<秋のカーテン>1986年初出
お客のこない台風の日、仕事部屋の白いカーテンから催促されて、枯葉色、ぶどういろ、やぐるまそう色、すすきいろ、秋のゆうやけいろのカーテン55枚をつくって、お部屋のカーテンをとりかえませんかと張り紙します。
<ネコの家のカーテン>1986年初出
秋。ねこの注文で、リボンもようのカーテンをつくります。届け先は、すすき野原のにれの木のうしろです。
ねこのお礼は、半月形のワッフルです。
<歌声のきこえるカーテン>1986年初出
枯葉のコーラスが聞こえてきます。いちょうの葉の声、かきの葉の声、もみじの声。
翌朝、木の葉がみんな散って、庭は冬の景色です。
<ピエロのカーテン>1986年初出
ピエロが、おばあさんのつくったカーテンをのぼって、金色、銀色、すきとおった青、もえているような星をとってきます。
<お正月のカーテン>1987年初出
洗濯機のなかで、ぐるぐるまわされたり、ぎゅうぎゅうしぼられたりしたら、生きていけませんというカーテンの注文で、手洗いでお正月の準備をします。
<雪の日の小さなカーテン>1987年初出
ねずみが結婚式にかぶったレースのベールをつかって、カーテンをつくります。ねずみのおばあさんがお礼に作ってくれたのは、親指さきくらいの針さし。
ぬかがはいっている針さしをつかうと、針はけっしてさびないし、ぬってもぬってもつかれない針さしです。
<春風のカーテン>1987年初出
赤ちゃんが生まれてはじめて見るカーテンをつくてほしいと春の野原にそっくりのカーテンをつくります。
うめ、れんげ、なのはなのにおい、小鳥の声、小川の流れる音も聞こえてくるカーテンです。
四季とさまざまの色。そしてにおいや音の聞こえるカーテン。
不思議な世界にいざなってくれます。
女性ならではの繊細さがいっぱいのお話しです。
他の作品より少し短いので、語るにも適しているようです。