どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

超能力者

2019年07月24日 | 昔話(外国)

 昔話の面白さは、一つには登場するキャクター。日本の昔話にはあまりでてこないとてつもない力をもつ者たち。

 大人の感覚からすれば、少々なじみにくい。しかし、外国で超能力者がでてくる背景も知りたいところ。

 

六人男、世界をのし歩く(子どもに語るグリムの昔話2/佐々梨代子・野村宏訳/こぐま社/2000年)

   一人目の男(力持ち)・・木を引き抜くほどの力持ち
   二人目の男(狩人)・・・遠くのものを射抜く名人
   三人目の男(鼻ふき男)・遠くから鼻息で風車を回す男
   四人目の男(走りや)・・飛んでる鳥でも追いつけないほど早く走る男
   五人目の男(ぼうし男)・ぼうしをかぶるとあたりがおそろしく寒くなる男
 もうひとりは、兵隊に行って勇敢に働いたにもかかわらず、銅貨三枚でお払い箱になった男。
 
 この六人の出番がきちんとあって、王さまから宝物を分捕って、みんなで山分けして、死ぬまで何不足なく暮らすというお話。


美しいおとめ(おはなしのろうそく28/北米先住民の昔話/東京子ども図書館編/2011年)

 「美しいおとめ」を妻にしようと、おとめをさらっていった魔法使いが、おとめが自分のいうことをきかないため、国中におふれをだします。

 「勇気のある若者は、やってきて美しいおとめに結婚を申し込むがよい。もしわしが出す三つの問題をやりおおせたら、美しいおとめを妻にできる。だがもし失敗したら石にかえられる」。

 自分こそはとやってきた若者のだれもかれも失敗し、石になってしまいます。

 うわさがどんどんひろがり、ある森のはずれに住んでいる貧しい若者が魔法使いのもとへ。

 頭は決していいとはいえず、これまでに勇ましいことなど何一つしたことがなく「うすのろ」と呼ばれていた若者。

 この若者が途中であった者。

 一人目は力持ち。二人目は足がはやすぎる男。三人目は好きなだけ水を飲める男。四人目は遠くまで正確に矢を打つ男。五人目は敏感な耳をもつ男。

 美しいおとめは、若者にかえるよう いいますが、ここから魔法使いとの対決です。

 ラストは、力持ちが踊りながら開けた地面の大穴に、魔法使いが転がり落ちると、力持ちがドシドシと土を踏む固めたので、これが魔法使いの最期というもの。

 うすのろは、美しいおとめと、若者のお姉さんは、弓の名人と結婚します。

 「うすのろ」が何回もでてきて、ここまで言わなくてもよさそうなのですが・・・。 

 

北斗七星の話(子どもに語るモンゴルの昔話/蓮見治雄訳・再話 平田美恵子再話/こぐま社/2004年)
        
  一人目の男(山かかえ)・・・山をかかえるほどの力持ち
  二人目の男(長うで)・・・・天まで伸びる腕をもつ男
  三人目の男(聞き耳)・・・・どんな遠くの話でも聞こえる耳を持つ男
  四人目の男(はやあし)・・・とてつもなく早く走る
  五人目の男(のみつくし)・・海の水まで飲み干す男

 

王子の五人の援助者たち(ウズベキスタン)(シルクロードの民話3/小澤俊夫編 浅岡泰子訳/(株)ぎょうせい/2000年初版)


   一人目の男(力持ち)・・巨人のように太った男
   二人目の男(聞き耳)・・どんな遠くの話でも聞こえる耳を持つ男
   三人目の男(長うで)・・どこまでも伸びる腕をもつ男
   四人目の男(冷たい男)・世界中を凍らせてしまう男
   五人目の男(見える男)・どんなところでも見え、人間が何を考えているか読み取ることができる男

 主人公は王子で、ある姫君に求婚する話。難題をだすのは、王妃。

 

のっぽ、ふとっちょ、千里眼(金色の髪のお姫さま チェコの昔話/カレル・ヤロミール・エルベン文 アルトゥシ・シャイネル絵 木村有子訳/岩波書店/2012年初版)

 このチェコの昔話は登場人物がやや少なく三人。

 名前のとおりだが、のっぽは自由自在に伸び、ふとっちょも自在にふとれる。千里眼は普段目隠しをしているが、鋭い目でじっと見つめると、見つめられたものは燃えるか、木端微塵になってしまうというもの。

 花嫁を探しに行った王子は三人の力をかりて、魔法使いがだした課題をやりとげます。魔法使いが住む鉄の城には、大勢の人間が石にかえられていたが、魔法使いがカラスになって城をでていくと、みんな元の姿にもどります。

 三人は王子からぜひとも城に残ってほしいと頼まれるが、自由な生活をもとめて旅立つ。最後に三人が旅にでるというあたりが、昔の西部劇のラストシーンを思わせる。