たくさんのお月さま/ジェームズ・サーバー・作 ルイス・スロボドギン・絵 中川千尋・訳/徳間書店/2019年
原著は1943年の出版。日本では1949年に光吉夏弥訳で出版され、1994年に中川千尋訳で、さらに今年に幼年向けの読み物の形に直したとありました。
ある日、木いちごのタルトをたべすぎて、病気になった十歳のレノアひめでしたが、父君である王さまに、「なにか、ほしいものはあるかい!」と尋ねられ、お月さまがほしいと言いだします。
お城には、かしこい家来がおおぜいるので、王さまがおのぞみのものは、いつでも、なんでも手に入ります。王さまは、賢い大臣、魔法つかい、数学の大先生に、月をとってくる方法をたずねます。ところが、みんなは、これまでの実績を長々と言い立てるだけで、結局は月は手にはいらないといいます。
実績はきちんと一覧表になっていて、ひとつひとつ素晴らしいものばかり。この一覧表をみるだけで、いかに不可能を可能にしたものかがわかります。(ユーモアもあって楽しいですよ)
しかし、月が手に入れられないと悲しんだ王さまは、道化師をよび、リュートでせめて悲しい曲をひくようにいいます。
道化師は、月までの距離、大きさの答えが、大臣、魔法使い、数学の大先生でまちまちなことを聞いて「みなさんかしこいかたばかりです。だから、たぶん、みなさん正しいのでしょう。みなさんが正しいとなれば 月というのは、ひとりひとりがかんがえるとおりの大きさで、また、ひとりひとりがかんがえるだけ遠いということになります。とすれば、レノアひめが、月をどのくらい大きく、どのくらい遠いとおかんがえなのかを、うかがわなければなりませんね」と、おひめさまのところへ。
おひめさまのいう月は、おやゆびのつめより、ちょっと小さいくらい、大きな木のてっぺんくらいのところにある、金でできている と聞いた道化師は、金細工師に小さくてまるい金の月を作らせ、金の鎖をつけると、おひめさまのもとへ。するとおひめさまの病気もすっかりよくなってしまいます。
しかし、ここからが問題です。夜になればまた月がかがやきます。
王さまは、またレノアひめが、病気になるのではないか心配し、空にかがやく月を、レノアひめにみせてはならないと、もういちど大臣、魔法つかい、数学の大先生に相談します。
けれども黒めがねや黒いビロードの幕で城をおおう、花火をやすみなく打ち上げるという方法を提案され、王さまはかんかんにおこりだし、とんだりはねたりします。
ここで道化師は、レノアひめが月のことをよくごぞんじと、なぜまた空に月がかがやいているか たずねます。
するとレノアひめの答えは?