確認/星新一ちょっと長めのショートショート/七人の犯罪者/理論社/2007年
確認は、本人かどうか確認するもの。身分証明書、クレジットカードの所持者が必ずしも名義人であるとはかぎらない。印鑑だって当人の承諾の上で押したものか、誰かが無断で押したのかもわからない。実印だって盗み出されたら万事休止。
これらを解決してくれる画期的な装置が売り出された。声を出しながら片手をのせると、たちまち本人かどうか識別してくれる便利な装置。
そのメーカーはたちまち大きく成長。しかしメーカーは、この装置を売るのではなく、貸し付けるという方法をとった。それも二台。一台は故障したときの予備。
そして絶対に偽造不可能なカードをつくることにも成功。
装置があやまった判定を出し、被害を受けたら、いかに巨額であっても補償したので、需要はどんどんのびていって、やがて装置を使わないと本人の確認ができないという状況まで。
企業秘密を守るため、分解して研究されるのを防ぐため、分解しようとすると小爆発する仕組みも備えたもの。装置の根本部分は、ごくごく一部のものだけ。
ところがメーカーの十周年を祝う船上のパーテイで船が沈み、秘密を知るものが溺死してしまう。
やがて、本人確認装置が故障し、予備機も使えない状況になると、本人確認ができなくなって、銀行からは引き出しが不可能になり、会社に入ろうにもはいれなくなり、結婚式での相手の確認も不可能になってしまいます。
その上、本人かどうか確認できないため、死亡診断書もでません。
おまけに、夫婦の間でも、相手が確認できないと断絶状態に。
機械まかせの本人確認には、とんでもない未来がまっています。