中川李枝子さんや松谷みよ子さんのおはなしには、不思議な魅力があり、やさしく楽しい語り口は、そのもとになっている昔話の世界を広げてくれる。
<読んであげたいおはなし/松谷みよ子の民話 上・下/筑摩書房/2002年初版>
<よみたいききたいむかしばなし 1のまき 2のまき/中川李梨枝子・文 山脇百合子・絵/のら書店/2008年初版>
こうしたものを読んだからというわけではないが、以前読んだ絵本「すてきな三人ぐみ」が、お話として語れるのなら楽しいだろうなという思いがあり、私家版として文をつくってみました。文をつくってみると作者の苦労がしのばれるところ。
<すてきな三人組>
あるところに三人組の泥棒がおったと。
泥棒のいでたちは、黒いマントに、黒い帽子で、黒い帽子の下には、目玉だけがギラギア光っていた。
一人目はらっぱ銃をもち、二人目はこしょう・ふきつけ、三人目は大きな赤いオノをもっていた。
暗いまっくろな夜になったら、獲物をさがしに、でかけていくんだと。
泣く子も黙る三人組にであうと、女の人はびっくりして気をうしない、男も犬もあわててにげだす。
三人組が狙うのは、馬車。広くてまっすぐな道を走る馬車を馬に乗って追いつき、まずは めつぶしに、こしょうをたっぷりふきつけ、馬車がびっくりして止まると、おつぎは 大きな赤いオノで車輪をまっぷたつし、おしまいにラッパじゅうを かまえて、
「さあもっているものを出せ」
こうして奪った宝物を山のてっぺんの洞穴にもっていった。泥棒の家の大きな箱には 金銀、宝石、指輪に お金に 首飾り、宝物が、ざっくざくとあった
ある日のこといつものように馬車をとめ、中にむかって
「さあもっているものを出せ」
そのとき馬車に乗っていたのは、美しいお妃さまと侍女。
侍女たちは大騒ぎした。
「どうして、どうしてこんなことをするの」
お妃さまは
「私が誰か知っているの、どうしてこんな目にあわせるの」と言ったが、
三人組は、お妃は知らなかったので、いつものようにいただくものをいただいて家に帰った。
もったいないことに、三人組は美しい女性に、興味をしめさなかった。
それからしばらくたった日、あるすみをながしたような夜のこと、三人組は、いつものように馬車をとめて、
「さあもっているものを出せ」
といおうとしたが、馬車にのっていたのは小さい子どもだけ。
三人組はがっかりして
「おまえさんの名前は」
その子はこたえた。
「テファニーよ」
「なんでこんな夜に馬車にのっているんだ」
「これからおばさんのところにいくところよ」
テファニーは、母親と二人だけだったのが、母親がなくなったので、おばさんと暮らすことになっていたのです。
他に獲物は何にもなかったので、三人組は、テファニーちゃんを大事にかかえて隠れ家へかえった。いじわるなおばさんのところにもらわれて、いっしょに暮らすはずだったので、それよりは、このおじさんたちのほうが何だか面白そうとテファニーちゃんはよろこんだ
ふかふかのベッドでテファニーちゃんは、ぐっすり眠ったが、次の日、目をさますなり三人組の宝の山にきがついた。
「まああ こんなにいっぱい、どうするの」
テファニーちゃんに聞かれて、三人組は 顔をみあわせ考えた。
というのは、別に使うかうあてもなかったからだ。
そこで 三人組は、さびしく、かなしく、暗い気持ちで暮らしている捨て子やみなしごをどっさりあつめた。そして、みんなが住めるように すてきな大きなお城を買った。
子どもたちには、赤い帽子に赤マントを着せて、お城につれていった。
お城のうわさは、すぐに国中にひろがり、子どもはお城に次から次へとやってきた。
三人組は住むところだけではなく、牛や鶏を飼い、畠には野菜を植えて子どもたちの食料も自分たちで作って毎日を過ごしていた。
しばらくして、この国の王様が、兵隊100人を引き連れて三人組を捕まえにお城にやってきた。
というのは、王さまのお妃さまが。馬車に乗っていたとき、三人組に首飾りや宝石を盗まれ憎んでいたからだった。
王さまは
「盗んだ首飾りや宝石をだせ」
といったが、泥棒が集めた金銀、宝石は子どもたちのために使ってしまったから何にもなくなっていた。王さまは怒って、三人組を連れて行ってしまった。
「どうしよう、どうしよう」
「これからどうして暮して行ったらいいの」
子どもたちは大騒ぎになってしまった。
そのとき、テファニーちゃん
「泣いてもばかりいてもしょうがないわ。自分たちでなんとかしなくっちゃ」
そこで、みんなは料理係、掃除係、畑仕事係、牛の世話係、鶏の世話係に分かれて仕事をすることにした。
始めのうちは料理ができず、牛乳もよくしぼることができなかったのが、毎回失敗することでだんだん上手くなっていった。子どもたちの食事はそれはそれはにぎやかでしたよ。50メートルもある3つのテーブルにすわりパクパク。
牛からはミルクを、ニワトリからは卵を頂戴し、牛や鶏の糞は畑の肥料にしたから、野菜もよく育った。
こうして、いくつもの季節がすぎて、やがて、こどもたちは すくすく育ち、次々に結婚した。
そして、お城のまわりに家をたて、村をつくった
小さな村はどんどんおおきくなった。
ある日、テファニーちゃんはみんなを集めて相談することにした。
「私たちがこうしてうまくやっていけるのも、あの三人組のおじさんたちのおかげだわ。なにか記憶に残るものを残そう」
そこで、みんなはどうしたらいいか相談し、屋根がとんがり帽子で、三人に似た塔をたてましたよ。
<読んであげたいおはなし/松谷みよ子の民話 上・下/筑摩書房/2002年初版>
<よみたいききたいむかしばなし 1のまき 2のまき/中川李梨枝子・文 山脇百合子・絵/のら書店/2008年初版>
こうしたものを読んだからというわけではないが、以前読んだ絵本「すてきな三人ぐみ」が、お話として語れるのなら楽しいだろうなという思いがあり、私家版として文をつくってみました。文をつくってみると作者の苦労がしのばれるところ。
<すてきな三人組>
あるところに三人組の泥棒がおったと。
泥棒のいでたちは、黒いマントに、黒い帽子で、黒い帽子の下には、目玉だけがギラギア光っていた。
一人目はらっぱ銃をもち、二人目はこしょう・ふきつけ、三人目は大きな赤いオノをもっていた。
暗いまっくろな夜になったら、獲物をさがしに、でかけていくんだと。
泣く子も黙る三人組にであうと、女の人はびっくりして気をうしない、男も犬もあわててにげだす。
三人組が狙うのは、馬車。広くてまっすぐな道を走る馬車を馬に乗って追いつき、まずは めつぶしに、こしょうをたっぷりふきつけ、馬車がびっくりして止まると、おつぎは 大きな赤いオノで車輪をまっぷたつし、おしまいにラッパじゅうを かまえて、
「さあもっているものを出せ」
こうして奪った宝物を山のてっぺんの洞穴にもっていった。泥棒の家の大きな箱には 金銀、宝石、指輪に お金に 首飾り、宝物が、ざっくざくとあった
ある日のこといつものように馬車をとめ、中にむかって
「さあもっているものを出せ」
そのとき馬車に乗っていたのは、美しいお妃さまと侍女。
侍女たちは大騒ぎした。
「どうして、どうしてこんなことをするの」
お妃さまは
「私が誰か知っているの、どうしてこんな目にあわせるの」と言ったが、
三人組は、お妃は知らなかったので、いつものようにいただくものをいただいて家に帰った。
もったいないことに、三人組は美しい女性に、興味をしめさなかった。
それからしばらくたった日、あるすみをながしたような夜のこと、三人組は、いつものように馬車をとめて、
「さあもっているものを出せ」
といおうとしたが、馬車にのっていたのは小さい子どもだけ。
三人組はがっかりして
「おまえさんの名前は」
その子はこたえた。
「テファニーよ」
「なんでこんな夜に馬車にのっているんだ」
「これからおばさんのところにいくところよ」
テファニーは、母親と二人だけだったのが、母親がなくなったので、おばさんと暮らすことになっていたのです。
他に獲物は何にもなかったので、三人組は、テファニーちゃんを大事にかかえて隠れ家へかえった。いじわるなおばさんのところにもらわれて、いっしょに暮らすはずだったので、それよりは、このおじさんたちのほうが何だか面白そうとテファニーちゃんはよろこんだ
ふかふかのベッドでテファニーちゃんは、ぐっすり眠ったが、次の日、目をさますなり三人組の宝の山にきがついた。
「まああ こんなにいっぱい、どうするの」
テファニーちゃんに聞かれて、三人組は 顔をみあわせ考えた。
というのは、別に使うかうあてもなかったからだ。
そこで 三人組は、さびしく、かなしく、暗い気持ちで暮らしている捨て子やみなしごをどっさりあつめた。そして、みんなが住めるように すてきな大きなお城を買った。
子どもたちには、赤い帽子に赤マントを着せて、お城につれていった。
お城のうわさは、すぐに国中にひろがり、子どもはお城に次から次へとやってきた。
三人組は住むところだけではなく、牛や鶏を飼い、畠には野菜を植えて子どもたちの食料も自分たちで作って毎日を過ごしていた。
しばらくして、この国の王様が、兵隊100人を引き連れて三人組を捕まえにお城にやってきた。
というのは、王さまのお妃さまが。馬車に乗っていたとき、三人組に首飾りや宝石を盗まれ憎んでいたからだった。
王さまは
「盗んだ首飾りや宝石をだせ」
といったが、泥棒が集めた金銀、宝石は子どもたちのために使ってしまったから何にもなくなっていた。王さまは怒って、三人組を連れて行ってしまった。
「どうしよう、どうしよう」
「これからどうして暮して行ったらいいの」
子どもたちは大騒ぎになってしまった。
そのとき、テファニーちゃん
「泣いてもばかりいてもしょうがないわ。自分たちでなんとかしなくっちゃ」
そこで、みんなは料理係、掃除係、畑仕事係、牛の世話係、鶏の世話係に分かれて仕事をすることにした。
始めのうちは料理ができず、牛乳もよくしぼることができなかったのが、毎回失敗することでだんだん上手くなっていった。子どもたちの食事はそれはそれはにぎやかでしたよ。50メートルもある3つのテーブルにすわりパクパク。
牛からはミルクを、ニワトリからは卵を頂戴し、牛や鶏の糞は畑の肥料にしたから、野菜もよく育った。
こうして、いくつもの季節がすぎて、やがて、こどもたちは すくすく育ち、次々に結婚した。
そして、お城のまわりに家をたて、村をつくった
小さな村はどんどんおおきくなった。
ある日、テファニーちゃんはみんなを集めて相談することにした。
「私たちがこうしてうまくやっていけるのも、あの三人組のおじさんたちのおかげだわ。なにか記憶に残るものを残そう」
そこで、みんなはどうしたらいいか相談し、屋根がとんがり帽子で、三人に似た塔をたてましたよ。