どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

リンゴがでてくる昔話

2018年09月14日 | 昔話(外国)

 昔話に出てくるリンゴといえばアダムとイブまで遡れそうである。

 アダムとイヴは旧約聖書に記された最初の人間。

 アダムはエデンの園に置かれるが、そこにはあらゆる種類の木があり、その中央には命の木と善悪の知識の木と呼ばれる2本の木があって、それらの木は全て食用に適した実をならせたが、主なる神はアダムに対し善悪の知識の実だけは食べてはならないと命令します。

 その後イブが創造されると、蛇が女に近付き、善悪の知識の木の実を食べるよう唆す。女はその実を食べた後、アダムにもそれを勧めた。実を食べた2人は目が開けて自分達が裸であることに気付き、それを恥じてイチジクの葉で腰を覆ったという。

 この「善悪の知識の木」の実はよく絵画などにリンゴとして描かれているが、旧約聖書「創世記」には何の果実であるかという記述はないという。

 外国のものでリンゴがでてくるのは、旧約聖書が出発点とすると、大分古い。

・昔話でリンゴといえば「白雪姫」、「三匹のコブタ」、「ホレばあさん」。


・「ホレばあさん」では、野原にリンゴのいっぱいなっている木がでてきます。


婆さんの魔女(ジェイコブズ作 イギリス民話選/ジャックと豆のつる/岩波書店)では、「小さな娘さん、小さな娘さん、手伝って実をふるい落としてくれ。重くて枝がおれそうだよ」といわれます。


姉いもと(イギリスとアイルランドの昔話/石井桃子訳/福音館文庫)にも「むすめさん、むすめさん、わたしの枝をゆすぶっておくれ。実が重くて、わたしは、まっすぐ立っていられないんだよ!」とリンゴの木から声をかけられます。


・ロシアの「マーシャと白い鳥」でも木のリンゴを落としてあげます。


トンボソのおひめさま(トンボソのおひめさま/石井 桃子・訳/岩波書店/1963年初版)では、食べると鼻がのびるリンゴです。         


・季節外れのリンゴをさがして、森にでかけるのは「12月」(世界のむかし話9/チェコスロバキア/森の精/バージニア・ハピランド 清水真砂子・訳/学校図書/1984年)


・グリムにもリンゴのでてくるものが。
 「金の鳥」では、リンゴがぬすまれるところからはじまります。
 「三本の金の毛のある悪魔」では、さっぱり実をつけなくなったリンゴの木。
 「白へび」では、命の木から金のリンゴをとってくる場面があります。
 「一つ目、二つ目、三つ目」には二つ目にしかもぎとることができない金のリンゴ。

 実をつけなくなったリンゴの木というのは、ほかにも多いパターン。


・アラビアンナイト「空とぶジュータン」にでてくるのは、どんな病気でも直すリンゴです。


いのちの実(デンマーク)(子どもに語る北欧の昔話/福井信子・湯沢朱美・編訳/こぐま社/2001年)にも、どんな病気でも直すリンゴがでてきます。

 三人兄弟が父親から遺産相続したのはリンゴ畑。といっても上の二人が半分づつで、末っ子が手に入れたのは境目にある一本の木。

 王さまの一人娘が重い病気になり、兄弟は運試しにリンゴを籠に入れて王さまのもとへでかけます。途中、三人ともひとりのおばあさんにあいますが、上の二人はおばあさんのいったとおりになります。
 いちばん上の兄の籠からはヒキガエル、二番目の兄の籠からはごみとくそ!です。

 弟は途中、川マス、カラスとミツバチの争いをおさめ、お城につきます。リンゴを食べるとお姫さまの病気はなおりますが、お姫さまは結婚をいやがり、若者にできそうもない課題をだします。
 20年前に王さまがなくした指輪をみつけてくること(川マスが助けてくれます)
 陽が当たると金色に輝くお城を建ててくれること(ミツバツがたすけてくれます)
 地獄の火をもってくること(カラスがたすけてくれます)

 めでたく二人の結婚式がおこなわれることに。


ウイルヘルム・テル物語(オックスフォード世界の民話と伝説6 スイス編/講談社/1978年改訂)
 リンゴといえば、ウイルヘルム・テル。

 当時オーストリア人の代官が、中央広場にポールを立ててクジャクのはねをつけた自身の帽子を掛け、その前を通る者は帽子に頭を下げてお辞儀するように強制したが、テルは帽子に頭を下げなかったために逮捕され、罰を受ける事に。
 代官は、テルが自分の息子の頭の上に置いたリンゴを見事に射抜く事ができれば彼を自由の身にすると約束します。
 息子の頭の上のリンゴを矢で射るか、それとも死ぬかを、選択することになったテル。

 テルは矢を放ち、一発で見事に林檎を射抜きますが、矢をもう一本持っていた事をとがめられ、「もし失敗したならば、この矢でお前を射抜いて殺してやろうと思っていた」と答えた。

 代官はその言葉に怒り狂い、テルを鎖につなぎます。しかし代官は荒れ狂う海の中へ。船から逃げ出したテルは、代官の命を狙います。


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