ねこのお客 かめのシェルオーバーのお話1/ルース・エインワース・作 河本祥子・訳/岩波少年文庫/1996年初版
創作ですが、”むかし むかし”と昔話風にはじまります。
ひとりのまずしいおじいさんのところに、細い足、やせたからだの黒いねこがまよいこみます。
おなかをすかせたようにみえるねこに、ミルクをあげるとすぐに一滴ものこさずお皿をからにしてしまいます。
また皿にミルクをついで、パンをひときれ、ちぎってやると、あっというまに からになってしまいます。
おじいさんのパン、羊の骨付き肉を全部食べてしまったねこ。スープにしようと思った骨まで、歯で噛み砕いてしまいます。
おまけに暖炉の薪まで全部燃やしてしまいます。
天気が悪く、薪をあつめるのが大変で、わずかばかりの薪でした。
翌日、食べるものがなく、薪もないので火をもやすこともできないおじいさんでしたが、ねこが外にでようとすると戸を開けてあげます。
「わたしは、おじいさんのミルクを飲んでしまいました。おじいさんのパンを食べてしまいました。おじいさんの肉もたいらげたし、最後の薪まで、燃やしてしまいました。それなのに、どうしてわたしを追い出して、戸をピシャリとしめてしまわないのですか?」というというねこにおじいさんがいいます。
「お前は冷たくぬれていたし、おなかをすかしていた。いまは、からだもかわいて、あったまったし、ぐあいよくなった。お前とわたしは、おたがいに知らないどうしだったが、いまでは、ともだちじゃないか。」
この物語、最後にとびっきりの昔話風の結末があります。
壺にはたっぷりのミルク、お皿にはよだれのでそうな羊の骨つき肉、おいしそうなパン、部屋のすみにある薪の箱には、薪がうずたかく積み上げられていました。
ふしぎなねこのおくりものでした。
おじいさんの無償の愛?にたいする最高のおかえし。不思議な力があるねこが、どうしておなかをすかしていたのが疑問なのですが、最高のおかえしをするのにふさわしいかどうかみきわめていたのでしょう。
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