三枚の金貨/魔女のおくりもの かめのシェルオーバーのお話2/ルース・エインワース・作 河本祥子・訳/岩波少年文庫/1997年初版
ルース・エインワース(1908~1984) の「こすずめのぼうけん」は、よく語られているお話ですが、「三枚の金貨」をふくめ、もっとしられてもいいお話がいっぱいあります。
創作ですが昔話らしい物語です。
ヒツジ飼いの若者とガチョウ番の娘が愛し合い、娘の父親に結婚したいとたずねると、「金貨三枚と住む家をみせてくれたら結婚をゆるす」といわれます。
若者は両親を亡くし、かわりに育ててくれた老人のヒツジ飼いと一緒にすんでいました。
老人から、町にいってできるだけよい仕事について、金貨をかせぐようにいわれた若者は、さっそく町にでかけていきます。
旅の一日目、漁師のわなにかかった一羽の野生のガチョウを助けます。
二日目、巣から落ちたリスの赤ん坊を助けます。
三日目、水たまりでおぼれたテントウ虫を助けます。
ガチョウからはまっ白な羽を一枚、母リスからはモミの松かさをもらい、葉っぱのついた花のまんなかにとまったテントウム虫を上着のボタン穴にさして町につきます。
助けたものから助けられるのは昔話のパターン。
ガチョウの羽は、けちんぼの学者から、とてもできそうにない清書を。
リスからもらった松かさは、一週間も寝ないで、かじ屋の炉を燃やし続けけるのを。
そして、テントウ虫は、急に病気になった劇団の役者のセリフのプロンプターになって若者をたすけます。この劇団は、王さまとお妃さまの前で公演をすると広告していて、長いセリフをおぼえる必要があったのでした。
こうして若者は、三枚の金貨と、王さまからもらったもう一枚の金貨を手に入れます。そして金貨の一枚で花嫁の結婚指輪、上等のレースでできたベールを買い、ガチョウ番の娘と結婚します。
簡単にあらすじを書きましたが、結構長く楽しめます。
清書の仕事や、劇団の役者を急きょすることになるなど、より現代にちかいものが素材になっているのが創作らしいところ。
金貨が三枚、助けるものが三つと、これも昔話のパターンです。
金貨が三枚というのは少なすぎる感じもしますが、今でいえば、いくらぐらいの価値だったのでしょう。
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