世界むかし話/東欧/松岡享子・訳/1989年
魔女というとこわいが、どうにも憎めない魔女。
今回のミッションは、年とった悪魔の命令で、若く美しいむすめをさらってくること。
若く美しいむすめは、領主のむすめで、スタロスチェンカといいました。
スタロスチェンカはいつも騎士や召使が護衛をつとめていました。
乞食になってむすめにつかずいた魔女は、領主や貴族、従者が宴会をしていたときに、不思議な泉に案内するからと、むすめを連れ出すことに成功します。
ところが、この魔女なんともさえなくて、むすめをわきに抱えて、飛び立とうとしますが、地面のみぞに足をとられ、うつぶせに倒れてしまいます。おまけに馬がわりの箒まで、なくします。
スタロスチェンカは森番の小屋に、にげこみますが、そこにやってきた乞食に扮装していた魔女に気がついて、森のなかに走っていきます。
いったん、箒をさがしだした魔女でしたが、この箒は森番の馬の世話をする少年が、気に入ってかくしてしまっていました。
小屋で篩(ふるい)を見つけた魔女は、今度は篩のなかにすわり、空に浮かんで、またスタロスチェンカをおいかけます。
スタロスチェンカは百姓家ににげこみますが、ここにも魔女がやってきます。スタロスチェンカがぐっすり眠るのをまって、連れ出そうとしますが、スタロスチェンカは魔女の正体をみぬいていました。
そっとベッドからおきだし、大急ぎで教会にむかいます。
篩をだして追いかけようとしますが、百姓家のよめが、この篩を小部屋に入れ、鍵をかけていたので、篩がみつかりません。
この時、黒い一羽のオンドリが、ときの声を上げようと、塀にとびあがりますが、このニワトリをみた魔女が、とさかをつかんで、オンドリの背にまたがり、またむすめを追いかけます。
ところが、途中領主とその一行がとおりかかり、若い美しい城の城主が弓で、魔女をうちおとしてしまいます。
魔女は、地面に落ちたとき、一握りの悪臭をはなつ灰になってしまいます。
魔女が本来大事にすべき箒を簡単に見失い、かわりの篩もなくしてしまいますから、仕事?ができなかったのも当然です。
灰になるというのも珍しいのですが、魔女がのった篩も、じつは百姓家のよめが森番のおかみさんにかしだしたもので、「これはうちのだよ!。けど、これはコールタールのにおいがするーうっ、くさい!いまどきの女の人ときたら! 人にものをかりておいて、よごしてから、どうやってともわからぬうちにかえすんだからねえ!」となげく様子も、あまり昔話には見られません。
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