どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

百姓が博士になった話・・ドイツ

2018年06月06日 | 昔話(ヨーロッパ)

          世界むかし話/ドイツ/矢川澄子・訳/1989年


 一人の百姓が馬に乗って、粉引き小屋まででかけましたが、帰ってみると自分の家にあるはずの二本の菩提樹がみつかりません。村のはじからはじまで三回も繰り返し歩いてみても自分の家はみつかりません。

 他の村にきたかと思った百姓が居酒屋で飯とのみものを頼み、考え込んでいると、馬が馬屋でのびているので、馬を助けてくれるように頼まれます。

 百姓はのびている馬に向かって「生きて気がねえんだったら、犬はわんさといるし、犬のえさにしてやるからな。だが、まだ生きてていたいなら、草はたっぷりあるぜ、腹いっぱいくわしてやらあ」と、ささやきかけると、馬はとたんにぱっと立ち上がり、また元気に動きまわりはじめます。
(馬は、ただ病気のふりをしていただけでした。百姓は馬が病気のふりをしていたのを、どうやって見抜いたのでしょうか?。)

 話しかけただけで死にかけた馬の病気をなおしてしまう博士(百姓がいつのまにか博士です)の話は、庄屋のところにもつたわります。
 庄屋のところでは、りっぱな馬が二頭盗まれたばかりで、この馬を何とか取り戻そうと思っていたのでした。
 百姓は庄屋から最高のもてなしをうけます。馬を探せないわけがないと大見えをきった百姓でしたが、夜中に外に出てみると、戸口に二頭の馬をみつけます。
 馬は泥棒から逃れて、自分でもどってきたのでした。もちろん庄屋は大喜び。

 この噂は、国中にひろがりました。王さまは、この大博士の力をかりたいことがありました。
 お妃さまが、お産が始まっても、いつまでたっても子どもが生まれず、命があやぶまれていました。
 「いかなる病でもなおしてみせます」と、ここでも百姓は自信たっぷり。

 百姓はじつは、うまくいかないのなら首をちょん切られることになっていて、自分の身が心配で心配で、お妃さまのそばで、「生まれんことにゃ、わしが死ぬ、生まれんことにゃ、わしが死ぬ!」とつぶやくと、お妃さまがおかしさから笑って笑って笑いころげると、かわいい王子さまを生みおとします。

 もうひとつ、エピソードがあって、蒸し暑い日に、博士が蚊をはらいのけるため手をあげると、王さまが手招きされたと思って、博士のところにいくと、王さまがいままですわっていたところに雷がおちてきて、椅子を粉々に打ち砕いてしまいます。

 九死に一生をえた王さまは、博士を父親のようにしたい、城の半分を博士のすまいにします。

 お百姓の自信は、あまり根拠がなさそうですが、やることなすことすべてがうまくいくというのは、昔話のよいところでしょうか。

 冒頭部に、あるはずの菩提樹がないというのは、あんたの亭主になるようにといわれたとのりこんできた職人が、百姓のおかみさんとねんごろになり、切ったしまったのが原因でした。
 このあと、おかみさんはどうなったか気になるところです。


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