どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

つゆあけはいつ?

2023年07月17日 | 日記

 関東地方は猛暑がつづいているが、秋田では、大雨の影響で被害が出ていたりと、どこかつぐはぐ。

 一週間まえに、セミの鳴き声を聞いて、梅雨明けかけかと思ったら、この猛暑。

 災害にあわれた地域での片付けも、この猛暑で、どうしているかも心配。


ぷ~~~っ!

2023年07月15日 | 絵本(外国)

   ぷ~~~っ!/ピトー&ジェルヴィエ・作 石津 ちひろ・訳/文化出版局/1997年

 

 ぞうくん、食事の最中も、プールに行っても、あるいていても ねむっているときでさえ、ぷ~~~っ!

 夜中のおならで みんな目を覚まし、「うるさくてねむれない」と、みんなそろって、ぞうくんを 森の中へ おいはらう。

 ところが ぞうくんがいなくなった町は、「なんて さびしいんだ!」「なんか ものたりないのよね!」「たいくつで しょうがないや!」と、みんなそろって ぞうさんをむかえに いく。

 もりのなかで、ひさしぶりに ぞうくんの おならをきいて みんな すっかりおおはしゃぎ。

 町へもどったぞうくんは、町の広場で ふうせんをふくらませては みんなに プレゼント。

 

 「なんて ひどい においなの!」とでてきますが、「ぷ~~~っ!」という音からは 臭い においは 感じません。

 

 「おなら」は、こどもがだいすきなネタ。ぞうくん また みんなと 仲良くできて 安心でした。


オオカミと石のスープ

2023年07月14日 | 絵本(外国)

  オオカミと石のスープ/アナイス・ヴォージュラード:作絵 平岡敦・訳/徳間書店/2001年

 昔話の「石のスープ」「くぎのスープ」の動物版とおもったら、どうやら騙されたのは?

 

 ある冬の夜、年老いたオオカミが どうぶつ村の入り口にあっためんどりの家にやってきました。「こわがらないで、めんどりさん。わたしはもうとしよりで、歯だっていっぽんしか、のこっていないんです。暖炉で、すこしあたたまらせてくださいよ。そうしたら石のスープを作ってあげましょう。」
 石のスープっていうのを、のんでみたいとおもっためんどりは、ドアをあけることにしました。

 オオカミが、なべのなかに石をいれ、水をくわえようとすると、めんどりは、「あたしはいつも、スープには、セロリをすこしいれるのよ」というと、「なるほど、セロリをいれれば、おいしくなりそうだ」とオオカミ。

 そのとき、めんどりの家に、オオカミが入っていくのを見たぶたが心配してやってきました。石のスープのことを聞いたぶたは、「ズッキーニも、いれたらどうかな?」というと、「まあ、いれてみましょうか」と、オオカミ。

 つぎに心配してやってきたのは、あひるとうま。あひるは、「ぼくはまえに、エジプトで、石のスープをのんだことがあるけれど、それにはねぎもはいっていたぞ」。めんどりがたずねると、「すきにすればいいさ」と、オオカミ。

 めんどりを心配した動物たちが、次々とやってきて、カブやキャベツもはいります。

 それから、スープが出来上がるまで、みんなでだんろをかこんで、ワインを飲みながらおしゃべり。ぶたが、「めんどりさんが、だまされて、スープにされちゃうのかとおもったよ」というと、オオカミは、なべをかきまわして、「どうやら、スープができたようだ」というだけ。
 ばんごはんは夜までつづき、みんなは、さんどもおかわり。一段落すると、オオカミは、とがったナイフで、石をつついて、「ああ、この石はまだ、にえていないな、だったら、あしたの夕食のために、もってかえらせてもらいますよ」と、あひるが 「またきてくれますよね」というのに、返事をしませんでした。

 つぎの日、むかったのは七面鳥の家でした。


 昔話では、スープに入れるものを、言葉巧みに誘導していきますが、ここでは、動物たちがみずからつぎつぎにもってきます。思いがけない邪魔者があらわれオオカミのたくらみがとん挫したのでしょうか。なんとも面白くなさそうなオオカミ、なにを考えていたのか?

 どうぶつ村のチームワーク(おせっかい?)が、めんどりの危機を救うことになったのは、間違いなさそう。ナイフがでてきて、七面鳥?の家のドアをたたくラストは、意味深です。


なぞってみたよ

2023年07月13日 | 絵本(日本)

   なぞってみたよ/福知伸夫・作/福音館書店/2017年(2013年初出)


 「なぞ」って 遊ぶ機会は どのぐらい あるのでしょうか。

 やってみたいと 思わせる とても 楽しそうなものが でてきます。

 まずは、わたしの手 おとうさんの手

 それから 家族の 足

 新聞紙に横たわるおとうさんを なぞるのは、大変そう。

 バナナ はさみ せんたくばさみ プリン

 牛乳パックは おきかたで 横長になったり 四角になったり。


 なぞった線から もとの形を 当てられたら 楽しそう。



 見たあとは、やってみたくなる 絵本です。

 お金なんか かけないでも、身近なもので、楽しめる工夫こそ 想像力、想像力を 膨らませることができます。


はらぺこ おおかみの デコとボコ

2023年07月12日 | 絵本(日本)

   はらぺこ おおかみの デコとボコ/みやにし たつや/ひかりのくに/2023年

 

 はらぺこおおかみのデコとボコが、森のなかでリンゴを食べていましたが、もうちょっと うまいたべものがほしいとおもっていると、チューチュー チューチュー。

 ネズミを追いかけ、森を抜け 野原をぬけると、ネズミは、深い谷底にかかっている 丸太の橋をわたってにげてしまいます。

 「やめた! あんな ちっちゃな ネズミ ふたりでわけたら すこーししか たべられないぜ! おれ ほんとうは ニワトリを たべたかったんだ。」と、いっていると、コッ コッ コッ

 ニワトリに逃げられ、ウサギにもブタにも逃げられ、もどったのは、リンゴをたべていたところ。

 結論は、「リンゴは さいこうさ!」

 

 ニワトリは、やせっぽっち、ウサギは 耳ばかり 大きくて、絶対にうまくないと、負け惜しみをいう二匹。なんとも しまりません。


はんぺらひよこ・・スペイン

2023年07月10日 | 昔話(ヨーロッパ)

       世界のむかしばなし/瀬田貞二・訳 太田大八・絵/のら書店/2000年

 

 目が二つ、手が二つ、足が二本と、人のからだは対称的ですが、これがすべて一つというのは想像しにくい。しかし昔話では、半分人間がでてきたりします。ここでは、足は片足、はねはかたつばさ、目は片目のひよこが主人公。

 はんぺらひよこは、ごうきのかたまりで、にいさんひよこたちより、ずっとつよく、やりたいことは、なんでもやるし、いきたいところは どこでもいくというしまつ。

 あるとき、はんぺらひよこは、「おかあさん、ぼくは王さまにあいたい。マドリッドのみやこへいってくる。」と、いいだし、おかあさんがとめるのをふりきって、ぴょこん、ぴょこん、野原をこえて、でかけていきました。

 だいぶいったところ、はんぺらひよこが、小川にさしかかると、「水草で道がつまって、ながれることができない。どうかつまっている枝や水草を、おまえさんのくちばしでおしながして、わたしをたすけてくれないか。」と、水がさらさらいいますが、「なんてことをいうんだ。無駄足をくってられないや。ぼくは王さまにあいに、みやこへのぼるところなんだ!」と、水の頼みに耳を貸さずに、ひよこは、ぴょこん、ぴょこんと、とおりすぎました。

 焚火から、「つばさで、あおいでくれないか」、風から、「からみあった枝や葉をちょっとどけてくれれば、いきがつけるんだ。」と、頼まれても、ひよこは無視して、王さまの宮殿にやってきます。

 宮殿のなかにわをとおりすぎようとすると、料理番につかまって、火にかけたなべの水のなかに、投げ入れられてしまいます。ひよこが、「水さん、水さん、おぼれさせないでよ! それいじょうのぼってこないでよ、おねがいだ」と、大声をああげますが、水は、「わたしがこまっているときに、おまえは、たすけてくれなかったね。」と、ますますのぼっていきました。そのうち水は、あたたくなって、あつくなって、ひどくあつくなってきたので、「そんなにひどくもえないでよ! 火さん」と、ひよこは大声をあげますが、火から無視されてしまいます。

 焦げてしまったひよこを、料理番は窓のそとへすてました。するとそこへ風がふいてきて、木よりもたかくまいあげました。そして、風はいちもくさんに、ひよこを、お寺のとんがりやねのてっぺんにふきつけて、そこにくぎづけにしてしまいました。

 

 どうやら風見鶏の由来らしい話ですが、調べてみるとちょっとちがうようです。


クマとオオカミ

2023年07月09日 | 絵本(外国)

   クマとオオカミ/ダニエル・サルミエリ・作 やまぐち ふみお・訳/評論社/2021年

 

 一面に雪がふりつもり、風のない夜の森。クマは、白く輝く 地面から生えてきたようなオオカミに出会い、オオカミも、地面から生えてきたようにクマに出会います。

 クマは「つめたい くうきに あたって、ゆきが ふった もりの しずけさを たのしもうと、さんぽに でかけたのよ」といい、オオカミも、「あしもとの つめたさを、かんじて あるくたびに ゆきが きしきし いうのを ききにきたのさ」と、いっしょに森の中を探検に。

 木の皮の湿ったにおい、雪のかけらが、ゆっくり けがわに まいおちる、かすかな 音を聞きます。二頭を見下ろしているのは 一羽のトリ。

 二頭は、凍った湖の雪を かきわけると、くもった氷を通して、眠ったように じっとしている 魚を みつめました。

 帰る時間になると、「また あえるといいな」と、それぞれ反対側に あるいていきます。

 そして春、二頭は びっしりしげった 草むらで 再会です。

 

 特に事件がおこるわけでもく、冬の凍てつく中で、しずかに散歩する二頭。冬の寒さでなければ見えない風景です。

 冬の寒さの中で、春をまつか、それとも真夏の暑い時期に、ひんやり感を楽しむか?。


テツコ・プー ふううせんになった おんなのこ

2023年07月08日 | 絵本(日本)

    テツコ・プー/児島なおみ/偕成社/2020年

 

 てっちゃんは、あさからプーッとした きもちでいっぱいでした。朝ごはんのときに、弟をつねったら、お母さんに怒られた。でも、てっちゃんは あやまるどころか もっとプーッとして、カーテンの中に かくれ、なんといわれても でてきませんでした。

 お母さんから、「いつまでも プーッとしていると、ふうせん みたいに ふくらんで、どっかに とんでっちゃいますよ」と、いわれ、「ふーんだ。ふうせんになんかに なるわけ ないもん」と、もっとプーッとしました。すると、あらふしぎ、てっちゃんのからだが どんどんふくらんで ふんわり うくと まどから 空高く とんでいってしまいました。

 はじめは 空を飛んでいるのも 悪くありませんでした。でも だんだん あきてきて おうちに かえりたくなっても  こんどは したに おりられませんでした。

 カラスがやってきて、「ふうせんさん、つついてあげるよ。」というと、「だめ!」というてっちゃん。風が笑い出し、カラスとてっちゃんは、吹き飛ばされ、木の枝を つかみました。枝を伝って降りようとしても、おりらりません。おうちにかえりたいと泣いていたてっちゃんのところに、風が戻ってきて「きみを さがしているひとが いるよ。そこに いっしょに いこう!」

 いってみると、ママでした。てっちゃんが おりれないと叫ぶと、ママは?

 

 絵本のなかでは、おんなのこは テツコ・プーと 表現されていますが、なぜ不機嫌なのか でてきません。でも原因がよくわからなくても、ブルーな気持ちになって、なにもかも なげだしたくなることも たびたびあって なにか てっちゃんの気持ちが 理解できます。

 お母さんにいわれ、てっちゃんが、笑うと プーッとした きもちが どんどんぬけて、したにおりることができました。肩の力を抜くと、見えてくるものがありそうです。


よわむしおばけ

2023年07月07日 | 紙芝居

   よわむしおばけ/仲倉眉子:作画/教育画劇/1996年(12画面)

 

 なきむしで、こわがりの おばけの子。おかあさんから、「おばけというものは、人を こわがせる ものだよ。がんばって だれか こわがらせて おいで。」といわれ、夜道であったのは 真っ赤な火の玉。火の玉が ゆらゆら むかってくると 「きゃーっ! こわいよーっ!」と、おばけの子は、夢中で逃げ帰りました。おかあさんが みにくると それは 屋台のラーメン屋さん。

 別の道にいってみると うなりをたてた おおきな 目玉のかいじゅう。おかあさんは、「あれは、トラックというものだよ。こんどは、だれも おどかさないので、かえってきたら おうちにいれませんよ。しっかり いっといで」と、おばけの子を おくりだしました。

 川の土手まで くると まっくろな かいぶつ。(やなぎの木でしたが)おばけの子の背中を そおっと なでたのです。「きゃーっ! やだーっ! かんべんしてーっ!」と、夢中でにげだすと、川の中へ まっさかさま。

 ところが、とおりがかりの人たちが気がついて、綱をおろし、おばけの子を ひきあげました。おばけをみた人たちは、みんなおおあわてで、ふるえながら 一目散。

 おれいをいおうと おもった おばけの子は、にげだした人たちを見て、たくさんの人を おどかしてきたよと 報告すると、おかあさんは、大喜び。

 

 大人のほうが にやりする オチ。


「長靴をはいた猫」に類似する昔話

2023年07月06日 | 昔話(外国)

 「長靴をはいたねこ」は、1697年にペロー、それ以前には1634年出版のものにみられるという。またグリム童話の初稿にも「くつはきねこ」というタイトルで。タイトルだけでは、なかなか内容がわかりません。

 

・ペール殿下(ノルウエーの昔話/アスビョルンセンとモー編 大塚勇三・訳/福音館書店/2003年)

 両親がなくなり、三人兄弟の末っ子のペールがもらったのはネコ。

 ネコは、王さまの歓心をひくため、トナカイ、シカ、ヘラジカを脅かし、王さまに献上させます。つれていったペールは、そのたびごとに、心づけのお金をたくさんもらいました。

 王さまは、ペールのことが知りたくて宮殿に来るようにいいます。ネコは、馬車や馬や衣装など、ペールが必要なものをそろえ、ペールと一緒に宮殿に向かいます。王さまが、ペールに、なにをだしてみせても、なにを見せても、ペールは、「これは、たしかに、けっこうなものです。けれど、わたしのうちにあるもののほうが、ずっとみごとで、すてきですねえ。」と、こたえます。王さまはひどく腹を立て、「おまえのうちにいってみたい。お前の言うことが本当か見てみたい。」といいだし、みんなはでかけました。

 ネコは、羊の群れ、ウシの群れ、馬の群れをみると、銀のスプーン、銀のひしゃく、銀の盃を、番をしている人にあげ、王さまから何か聞かれたら、ペール殿下のものだと、こたえさせます。

 一行が、だいぶ長いこと進んでいくと、ひとつの城にやってきました。ネコは、ペールに、「ここがわたしの住んでいる城です。」と、王さまに言うよう進言します。城の中は、椅子もテーブルも、なにもかも金でできていました。

 王さまは、「なるほど、ペール殿下は、わしよりも、ずーっとすばらしい暮らしをしている」と、帰ろうとしますが、ネコは夕食を食べていくように頼みます。そのうち、みんながテーブルについているとやってきたのは、城の持ち主のトロル。「おれの食べ物を食い、おれの蜂蜜酒をのんでいるやつは、いったいだれだと?」とトロルがどなると、ネコは、お百姓の話をしだしはじめ、時間をかせぎます。そして太陽がのぼってくると、後ろのほうに、美しい乙女がいるからとトロルをふりむかせると、太陽を見たトロルは、はじけとんでしまいました。

 ここからびっくりするような展開。ネコは、わたしがしてほしいたったひとつのことは、頭を切り落としてほしいということ。「そんなこと、ぜったい、やりたくない」と、ペール殿下がいうと、ネコは、「そうしてくれないなら、この爪で、あなたの目を、引っかきだしてしまいます。!」とおどしたので、ペール殿下は、やむなく頭を切り落とします。すると、ネコは、なんとまあ、うつくしいお姫さまにかわってしまいます。

 お姫さまは、トロルに魔法をかけられていたのです。

 

 ペロー版では、お姫さまが、主人公に、ひとめぼれしますが、この話では、「わたしを妃にしようと望まれても、望まれなくても、ご自由です。」と、本人の意向を尊重しています。まあ、結論は想像のとおりですが・・。トロルやトナカイ、ヘラジカがでてくるのは北欧らしい。

    

・ピロ伯爵とキツネのおはなし・・シチリア(シチリアのメルヘン/シルヴィア・シュトゥダー=フランギニーノ・カンパーニャ・編 あべ ゆり・訳/花風社/1999年)

 ねこでなくキツネが主役。

 父親が遺産として残してくれたのは一年中実をつける梨の木だけ。ひとりでは食べる分も稼ぐことができない若者のところに、一匹のキツネがやってきて梨の実を、大かご一ぱいもらえないか もちかけます。幸せにしてあげるといわれ、梨をもたせると、キツネはその梨を王さまのところにいって、梨の木(ピロ)伯爵からといって献上します。

 真冬に梨の実を見た王さまは、わけを知りたいといいますが、キツネは、「伯爵はお望みの物をなんでもお持ちです。」といい、王さまの返礼も、伯爵の名誉を傷つけると、ことわります。

 キツネが、もういちど王さまのところへ梨の実を献上したとき、伯爵が望んでいるのは姫君との結婚を許していただくことというと、王さまは、城へ招待したいといいます。

 キツネは、上等な服を仕立て屋につくらせ、馬の商人のところで一番よい馬を手に入れ、若者と城に向かいます。もっとも、服も馬も後払いで。

 城では一言も発しなかった若者は、食事がおわると家路につきます。もういちど梨の実を王さまに届け、姫君との婚礼の返事をもらったキツネは、心配する若者と姫君の婚礼の儀式をあげることに成功します。

 何日かすぎて、お城に奥方をつれていくことになり、王さまと大勢の騎士も一緒に、平野をすすんでいきます。

 一行の先を走っていったキツネは、何千頭もの羊の群れ、豚の群れ、馬の群れを連れていた人たちを、人食い鬼のものだと言ったら、騎士たちに殺されるから、ピロ伯爵のものだといえと脅します。羊飼いたちは、王さまに尋ねられると「ピロ伯爵のものです!」と答えたので、王さま婿が大変裕福なのをみて喜びます。

 やがてキツネは、人食い鬼の宮殿につくと、人食い鬼たちに、大勢の騎士たちが君たちを退治するためにやってくる脅し、みんながいったらおしえてあげようと、鬼を炉のなかにかくれさせます。

 城の豪華さに いたく感心した王さまは、召使がひとりもいないことに気がつきます。キツネは、伯爵が、奥方さまの希望を聞くまで何も整えようとなにもなさらなかったとこたえます。

 王さまが安心して城へ帰ると、キツネは、鬼がかくれている炉の小枝に火をつけ、焼き殺してしまいます。

 このあと、キツネは自分が死んだあと、ピロ伯爵がどうするかひと芝居をうちますが、誤解も解けて、キツネは宮殿で何不自由することなく暮らし、死んだときは見事な棺の中へ。

 

 「いやあ、うらやましいお話ですね」という結びは、ほかの話にも使えます。それにしても、「口のうまさは」表裏一体。騙す人に要注意。

        

・ぼうしになったキツネ・・中国 ウイグル族(けものたちのないしょ話/君島久子・編訳/岩波少年文庫/2001年)

 とてつもなく貧乏で、財産といえば、いっぽんのザクロの木だけ。そんなアイムタイクは、この木を自分の子どものように可愛がり、大事にしていました。ザクロが熟するころになると、昼も夜もその木のそばに座り見守っていました。

 ところが一日中気を張っているのも大変です。ある晩、思わずこっくりしてしまい、はっと目をあけると、ザクロの数が減っているではありませんか。「なんとしたことだ」と、後悔しました。ところがあくる日も眠ってしまい、ザクロはごっそりとへっていました。

 つぎの日、眠ったふりをして待ち構えていると、キツネがやってきて音もなく木に登りました。アイムタイクはふいにとびおき、手をのばすと、キツネのしっぽをつかまえますが、逃げられてしまいます。となりのおじいさんから教えられ、塀際のキツネがうずくまるところに、”にわか”を煮て、まいておくとキツネをつかまることができました。

 アイムタイクが、キツネを打ちのめそうとして棒をふりあげると、キツネはしきりに前足をあわせて「どうぞ命だけはお助けてください。そのかわり、一生あなたの手助けをします。お嫁さんだってさがしてあげます。」。それを聞いたアイムタイクは、キツネまでばかにしてと、またも棒を振り上げますが、「本当なんです。方法があるんですから。王女さまだってさがしてあげられるんです」といわれ、キツネをはなしてやりました。

 さて、キツネは、この国の遠い都の国王に真珠やメノウをふるい分ける力があるという”ふるい”を貸してもらうと、ふるいを返しにいくとき、こっそり宝石をいくつかふるいの目にうめこんでおきました。そしてふるいを手渡しふりをして、わざと地面に落としました。すると、真珠や宝石が地面にころがり、それをみつけた王女や王子がかけよって、うばいあいになりました。

 国王は、キツネからアイムタイク国王が、宝石をたくさん持っているのを聞くと、内心うらやましくなり、にわかにていねいにキツネをもてなし、三人の王女のうち一人を妃にするよういいます。キツネは、もったいぶって結婚するかどうか聞いてくるからとアイムタイクのもとへかえり、いっしょに都へでかけます。

 途中、アイムタイクに、川に入り頭だけだすように知恵をつけたキツネは、国王に、「大変です。わが国王があなたへのおくりものの四十頭のラクダに真珠や宝石が、洪水でながされ、服も流された」といい、国王に、りっぱな服も用意させることに成功してお城に到着しました。

 王女の一人と結婚し、とうとう帰る日がやってくると、国王は大臣に命じて、たくさんの軍勢をひきいさせ、王女とアイムタイクを送らせることにしました。

 一足先に走り続けたキツネが、ラクダの群れに会い、ラクダ飼いから「キツネさんや、なにをそんなに夢中で走っているんだい。」と聞かれると「知らないのかい。うしろからたくさんの盗賊がおってきて、人を見つけしだい殺すんだ。早く逃げた方がいい。ほらきたほらきた。」「あいつらがやってきて、このラクダの群れは、だれのものかと尋ねられたら、アイムタイク王のものだとこたえるがいい。そうすれば、殺されずにすむよ。」

 キツネが走り続けていくと馬の群れに会います。ここでもアイムタイク王のものだとこたえれば、ころされないよと、いいます。そして羊飼いにも同じようにして、やがてとびこんだのは魔王の宮殿。ここでは、「アイムタイク王が攻めてきました。魔王を殺せといっているのです。たくさんの兵をひきいてやってくるから勝ち目はない。早くかくれましょう。」と、マントルピースにかくれさせます。それから、キツネは、急いで薪を運んでくると、山のように積み上げ、火を放ちました。魔王はたちまち火だるま。

 こうしてアイムタイクは、魔王のりっぱな宮殿をそっくりいただいて、そこにすみつくようになったのです。

 ある日のこと、キツネが、「わたしはあなたのために大いに働きました。もしわたしが死んだら、どうなさいますか。」と聞くと、アイクタイムは、「もし、おまえが死んだら、永遠に忘れないように、お前を頭の上にいただこう」と、まじめに答えました。ニ、三日後キツネが死んだふりをすると、アイムタイクが「穴の中へすててしまえ」と、言い終わらぬうちにキツネは「なぜ、約束を守らないんだ」と問い詰めます。「すまん、すまん、かんべんしてくれ」と、謝った王さまは、「もし前が本当に死んだら、わたしは必ず、お前を頭にいただいて、永遠にわすれないようにしよう」と約束し、キツネが本当に死んだとき、その通りにします。

 それを見た人々は、なかなかかっこうがいいと思ったのでしょう。みんなまねをして、キツネの皮で帽子を作り、頭にかぶるようになったという。

 ラクダ飼いや馬飼いが出てくるあたりが、ウイグル族らしいところです。

 

・しょうじきなおじいさんと親切なネズミ・・チリ(世界むかし話 中南米/訳=福井恵樹 絵=竹田鎮三郎/ほるぷ出版/1988年初版)

 ねこやきつねではなく ネズミです。他のものにくらべ後半部がありません。

 お店で働く、まずしいおじいさんはとても親切で心が広く、なけなしの食べ物でもこまっている人とわけあうほど。

 おじいさんのところに、ちびネズミが住んでいたが、おじいさんはいつも自分の食べるパンや、チーズ、肉をネズミと一緒に食べていました。おじいさんがとっておいたわずかの食べ物をネズミがほとんど食べてしまったこともありましたが「わしだって食べなくちゃならないんだよ。ほどほどに食べて、わしの分を残してくれ」といいました。

 ネズミはこんどはわたしがあなたの役にたちたいと、金持ちの王さまのところにいって、お金を計るブッシュルかごを貸してくれるよう頼みなさいと言う。お金をもっていないおじいさんは、ばかばかしいというが、ネズミは美しい小姓に姿をかえて王さまのところへおもむきます。

 お金を計るのにブッシュルかごがいるほどのお金持ちときいた王さまは、もしかすると自分よりお金持ちかもしれない。ブッシュルかごは貸してやるが、自分で返すに来るようにいう。

 かごをもってきたネズミに、おじいさんはびっくりするが、ネズミはおじいさんが王さまにブッシュルかごを返してくれだけでいいという。

 ぼろぼろの古ぼけた服をきたおじいさんが、川の橋をわたっているとき、ネズミが足元を走り抜けると、おじいさんはよろけて流れにころがり落ちてしまいます。
 ネズミは再び小姓に姿をかえ、王さまのところにいって、主人が川に落ちたのでもうしばらくおまちいただくよう話すが、王さまは、どうしても立派な紳士にあってみたいからと、上等な服と馬車を家来にもっていかせます。

 王さまの服を着たおじいさんはとても若く見え、金持ちの貴族のようでした。王さまはすっかりおじいさんを気に入って自分の一人娘と結婚するよういう。おじいさんが本当のことを言おうとしても、ネズミはそれをおしとどめ、やがて王さまの娘と結婚。
 
 いつの間にかネズミのことは忘れてしまったおじいさん。そこでネズミは死んだふりをします。
 台所ののこりかすが捨てられる場所に、ネズミをみたとき、おじいさんは声を上げて泣き出します。それを見たネズミは「わたしがあなたにしてあげたことを忘れていないかどうか、ためしてみたのです」といいます。そして天使となったネズミは、おじいさん、おきさきとその家族の守護天使になります。

 昔話で結婚というと若者とお姫さまというとりあわせが多いが、この話ではおじいさんと母のおきさきがなくなって、宮殿内のこまごましたことをとりしきっていた年かさの娘と結婚することになります。

 ここででてくるブッシェルかごは、35リットル入りという。 


10にんのせんにん

2023年07月05日 | 絵本(日本)

   10にんのせんにん/佐々木 マキ/フレーベル/館2019年

 

 山のてっぺんの”せんにん”が、ふもとからきこえてきた、「うーん、うーん、どうしたら いいんだろう」という声のする方向に おりてみると、郵便屋さんが、倒れていました。ぐあいわるそうにしながらも、「ゆうびんはいたつ しなければ・・」という郵便屋さんを てつだおうと、”せんにん”が、自分の髭を 何本か 引き抜いて、 ふうっ、いきを ふきかけると、そっくりさんが 9にんあらわれました。9にんの そっくりさんが、空を飛んだり、あるいたりして、あっというまに 配達を すませてしまうと、もとのひとりに。

 ”せんにん”が、元気になった郵便屋さんとわかれたあと、足元には 手紙が一つ残っていました。自分で届けることにした”せんにん”が、くさむらであったこどもに、案内されていってみると、そこは きつねの家。

 こどもが、「みて、みて、おかあちゃん、ほら ぼくだよ」というと、「まあ、このこったら、じょうずに ばけたねえ」と おかあさんが びっくり。こどもは もとのすがたになり、かえっていく”せんにん”を みおくりました。

 

 思いのこもった手紙が 届かないのは 大変なこと。みんなの気持ちに こたえてくれる”せんにん”でした。

 きつねの こどもが 「あしたの ばんごはん ハンバーグにしてね おねがい」と、おかあさんに 手紙で リクエストしていました。

 佐々木さんの透明感あふれる絵が 何とも言えません。


ぼく、どこから きたの?

2023年07月04日 | 絵本(外国)
   ぼく、どこから きたの?/サラ・オレアリー・文 ジュリー・モースダッド・絵 すぎもとえみ・訳/化学同人/2023年
 
 
 「ぼく、どこから きたの?」と、聞かれて、四苦八苦するパパとママ。
 
 性教育の絵本かと思いきや、パパやママの とんちんかんな 答えが えんえんと 続くので あれ!
 
 
 かぜをひいたコウノトリのかわりに カラスが はこんできたんじゃ なかったって
 
 はこんできたのは ようせいさん
 
 かごにはいって かわを ながれてきた
 
 あるひ、ゆうびんで、とどいたのよ
 
 もりを さんぽしていたら、ワシのすの なかに あなたが いたの
 
 
 
 「パパとママは、おまえの ゆめを みたんだ。そして、そのゆめが げんじつに なったんだよ」というラストに、納得できるか心配。読んであげる年齢にも、よるのかな?
 
 期待していただけに ちょっと 裏切られた感じ。

てんぐと かっぱと かみなりどん

2023年07月03日 | 紙芝居

    てんぐと かっぱと かみなりどん/作・かこさとし 画・二俣英五郎/童心社/1975年(16画面)

 

 すみやきとうべえさんが、えっちら おっちらさと山にのぼっていくと、ぬまのかっぱと、杉の木のうえのてんぐと、雲のうえのかみなりから、とんでもないことを いわれました。

 かっぱどんは、鼻をたらしている子のおしりを 塩をつけて食べるのが大好きだ。

 てんぐどんは、なきむしの 子どものほっぺをたを みそづけにして 食うのが だいすきじゃ。

 かみなりどんは、おなかをだしてねる子どもの おひそを たべるのが だいすきじゃ。


 すみやきとうべえさんが、しょんぼり いえにかえり 「おまえの おしりと ほっぺたと おひそを もってこい」といわれたことを話すと、とうへいちゃんは 「なんーだ、そんなことか。わけないよ、おとっちゃん」と、つぎの日、げんきに 山へのぼっていきました。

 とうへいちゃん、三人同時に ぶつかるように しむけると ゴロゴロ ガラガラ ドスン ピシャン ガチャン グチャン ボッチャーン と おおきなおと。かっぱどんも、てんぐどんも、かみなりどんも、なきべそを かいて にげていきました。

 

 この紙芝居、昔話風の展開で、かこさんが画を描かなかったのはわかるような気がしました。

 鼻たれ、泣き虫の どこか頼りないとうへいちゃんが、カッパ、天狗、かみなりを 同時にやっつけるギャップが 楽しい紙芝居でした。


たいそうするよ -1,2,3, はい!

2023年07月02日 | 絵本(日本)

   たいそうするよ -1,2,3, はい!ー/高畠純/光村教育図書/2021年

 

 パンダ、イヌ、ゴリラ、コアラ、レッサーパンダ、ダチョウ、キリン、ゾウ、ネズミ、ウシなど こどもたちにおなじみの動物たちがつぎつぎにでてきて、「1,2,3,はい! 」と一緒に体操です。

 手をあげて、おろして

 からだの よこを のばして のばして

 まげて まげて 

 しゃがんで のびあがって

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 ここまでは なんの変哲もないのですが ここから

(前のページにもどり もういちど)と、自然に体を動かしてみようというのが みそ。

 体を動かしたくなりそうな絵本。

 ゼッケン?に動物名を英語で表示してあるのも今風。


わらしべ童子‥鹿児島

2023年07月01日 | 昔話(九州・沖縄)

        鹿児島のむかし話/鹿児島のむかし話研究会編/日本標準/1975年

 

 一本の藁で幸せになる話。

 どんな順番で?

 一本の藁が、どんぶり一杯の味噌になり、味噌が小刀になり、味噌が船いっぱいの米になる。

 この地方に、へんな病気がはやり、父親もなくなった男の子。父親との二人暮らしで、父親が残してくれたのは一本の藁だけ。

 村から村へ旅して、農家によって、みそつきを見せてもらっていると、いいにおいがプンプンしていた。「みそをかめにいれて、ふたをくくるときには、わらがいりますね」と、藁をあげると、そのお礼に、どんぶり一杯の味噌をもらいました。

 しばらく歩いていくと、鍛冶屋のおじいさんが、お茶を飲んでいて、味噌でもなめてくださいと、味噌をあげると、鍛冶屋のおじいさんは、お礼として、ぴかぴか光る小刀を、男の子にわたしました。

 海岸を歩いていたら、人くいふかが、目玉をぎょろりとさせて、男の子を呑み込もうとします。男の子は、小刀をとりだし、人くいふかに きりつけ いさましく たたかいました。それを見ていた大和船の船主は、ふかをやっつけた小刀を、たからものにしたいと、船に積んでいる米と、小刀をかえました。

 それからあと、男の子は「わらしべ童子」と、よばれ、みんなにかわいがられて暮らしたそうだ。

 

 わらしべ長者の話は多いが、ここにでてくる童子は、いくつぐらいの年齢でしょうか。長者でなく、かわいがられて暮らすというのも ほっとする。