子どもに語るロシアの昔話/伊東一郎:訳・再話 茨木啓子・再話/こぐま社/2007年
昔話を聞いている子どもは、お話しの世界をイメージしているといいますが、「おなかの皮が ぼろぼろにむけている」牝ヤギのイメージはどうでしょうか。
あるお百姓が、おなかが半分なく、あとの半分も、皮がぼろぼろにむけている牝ヤギをみつけ、かわいそうにおもい、納屋にねかせてやりました。ところがこの牝ヤギ、お百姓とウサギがでかけると、家に入り込んで、中からカギをかけてしまいました。
かえってきたウサギが、家に帰ってきて、入り口をあけようとしても、戸があきません。「中にいるのは、だれ?」と、ウサギが聞くと、「あたしさ、半分腹なし、半分皮むけの牝ヤギさ。すぐに出て行って、おまえをの腹をけとばしてやる!」と、大声で答えたので、ウサギはびっくりして逃げ出し、道ばたで泣いていました。そこへオオカミがやってきて、おいだしてやろうと、戸口でどなりますが、牝ヤギが「あたしさ、半分腹なし、半分皮むけの牝ヤギさ。すぐに出て行って、おまえをの腹をけとばしてやる!」と大声を出すと、オオカミがあわてて逃げ出してしまいます。
ウサギの話を聞いたオンドリも、「オンドリがきたぞ! 肩にサーベルをかついで、牝ヤギの心臓をつきさし、頭を切り落とそうと、オンドリがきたぞ!」と、大声を出しますが、牝ヤギに、脅されて、逃げ出してしまいます。
次はミツバチ。牝ヤギに脅かされると、ミツバチは怒って、家のまわりをブンブンとびはじめ、壁に小さな穴を見つけ、そこから中へ入り込むと、牝ヤギのおなかを、いきなりチクンと、さしました。牝ヤギは、びっくりぎょうてん。そのまま逃げて行ってしまいました。
ウサギは、無事家に入って、思う存分食べたり飲んだり。そしておなかがいっぱいになると、ゴロンと、横になって、寝てしまいました。