オオカミと石のスープ/アナイス・ヴォージュラード:作絵 平岡敦・訳/徳間書店/2001年
昔話の「石のスープ」「くぎのスープ」の動物版とおもったら、どうやら騙されたのは?
ある冬の夜、年老いたオオカミが どうぶつ村の入り口にあっためんどりの家にやってきました。「こわがらないで、めんどりさん。わたしはもうとしよりで、歯だっていっぽんしか、のこっていないんです。暖炉で、すこしあたたまらせてくださいよ。そうしたら石のスープを作ってあげましょう。」
石のスープっていうのを、のんでみたいとおもっためんどりは、ドアをあけることにしました。
オオカミが、なべのなかに石をいれ、水をくわえようとすると、めんどりは、「あたしはいつも、スープには、セロリをすこしいれるのよ」というと、「なるほど、セロリをいれれば、おいしくなりそうだ」とオオカミ。
そのとき、めんどりの家に、オオカミが入っていくのを見たぶたが心配してやってきました。石のスープのことを聞いたぶたは、「ズッキーニも、いれたらどうかな?」というと、「まあ、いれてみましょうか」と、オオカミ。
つぎに心配してやってきたのは、あひるとうま。あひるは、「ぼくはまえに、エジプトで、石のスープをのんだことがあるけれど、それにはねぎもはいっていたぞ」。めんどりがたずねると、「すきにすればいいさ」と、オオカミ。
めんどりを心配した動物たちが、次々とやってきて、カブやキャベツもはいります。
それから、スープが出来上がるまで、みんなでだんろをかこんで、ワインを飲みながらおしゃべり。ぶたが、「めんどりさんが、だまされて、スープにされちゃうのかとおもったよ」というと、オオカミは、なべをかきまわして、「どうやら、スープができたようだ」というだけ。
ばんごはんは夜までつづき、みんなは、さんどもおかわり。一段落すると、オオカミは、とがったナイフで、石をつついて、「ああ、この石はまだ、にえていないな、だったら、あしたの夕食のために、もってかえらせてもらいますよ」と、あひるが 「またきてくれますよね」というのに、返事をしませんでした。
つぎの日、むかったのは七面鳥の家でした。
昔話では、スープに入れるものを、言葉巧みに誘導していきますが、ここでは、動物たちがみずからつぎつぎにもってきます。思いがけない邪魔者があらわれオオカミのたくらみがとん挫したのでしょうか。なんとも面白くなさそうなオオカミ、なにを考えていたのか?
どうぶつ村のチームワーク(おせっかい?)が、めんどりの危機を救うことになったのは、間違いなさそう。ナイフがでてきて、七面鳥?の家のドアをたたくラストは、意味深です。