音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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連載7《op.110》 「うた」を追う

2006年09月13日 | 《31番op.110》
《ソナタ31番op.110》I楽章の5小節目からは、
まさに朗々と「うた」が歌われるようです。


たとえば左手の伴奏は、
典型的な歌曲伴奏のかたちだそうでして、メロディーそのものはもちろん、こうした伴奏形からも、この部分が「歌曲的」であることを窺い知ることができそうです。



さらには、
この伴奏形はIII楽章の9小節目から始まる
「Klagender Gesang(嘆きの歌)」と類似していると
捉えることも不可能ではありません。

ちなみに、
この「Klagender Gesang」という書き込みは、作曲者である
ベートーヴェンその人の指示であって、これは非常に興味深く
大きな意味を占めるよう感じられます。



ベートーヴェンの嘆き・・・
いったい、何に対する嘆きをえがいたのでしょう。

それに対して、
I楽章の純朴な美しさを魅せるうたは、どういう対を成すのでしょう。


いや、
このI楽章の「うた」とIII楽章のベートーヴェン直々の
お達しである「嘆きの歌」とを無理やり擦り付け、
両者に相互関係を持たせる必要はないのかもしれない、
それにしても、
このI楽章の「うた」は素朴で、美しく、
何かを・・・・何かを意味しているように思えてなりません。


全ては、
聴く人の、弾く人の(あるいは作曲者ベートーヴェン自身
にとっても!?)、各自それぞれにとっての個人的な内面世界を大事に、
それぞれの感じるがままを音楽に照らし合わせ、そこで何かが
見えてくる姿があるのなら、それを真実の音楽の姿と受け取って
いいのではないでしょうか。


それは、個人的でありながらも普遍的な境地


我々全ての人間に、
こうした音楽を愉しむ権利があるのだと強く思うのです。


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