音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆丸山眞男氏の言葉② ~ クラシック音楽の根源は『調性(トナリティー)』

2008年11月04日 | 音楽(一般)
最近の僕はちょっと「丸山眞男」に
はまっているのかもしれません。

これが一過性のものでなく、
この大きな人の言葉が
しっかりと自身の肥やしとなって
生き続けてくれるとよいのですが・・・

前回に引き続き、またまた
面白い文章がありますので、
ご紹介させていただきたく思います。


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ヨーロッパのクラシック音楽は、
少なくとも数百年に及ぶ生命力をもった芸術です。

そして、
生命力の根源は『調性(トナリティー)』
―――調性の発見だと思う。

調性を抜きにしてソナタ形式は考えられないし、
交響曲とか室内楽曲とかいう音楽のジャンルも考えられない。

地球上の音楽で、調性が確立しているのは
ヨーロッパのクラシック音楽だけです。

だからその他の地域の音楽には
ソナタもないし交響曲もない。
『音楽形式』として成立できない。

『調性』が心臓部みたいなもんで、
それを音楽のキーワードに据えたからこそ
ヨーロッパの音楽は今日の盛況を迎えたわけです。

西欧諸国の政治的・経済的覇権(ヘゲモニー)が主因だと言う人もいますが、
音楽に内在する生命力を見落とした議論です。

だから、調性の扱い方に焦点を絞って追っていっただけでも、
いろんなことが分かりますよ。

      (中野雄著『丸山眞男 音楽の対話』より)
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いろんなことが分かるらしいです。


『調性(トナリティー)』

例えば、調性の持つ性格というものがありまして、それは
●変ホ長調Es-Durは英雄的な雰囲気(ベートーヴェンの
《交響曲3番“英雄”》がその代表格といえましょうか)、
●ハ短調c-mollの力強く悲劇的な予感(ベートーヴェン
《交響曲5番“運命”》や《ピアノソナタ“悲愴”》そして
最後の《ピアノソナタ第32番》、モーツァルトにもこの調性の
《ピアノソナタ K.457》などがあります)
●ニ短調d-mollの持つ、また異なる悲劇性(ベートーヴェン
《交響曲9番》や《ピアノソナタ“テンペスト”》、モーツァルトにもこの調性の
《交響曲》や《ピアノ協奏曲》があります)

などなど・・・挙げればきりがありません。

さらには、クラシック音楽においては
ひとつの調性を主調としながら、
音楽は「転調」を繰り返し、さまざまな調性へと変遷してゆきます。
これが、前回の記事でもご紹介いたしました『形式(フォルム)』との
大きな関連性を持っているものでもあります。


西洋クラシック音楽を愉しむコツのひとつとして、
この『調性』というキーワードは、
大きな位置を占めるものなのかもしれません。


P.S.
今、ふと思ったのですが、
この『調性』を愉しむにあたっての必要な能力として、
世間でしきりに騒がれている「絶対音感」という能力は、
少なからず意味あるものとなるような気が、今、初めてしました。

絶対音感を持っていて、なおかつ、
その音楽の有している調性に対する感性を受け止め・愉しめる感性が
養われているのであれば、こんなにも
深く・実直にクラシック音楽を愉しめる方法はないのでは、
と思われるのです。

とはいえ、
絶対音感が無いからといって、
音楽を愉しむことができないということは
決してないと思います。
音楽の愉しみ方は色々あります。
「絶対音感」があることは、あくまでも
音楽を愉しむにあたっての「ひとつの要素」である
という程度に、捉えておくのが無難なのかもしれません。



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