ベートーヴェン《ピアノソナタ31番op.110》
I楽章の冒頭を見てみますと、冒頭に4小節を
「第1テーマの始まり」とすることができ(再現部がこのメロディーから
始まっていることから、これが「第1テーマ」であることが
証明されるはずです)続く5小節目からは、
「第1テーマの後半」と考えることもできましょうか。
☆提示部におけるそれぞれのメロディーやらモチーフやらを
「再現部と照らし合わせること」で、その存在意義を把握しよう
という考え方から、解釈を進めております。
12小節目からの「p leggiermente」の部分は、32分音符が
まるで天使が飛び回っているかのように美しく走り回る箇所です。
しかし、
これを「第2テーマ」と考えるにはまだ早いようでして、
なぜなら、再現部においては、この部分の調性は、第1楽章As-Dur
という原調で現れることが無いからです。よってこの12小節からは
「推移部」と捉えるのが妥当でしょうか。
☆再現部において、第2テーマがその楽章の原調で現れるというのは
「ソナタ形式」の基本的な特徴のひとつです。
それでは、肝心の「第2テーマ」がどこから始まるかを考えてみますと、
20小節目「p molto legato」という箇所からがそれと解釈できましょうか。
なぜなら、
●再現部にて、原調As-Durが現れる箇所を探してみますと、
(これが第2テーマであろうという前提を手掛かりにして)
再現部において第1テーマ以降にAs-Durが現れるのは、
79小節目「a tempo p espressivo」という箇所であることが分かります。
そして、●この部分(提示部)は、
ソナタ形式の「第2テーマが原調の属調として現れる」特徴に照らし合わせ、
ようするにAs-Durが原調のこのI楽章において、
この20小節からがEs-Durという属調となっていることからも、
ここが「第2テーマ」であることが証明されましょう。
◇◆◇◆
というわけで、
今回、ここにおいてはっきりとさせたかった主旨は、
この《op.110》I楽章は、
前作《op.109》のI楽章のような過密なソナタ形式で書かれているわけ
ではなく、第1テーマ・第2テーマの間に充実した「推移部」を擁する
「より伝統的なソナタ形式に則って書かれている音楽」である、
ということを書きたかったのでした。
この「ソナタ形式」に盛り込まれた《op.110》の世界は、我々を
どんな境地へといざなってくれるのでしょうか。
P.S. 余談ですが、
ベートーヴェン後期の《30番op.109》《31番op.110》《32番op.111》は
「三つ後期ソナタ」としてひとまとめに考えられることが多いと
思うのですが、注意すべき面白い点は、
●《op.110》と《op.111》は同時期(1821年末~1822)に書かれた
「♭系」の音楽であるのに対して、
●《op.109》は、単独で1820年に完成を見ており、
「♯系」の音楽であります。
これは私の個人的な想像でしかありませんが、
ソナタ形式の凝縮の挑戦でもあったかもしれない《op.109》を
書き終わって、一年ほどの時間をあけて再び気持ち新たに
ベートーヴェンは、《op.110》《op.111》という二曲の作曲に
取り掛かったのかなと・・・・思いを馳せられなくもありません。
I楽章の冒頭を見てみますと、冒頭に4小節を
「第1テーマの始まり」とすることができ(再現部がこのメロディーから
始まっていることから、これが「第1テーマ」であることが
証明されるはずです)続く5小節目からは、
「第1テーマの後半」と考えることもできましょうか。
☆提示部におけるそれぞれのメロディーやらモチーフやらを
「再現部と照らし合わせること」で、その存在意義を把握しよう
という考え方から、解釈を進めております。
12小節目からの「p leggiermente」の部分は、32分音符が
まるで天使が飛び回っているかのように美しく走り回る箇所です。
しかし、
これを「第2テーマ」と考えるにはまだ早いようでして、
なぜなら、再現部においては、この部分の調性は、第1楽章As-Dur
という原調で現れることが無いからです。よってこの12小節からは
「推移部」と捉えるのが妥当でしょうか。
☆再現部において、第2テーマがその楽章の原調で現れるというのは
「ソナタ形式」の基本的な特徴のひとつです。
それでは、肝心の「第2テーマ」がどこから始まるかを考えてみますと、
20小節目「p molto legato」という箇所からがそれと解釈できましょうか。
なぜなら、
●再現部にて、原調As-Durが現れる箇所を探してみますと、
(これが第2テーマであろうという前提を手掛かりにして)
再現部において第1テーマ以降にAs-Durが現れるのは、
79小節目「a tempo p espressivo」という箇所であることが分かります。
そして、●この部分(提示部)は、
ソナタ形式の「第2テーマが原調の属調として現れる」特徴に照らし合わせ、
ようするにAs-Durが原調のこのI楽章において、
この20小節からがEs-Durという属調となっていることからも、
ここが「第2テーマ」であることが証明されましょう。
◇◆◇◆
というわけで、
今回、ここにおいてはっきりとさせたかった主旨は、
この《op.110》I楽章は、
前作《op.109》のI楽章のような過密なソナタ形式で書かれているわけ
ではなく、第1テーマ・第2テーマの間に充実した「推移部」を擁する
「より伝統的なソナタ形式に則って書かれている音楽」である、
ということを書きたかったのでした。
この「ソナタ形式」に盛り込まれた《op.110》の世界は、我々を
どんな境地へといざなってくれるのでしょうか。
P.S. 余談ですが、
ベートーヴェン後期の《30番op.109》《31番op.110》《32番op.111》は
「三つ後期ソナタ」としてひとまとめに考えられることが多いと
思うのですが、注意すべき面白い点は、
●《op.110》と《op.111》は同時期(1821年末~1822)に書かれた
「♭系」の音楽であるのに対して、
●《op.109》は、単独で1820年に完成を見ており、
「♯系」の音楽であります。
これは私の個人的な想像でしかありませんが、
ソナタ形式の凝縮の挑戦でもあったかもしれない《op.109》を
書き終わって、一年ほどの時間をあけて再び気持ち新たに
ベートーヴェンは、《op.110》《op.111》という二曲の作曲に
取り掛かったのかなと・・・・思いを馳せられなくもありません。