音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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B.《ソナタ12番》終楽章は「恋の大逃走劇」!?

2006年06月14日 | 《12番op.26“葬送”》
先日の日記で、ベートーヴェン《ピアノソナタ12番op.26“葬送”》の
終楽章(第4楽章)が、ころころと走り回るような二人の人間を
描いているようだと書きました。
そのアイディアは、深く自分の中に定着しつつあると思って、
今日も書き進めてみようかと、試みます。


この4楽章、
二人の人間が走り回ったり、おしゃべりをしているとして、
じゃあ、この二人とは誰と誰なのでしょう??

ピアノの音域的に考えてみますと、
冒頭の右手の「ころころ」は「ソプラノ」、
すなわち女声と考えることができます。それに合わさって、
両手が一緒になる次の「ころころ」は、右手の「ソプラノ(女声)」と
左手の「テノール(かバリトン?)」を男声と考えることができます。

ようするには、男女を表しているということになりましょうか。


では、一体どんな男女なのか??


前の3楽章が、
「MARCIA FUNEBRE sulla morte d’un Eroe」
(葬送行進曲 ある英雄の死を偲んで)
という、なんとも意味ありげな表題が、ベートーヴェン自身によって
書かれています。この「英雄」が、ベートーヴェン自身を指している
のではないかという私見は、先日の日記で書いたとおりです。

ベートーヴェンは、その生涯、結婚することがありませんでしたが、
しかし、それは「結婚したくなかった」のではなく「結婚できなかった」
というのが真実のようです。
生徒となった貴族の多くの女性と、恋仲になることもあり、しかし
身分の差、ベートーヴェンの異常気質!?など、もろもろの事情で、
それが成熟することはなく・・・。

というわけで、ベートーヴェンにとって、
「男女」というテーマが彼の脳裏にあったことを疑うことはできません。
そういえば、ベートーヴェン唯一のオペラ《フィデリオ》も、
「男女」、とりわけ「夫婦」の愛と救済がテーマとなっているほどです。

「唯一」のオペラのテーマが「男女」という事実から、
ベートーヴェンにとってのこのテーマの重要度がいかに高かったか!?
を裏付けることになりましょうか。


この《葬送行進曲》が、先日の日記に書いたよう、
実は「うそ」の葬式を描いたものと考え、 世間の目を掻い潜って、
この「英雄」と誰かが結ばれるのだとしたら・・

次の4楽章、
「偽の葬送」を済ませた後で、いよいよこの男女が、自分達の未来
つかむべく走り出す。世間から離れて、二人だけの新しい世界へ!?

まさか・・・・ベートーヴェンには「駆け落ち願望」でもあったのでしょうか(爆)


しかも、この4楽章、登場人物は二人の男女だけではなさそうです。
世間の目を掻い潜ることは完全にできず、人々から見つかってしまったのではないかと、考えられるのです。

ときおり「sf」で「わっ!!」と鳴る和音が曲中、所々現れます。
(第30小節、32小節、さらに
130小節、132小節、134小節、135小節から5回連続!!)

これって・・・・
駆け落ちてゆく二人を見つけた人々が
「あっ!!」「いたぞ!!」「逃がすな!!」「つかまえろ!!」
みたいに叫んでいるようでは・・・・!?

中間部のハ短調も、「どかどか」と迫り来る左手の伴奏音型に支えられて、なんだか不吉な予感が音楽から感じられます。もしかすると、人々が
いよいよ迫り迫ってきて、男女は追いつかれてしまうのでしょうか・・・!?


続きは、実際に音楽をお聴きになって
この物語のエンディングを想像されることをお勧めいたします。
(というか、自分自身、これがハッピーエンドなのか、
バッドエンドなのか、あるいは夢うつつの物語だったのか、
日によって感じ方がことなるからです)


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