音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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B.《ソナタ12番》ベートーヴェンは本当に死んでしまったのか!?

2006年06月14日 | 《12番op.26“葬送”》
ベートーヴェン《ピアノソナタ12番op.26》の第3楽章が「葬送行進曲」であり、それが「作曲者本人の死」であるかのように思われることを、
前回の日記で書きました。


(ちなみに、
葬送のリズム(「付点8部音符+16分音符」のリズム)は、
頭の片隅に置いておくと、実に多くの西洋クラシックの音楽を
楽しんだり理解するのに、大いに役立つワンポイントと思います。
●ピアノの詩人ショパンの《葬送行進曲》はもちろん、
●ベートーヴェンの《ピアノソナタ14番 op.27-2“月光”》
1楽章のメロディーにも、この葬送のリズムが見られます。
●後期ロマン派マーラーの交響曲でもそうでしょうか。《巨人》の死や、
失恋を嘆く《さすらう若人の歌》も、葬送のリズムが垣間見れます。)


このベートーヴェン《ピアノソナタ12番》においても、もちろん!
葬送のリズムが重々しい和音に奏でられ、時に力強く(ff)、
この英雄の死を悔やむよう!?です。
中間部は、小太鼓が打ち鳴らされ、トランペットの合奏が
高々と鳴り響きそれに答えるよう。
再び冒頭の葬送行進曲が繰り返され(再現部)、Codaに入り、
「As(変イ音)」のOrgel Punkt(オルゲル・プンクト)により
低音にこの音が常に保持され、
なんだか不思議な和声感をかもしだして、
「ドミナント」なのか「トニカ」なのか曖昧なまま、長調に終わります。


・・・うす雲りの中からうっすらと光が差すかのよう・・・・


で、
次の4楽章(終楽章)。
「Allegro」の快活なTempoに乗って、右手の16分音符がころころと転がるように連符を奏で、左手も一緒になってころころ走り回る・・・。
ころころと転がる音型は、ピアニスティックな技術的ムズカシさが満載
です。侮りがたいところです。

ころころ走り回る音型に混じって、八分音符のなめらかな歌が左手で
奏でられ、それに右手が答えて、また左手、右手、と・・・・・

そう、
まるで二人がおしゃべりをしているようです。
そういう意味で多少、バッハの「Invention(インヴェンション)」的
であると言ってもいいかもしれません。


・・・おいおい、前の楽章の重々しい葬送は、一体なんだったんだ!?


と言いたくなるようなこの終楽章・・・・
冗談のような、戯言のようなこの二人の「ころころ」と「会話」、
前の楽章の「葬送」からのあまりのギャップに考えられることは、


あの「葬送」はフェイクだったのか!?・・・・と。
ウソの葬送行進曲!?
公には、英雄は死んだと思わせておいて、実は生きている!?


仮に想像するなら、
愛することを禁じられた二人の男女が、偽装の葬式をとり行い、
世の中の目をかいくぐって、ついに自由の身となって二人結ばれ、
喜びをあらわしているような終楽章・・・とも考えられるでしょうか。
そうなると・・・まるでロミオとジュリエット!?

なんて考えてみると、一味違ったこの《ソナタ12番》の世界を
楽しめるかもしれない、と考えたのでありました。


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