dolce(ドルチェ)
という表示記号は、
クラシック音楽の楽譜でよく出てくるとものです。
イタリア語のこの言葉の意味は、
「甘い、甘美な、優しい、柔らかい」
といった意味を持つようです。
一見、この「dolce」という指示が楽譜にありますと、
甘く、優しく演奏しなければならない、と
つい音量を「弱く」演奏したくなるかもしれませんが、
そこには大きな落とし穴があるというのです。
そこで、この「dolce」の奏法・解釈・感性に関する
面白い事例があることを、ここにご紹介したく思います。
――――――――――――――――――――
ブラームスと同時代人のハンス・リヒターという指揮者が
ブラームスのある《交響曲》をオーケストラとともに練習していた際、
指揮者は「ここにはdolceという指示があるから、
オケのみなさん、どうぞ静かに演奏して下さい」
と指示をだしたところ、
その練習に立ち会っていた当の作曲家本人ブラームスが口を挟み、
「どうか、静かには演奏しないで下さい。
私がdolceと書いている意味は、espressivo(表情豊かに)
ということを意図しているのです。」
これはまぎれもないブラームス自身の言葉と伝わっており、
師匠クラウス・シルデ先生がお得意としているエピソードのひとつです。
★譜例はクリックで拡大します
Brahms 《Intermezzo Es-Dur op.117-1》
Brahms 《Intermezzo b-moll op.117-2》
Brahms 《Intermezzo A-Dur op.118-2》
なんと、「dolce」は静かに演奏してはならないというのです!!
これに補足をするならば、
ドイツ音楽における「dolce」は「espressivo」であると解釈してゆくと
様々なドイツ音楽のレパートリーが、しっくり、まさに
その音楽に見合った表情をかもし出すことに成功するでしょう。
(これはフランス人のベートーヴェン弾き、
エリック・ハイドシェック先生が
マスターコースにおいて言及したものでもあります)
例えば、ベートーヴェンの音楽には
この解釈はぴたり当てはまります。
★譜例はクリックで拡大します
Beethoven 《Sonate Nr.21 C-Dur op.53“ワルトシュタイン”》第2テーマ
Beethoven 《Sonate Nr.23 f-moll op.57“熱情”》II楽章
Beethoven 《Sonate Nr.30 E-Dur op.109》I楽章
考えてみれば、本末転倒のこの例・・・
だって、ブラームスはベートーヴェンを強く意識し
ベートーヴェンから大いに音楽を勉強し受け継いでいる
音楽家ですから。
補足の通り、
この「dolce=espressivo」が
すべてのクラシック音楽のレパートリーに通用するものでは
なさそうです。「ドイツ音楽において」と前提を置いてみると
誤解に陥らないで済むのかもしれません。
いやそれにしても、
甘美なという意味をも持つ「dolce」という表現は
決して「弱弱しい」ものではないことは
なんとなく分かる気がしませんか?
様々な文化における「dolce」という感覚の差異、
または普遍的な共通性をここに見出すのか、
試行錯誤してみる価値は大いにありそうです。
…………………………………………………………………
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この記事に関するコメントやご連絡等ございましたら、
以下のアドレスまでメッセージをお送り下さい。
PianistSegawaGen@aol.com
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クラシック音楽の楽譜でよく出てくるとものです。
イタリア語のこの言葉の意味は、
「甘い、甘美な、優しい、柔らかい」
といった意味を持つようです。
一見、この「dolce」という指示が楽譜にありますと、
甘く、優しく演奏しなければならない、と
つい音量を「弱く」演奏したくなるかもしれませんが、
そこには大きな落とし穴があるというのです。
そこで、この「dolce」の奏法・解釈・感性に関する
面白い事例があることを、ここにご紹介したく思います。
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ブラームスのある《交響曲》をオーケストラとともに練習していた際、
指揮者は「ここにはdolceという指示があるから、
オケのみなさん、どうぞ静かに演奏して下さい」
と指示をだしたところ、
その練習に立ち会っていた当の作曲家本人ブラームスが口を挟み、
「どうか、静かには演奏しないで下さい。
私がdolceと書いている意味は、espressivo(表情豊かに)
ということを意図しているのです。」
これはまぎれもないブラームス自身の言葉と伝わっており、
師匠クラウス・シルデ先生がお得意としているエピソードのひとつです。
★譜例はクリックで拡大します
Brahms 《Intermezzo Es-Dur op.117-1》
Brahms 《Intermezzo b-moll op.117-2》
Brahms 《Intermezzo A-Dur op.118-2》
なんと、「dolce」は静かに演奏してはならないというのです!!
これに補足をするならば、
ドイツ音楽における「dolce」は「espressivo」であると解釈してゆくと
様々なドイツ音楽のレパートリーが、しっくり、まさに
その音楽に見合った表情をかもし出すことに成功するでしょう。
(これはフランス人のベートーヴェン弾き、
エリック・ハイドシェック先生が
マスターコースにおいて言及したものでもあります)
例えば、ベートーヴェンの音楽には
この解釈はぴたり当てはまります。
★譜例はクリックで拡大します
Beethoven 《Sonate Nr.21 C-Dur op.53“ワルトシュタイン”》第2テーマ
Beethoven 《Sonate Nr.23 f-moll op.57“熱情”》II楽章
Beethoven 《Sonate Nr.30 E-Dur op.109》I楽章
考えてみれば、本末転倒のこの例・・・
だって、ブラームスはベートーヴェンを強く意識し
ベートーヴェンから大いに音楽を勉強し受け継いでいる
音楽家ですから。
補足の通り、
この「dolce=espressivo」が
すべてのクラシック音楽のレパートリーに通用するものでは
なさそうです。「ドイツ音楽において」と前提を置いてみると
誤解に陥らないで済むのかもしれません。
いやそれにしても、
甘美なという意味をも持つ「dolce」という表現は
決して「弱弱しい」ものではないことは
なんとなく分かる気がしませんか?
様々な文化における「dolce」という感覚の差異、
または普遍的な共通性をここに見出すのか、
試行錯誤してみる価値は大いにありそうです。
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