音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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Beethoven 《ピアノソナタ30番 ト長調)》3楽章 Variation(変奏曲)を蘊蓄する

2006年04月09日 | 《30番op.109》
「これはバロック時代からのゆっくりした舞踏曲“Saraband”だ」と師匠は言いました。
実際、2小節目の2拍目に長い二分音符があり、これはサラバンドの特徴と一致しています。
●テンポは、ゆるやかに、しかし遅すぎず。
Beethovenの指示は「Andante」(“Andante molto”ではないらしい)
「四分音符=60」が頃合と言われます。ようするに、
時計の秒針と同じ速度ですね!?とても心地の良いテンポということになります。

テーマが「molto cantabile ed espressivo、mezza voce」で歌われる。
●この「mezza voce」って、曲者じゃありませんか!?
大音楽家・大作曲家にとっての「mezza voce(中庸に)」、あるいは「tempo giusto(ちょうどいいテンポで)」って、それ以上でもそれ以下でもない、「ちょうどいい頃合」が求められている・・・
甘すぎず、辛すぎず、ちょうどいい塩梅、っていうのでしょうか。
なんでもなさそうなことで、実践するのが難しい・・・人生において、こういうこと、色々ありますよね!? 芸術の難しさにして、面白いところです。

このテーマ、曲の一番最後にほとんど同じ形で再び現れて、音楽が幕を閉じる。
●J.S.Bachの《ゴールドベルク変奏曲》からの影響と言われていますよね。《G.》では、冒頭の《Aria》が計30回も変奏されて(約1時間20分かかる長丁場)、そして再び冒頭の美しいアリアが戻ってきて終わる・・・感動的です。
(これだけに限らず、この《op.109》と《G.》の関連はとても濃いようです。)
しかし、
●《op.109》において、この戻ってきたテーマは「冒頭と全く同じように演奏されてはならない」と師匠は言いました。
楽譜を見てみると、この最後のテーマは、その前の長い長い「tr.(トリル)」に満ちた変奏からゆっくりと舞い降りて「pp」まで静かになり(その間、ペダルは踏みっぱなし!音の洪水が響きの麻薬となって聴く者を別世界へ誘う!?)
そして戻ってきたテーマは「cantabile」・・・冒頭の「molto cantabile」とは違うのです。
六つの変奏を経て戻ってきたこの美しいテーマは、以前のようには歌い込まない、
静かさを伴って、もう一度歌われる、そして静かに閉じる・・・

この楽章、どんな物語なのでしょう!?
戻ってきたテーマは、
別の世界へ行ってしまったものなのか、
それとも、夢から醒めたのか、
それとも、過去を思い出しているのか、
それとも、向こうの世界へ行きたい願望がかなわなかったのか・・・




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