フランツ・リスト、作曲家ご本人が、
「黒鍵に1指(親指)を使うよう」
指使いの数字を書き込んでいるところが気になりました。
(Henle版等の斜め字の指使い数字は、作曲家本人が書いたものであることを表しています。全音版では逆!?斜め字は、校訂者によるもの!?)
ピアノ演奏において、
黒鍵に1指を使うことは、基本的には
あまりしないほうがよいこと(禁止とする人もいる!?)
という常識があります。
これはこれで、理にかなって大事。
なぜなら、親指は他の指達に比べて短いから、
鍵盤の奥側・蓋に近い側にある黒鍵を
短い親指で弾いてしまうと、
他の指達は長いゆえに、親指よりもさらに奥の
蓋の近くという弾き辛い場所で弾くことになってしまうから・・・
鍵盤の大天才・大名人・極めし人!?
(↑今だに世界一!?と言われることもある)
フランツ・リストが、
このことを知らないわけがない!(笑)
そのリストが、
黒鍵を1指で弾くよう、
書いているのです。
しかも、ちょっと手を拡げれば
5321(ファ♯レファ♯ラ)
という指使いで、ポジション最後の白鍵1指を3指でまたいで、
アルペジオがキレイに合理的・身体物理的につながる
常識的な指使いが、あり得るのです。
さらには!!
リストの書いた指使いは、
521・5321
と、なんと「1指の後に5指で飛ぶ」という
物理的な指の連結が不可能なやり方・・・
(連結を拒絶している!?)
(ペダルを使っているから、音は切れませんが)
これも、基本的なピアノ演奏からは
常識はずれな指使いです!!
リストはしかし、ここではそれを望んだ・・・
神々しい水の音楽《エステ荘の噴水》の
クライマックスへと向かう直前の、静かなところ、
敢えて、521・5321、という
黒鍵に1指を使い、
1指から5指に飛ぶ常識はずれなポジション移動をさせて、
そう・・・まさに「常識はずれ」の異世界(神懸かり的!?)を表現している!?
なんていうふうにも思えました。
(ペダルを使って、指では連結せずポジションが離れていることで、軽やかさが出て来る感じもあります。浮遊感!?無重力!?)
これぞ、鍵盤演奏芸術!?!?
♪
追記:
画像の譜面に「Ravel」という書き込みをしているのは、
ラヴェルの《左手のためのピアノ協奏曲》にて、
1指を飛び越えて5指から
次のポジションへと移動するパターンが
「作者指定の指使い」として楽譜に沢山あったことが
連想されたことを意味しています。
ラヴェルは、リストのこのようなピアノ演奏テクニックを、踏襲した!?
と、思えたのです。
ラヴェルとリストは、近い!?
ラヴェル作曲《水の戯れ》は、
リスト作曲《エステ荘の噴水》の影響下に
書かれたものである、ということらしいです。
追記2:
そう比較すると、
ドビュッシーはショパンに近い!?
とも思い出されました。
ドビュッシー十代の頃のピアノの先生は、
ショパンに直接レッスンを受けていたという
女性なのだそうです。
すなわち「ドビュッシーはショパンの孫弟子」
となるのです。