音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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(つづき)《悲愴》I楽章冒頭「fp」

2006年08月14日 | 《8番op.13“悲愴”》

「Grave」という重々しいテンポに乗ったこの冒頭の悲劇の始まりを
告げるような和音は、実音符以上に長く伸ばして演奏されるべきもの、
と師匠K.Schilde先生はおっしゃっていました。
印象の深いこの冒頭の和音を効果的に奏でるためには、音量・音質と共に
ある程度の時間を必要とするということなのでしょう。

とはいえ、気をつけなければならないのは、奏者の勝手で
倍も長い時間を取ってしまうと、全く別の音楽になってしまい、それは
まずいので、おおよその目安として、1.3倍から1.5倍の時間を取るのが
いいかもしれません。

具体的には、
冒頭Graveのテンポを「八分音符=60(すなわち秒針と同じ)」に取り、
この冒頭の和音の四分音符分を、3秒間数えるような長さにしますと、
ちょうど1.5倍という長さになるはずです。そして、
タイでつながっている付点リズムの始まる二つ目の四分音符から、
秒針と重なるテンポ感で、音楽が進み始めます。

自分の練習室には、
安物で秒針が「かちっ、かちっ」と鳴る時計(IKEA製 笑)が
かかっているのですが、この秒針を見聞きしながら、この《悲愴》
冒頭の「Grave」を練習するのには、なんとも便利です(笑)

付点のリズムが始まるところから、上記のテンポに乗って
絶望に纏わり付かれた重い足を一歩一歩引きずるように、
一個一個の和音と旋律を重々しく、しかし「p」という
うるさすぎない音量で、音楽を進めていくのが、
この「Grave」の解釈として成り立つかもしれません。

つづく
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